優しい鼓動
(38)









 ソファーに腰掛け本を読んでいた雫。
 そろそろ眠くなってきた。
 和磨の気配に顔を上げると、その身には何も纏っていなかっ
 た。

「あっ!」

 顔に一気に血が上り、慌てて両手で顔を隠し、その雄々しい体
 を見ないようにしたがあっさり手を退けられてしまう。
 目をギュッと閉じると、今度はそれを咎める事はせず、服に手
 をかけてきた。
 
「あ、なにを・・・・」

「風呂に入る」

 あっと言う間に服を脱がされてしまった。

「ひ、一人で入れますっ」

 手で体を隠しながら、何とか逃れようとするがあっさり浴室へ
 連れて行かれた。
 床の上に立たされると、背後から程良い温度の湯が掛けられ
 た。
 恥ずかしくはあったが、手で押さえられているため出て行く事も
 叶わない。
 唯一の救いは互いが向き合っていない事。

 和磨と昨夜体を重ねたが、快楽に翻弄されとてもではないが
 体を見ている余裕などなかった。
 その朦朧とした意識の中で鍛えられた逞しい上半身だった事
 だけはなんとなくではあるが思い出せる。
 ハッキリとした意識で和磨の裸体を見るのは今日が初めてとい
 う事になる。
 実際に見た体は無駄な筋肉はついておらず、まるで彫刻のよう
 に美しい。
 日に焼けた肌がより逞しさを強調していた。 
 そんな事を考えていると、和磨の手によって全身をくまなく洗わ
 れて行く。

「自分で洗えますから」

 背を向けたまま、何とか手から逃れようとするが片手で押さえら
 れ逃れる事が出来ない。
 無駄な努力と悟り、全身を赤らめながら終わるのをただ祈っ
 た。

「昨日も一昨日もその体を全て見て触れた。 今更隠す事などな
にもないだろう」

 クスリと笑われる。
 確かにそうだが、そう思っても恥ずかしいものは恥ずかしい。
 それでなくとも貧弱な体。
 そんな体を欲しがってくれたのは嬉しいのだが。
 ただ、和磨の声に昨夜のような艶はなく、その手も淫靡な動き
 をする事なく雫を洗って行くのが救いだ。
 
 だが背中が終わり、今度は前を洗い始めると様子が変わる。
 和磨は背中から腕を回し胸を洗う。
 背中を洗っている時はその手は柔らかな布を使っていたはず。
 なのに今は布がない。
 和磨が直に手で洗っている。
 意識をすればする程気になり落ち着かない。

「あっ・・・・」

 和磨の手が胸の先端を掠める。
 普通に洗っているのに、こんな声を上げられては迷惑だろう
 と、唇をギュッと結ぶ。
 
「声を殺す事はない。 感じたのならそのまま素直に声を出せば
いい」

 そんな恥ずかしい事は出来ない。
 和磨はただ体を洗っているのだから。
 首を左右に振り必死に声を抑える。
 しかしそれも無駄な努力。
 時折掠めるだけだった指が、今度は意図を持って胸の先端を
 弄ってくる。
 指で摘まれ捏ねられ、爪で引っかかれると声が抑えられなくな
 った。

「ん・・・・、ぁぁ・・・・」

 雫の中心はすっかり立ち上がり蜜を零していた。
 そして足に力が入らなくなりその場にしゃがみ込んでしまう。
 だが寸前で和磨に抱き留められる。
 床に座り込んだ和磨の膝の上に向かい合わせで座らされる。

 自分だけかと思っていたが、和磨の中心も立ち上がっていた。
 互いの中心が擦れ合う。

「あ・・・・ん・・・・」

 片手で腰を抱かれ、もう片方で乳首を捏ねられる。
 胸からは甘い刺激が、そして下からはもどかしい刺激。
 昨夜和磨の手によって華開いた雫の体。
 執拗な愛撫、中を穿つ和磨の熱。
 雫の意志とは関係なく体が更なる快楽を求めていく。
 自分では気付いていないが、和磨の指が手が動く度に自然と
 腰が揺れていた。

「もっと動け、もっと俺を欲しがれ」

 言われ己の状態を知る。
 なんてはしたない事を。
 羞恥に顔が赤くなる。
 しかし止めたくとも止める事が出来ない。

「・・・・っ、あ・・・や・・・・・っ」

 ポロリと零れた涙。
 それを和磨が舌で拭う。
 まるで肉食獣のような仕種。
 
食べられる・・・

 だが恐ろしくはなかった。
 いらないと言われていた自分を救ってくれた和磨。
 嬉しかった。
 和磨にならその身を食べられてもいいと思った。

「もっと乱れろ」

 言って先端を強く潰される。

「や・・・・・だめっ・・・・」

 感じすぎて痛い。
 なのに和磨は離してくれない。

「拒否の言葉は許さない。 良ければ素直にいいと言え」

 今度は中心の先端こ捏ねられる。

「ああ、・・・・・ん・・・・やぁ・・・・」

 強い刺激に気持ちが追いつかない。

「いい、だ。 言ってみろ」

 そんな恥ずかしい事は言えないと、嫌々と首を振る。
 しかし和磨はそれを許さず、雫の中心に和磨の雄を重ねた。

「ひ、・・・・ああ・・・・・・・」
 
 自身の蜜と石鹸のぬめりでドロドロになっていた場所に重ね
 られた熱と共に扱き上げられる。

「はあっ、・・・んっ!」

 グチュグチュと聞こえてくる淫らな音。
 そして和磨の声に逆らう事が出来なくなっていた。
 水などないのだが、何かに掴まっていないと溺れてしまいそう
 で、縋るように伸ばした手が和磨の首に触れ、自然に巻き付く。
 和磨の手が雫とそして自身を追い上げるため早くなる。

「言え、いい、だ」

 和磨の声に今までとは違う艶が籠もる。

「あ、ああ・・・・い・・・いい・・・・っ・・・・・」

「そうだ」

「あ、あ、あああ。 い、い・・・気持ちい・・・・い・・・!」

 一度声に出してしまうともう止められない。
 涙を零し繰り返し言い続ける。
 満足げに目を眇め動きを速めていく。
 手の動きと共に雫の腰も淫らに蠢く。

「も・・・・だめ・・・・、あ、あ、出ちゃう・・・・・っ」

 小刻みに震える体。
 崩れないよう空いた手で支え、一気に追い上げる。
 
「構わない、出せ」

「あ、あ、ああああっ!」

 最後にキツク扱かれ白濁を放つ。
 仰け反った喉元を強く吸われる。
 そして少し遅れてまた熱い蜜が腹に当たる。
 和磨も達したようだ。

 昨夜のように、最後まで体を繋げる事はしなかったが、二日
 続けてのこの行為は雫の体には大きな負担となった。
 入った時のように抵抗する事はなく、大人しく和磨に体を洗わ
 れていた。
 雫の疲れようから、和磨もそれ以上の事はせずただ洗う事に
 専念した。
 湯の溜まった浴槽に抱かれ入る。

 通常なら膝の上に乗せられれば恥ずかしいと思うのだが、今
 の雫にそれを感じる気力はなかった。
 大人しくされるがまま入っていた。
 上がった後も和磨に丁寧に拭かれ、雫のために購入した肌触
 りの良いパジャマを着せられる。
 そしてベッドに連れて行かれ、隣に入り込んできた和磨の腕の
 中に収まる。
 全てが和磨の手によって。

 こんなに構われた事などない雫にはくすぐったかった。
 まるで守られているようなこの体勢。
 今はこの手は守ってくれているが、それがいつまで続くのか。

 人の心は変わりやすい。
 今まで何度も裏切られて来たため、雫は臆病になっていた。
 今度裏切られれば壊れてしまうだろう。
 いっそのことそれでもいいかと思った。
 短い期間ではあるが、この幸せな時間だけの世界で生きてい
 たい。
 壊れなければ自分の手で自身を壊してしまおう。
 今はただ、この腕がいつまでも自分の物であればと思った。
 和磨の体に身を寄せる。

 雫の不安を感じたのか、取り除くかのように、和磨の手は優し
 く頭を撫でていた。
 心地よい手の動きに雫は夢の中へと旅だっていく。

 穏やかな顔で眠る雫を見て、和磨は舌打ちした。





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