強い気持ち

(8)

30000をGetしたりんりん様より

「本当の気持ち」メンバーオール出演で綾瀬と間違われ、誘拐される若菜。二
人とも仲良く誘拐され・・・・貴章の会社に(または貴章に)恨みを持つ者犯行。





 誘拐事件の翌日、貴章のマンションに仲良し四人組が集
 まっていた。
 若菜はゆったりとした4人掛けのソファーに姿勢が辛くな
 い様、肘の部分にクッションで背もたれを作り寝そべる形
 で座っていた。
 他の三人は、向かいや、横のソファーの思い思いに座って
 いる。
 
 若菜はあの後、貴章のマンションへ連れて来られていた。
 綾瀬を庇い、全身に打撲、手や顔に擦り傷を負っていた。
 正道や綾瀬は、しきりに自宅に来ることを、そこで治療・療
 養を進めたのだが貴章が自分のマンションへ連れて帰っ
 たのだ。
 夜遅かったのにも拘わらず、知人の医師を呼びつけ、若
 菜の怪我の具合を見させた。
 一応異常は無かったが、全身を強く打っているから、念の
 ため翌日診察、検査を受ける様に言い帰っていった。
 
 翌日貴章は仕事を休み、若菜に付きっきり。
 大丈夫と言ったのだが。
 言われた通り、朝一番に病院へ連れて行かれ、一通り検
 査をし何処にも異常がなかった事で一安心。
 全てが終わった時には、昼を過ぎていた。
 
 そのままマンション連れて行かれ、ベッドに寝かせた後、
 貴章は直ぐさまキッチンに入り、若菜の為に食事を作り
 手ずから食べさせて貰った。
 少し恥ずかしかったが、素直に貴章に食べさせて貰って
 いた。

幸せかも〜

 痛い目に合ったのにも拘わらず、若菜は貴章と過ごす事
 が出来てラッキーだと思っていた。

 貴章はいつも忙しい。
 丸一日の休みが滅多にない。
 逢うにしても、時間はいつも短いし、電話も短い。
 時間を割いてくれているのだから、欲張ってはいけないと
 常に思ってはいるのだ。
 それに、身体の事を考えるといつか、倒れてしまうのでは
 ないかと、心配で堪らない。
 それが、今日は一日休みで若菜の側に付きっきり。

 ゆっくりと休んで欲しい。
 でも、側にいて欲しい。
 いけないとは思いながらも、顔が緩んでしまう。
 嬉しくてニコニコとしながら、貴章との時間を過ごしていた
 のだ。

 昼を過ぎてから、綾瀬・珊瑚・有樹の三人が揃って貴章の
 マンションへとやって来た。
 貴章にしてみればこの三人の訪問は邪魔以外の何者で
 もない。
 しかし、若菜の事が心配で様子を見に来たのだという事
 は察しがついている。
 綾瀬は一緒に誘拐されたのだから、昨日の一件は忘れら
 れないだろう。

 珊瑚という名前の若菜の友人は、多分剣の方から連絡が
 行ったに違いないと貴章は気付く。
 若菜達に緊急事態が発生したと連絡を受けた時、その場
 には剣グループの総帥とその息子である剣兄弟、が一緒
 にいたのだから。
 剣家の次男と珊瑚はつき合って、今は一緒に住んでいる
 のだし。
 もう一人の有樹と言う名の友人は、きっと珊瑚から連絡が
 行ったに違いない。
 綾瀬に連絡をし、揃って来たのだろう。
 
 若菜は貴章のベッドで寝ていたが、さすがにこの空間に
 だけは他人を入れるつもりはない。
 若菜の身体に細心の注意をはらい、寝室からリビングに
 移動。
 負担の掛からないようソファーを工夫し、若菜の寛げる空間
 をつくった。

 綾瀬達が持ってきたお見舞いのケーキを皿に取り分け、
 飲み物を用意する貴章に、綾瀬は冷や汗を流す。

 以前若菜達と一緒に旅行に行った時、実際に自分の目で
 ハッキリと見たのにも拘わらず、この風景は信じられない。
 他人に対してとても冷たく、関わりを嫌う貴章が、いくら若
 菜の友人だからといって、自分達にケーキを取り分け、お
 茶を用意するなんて。
 思わず『このお茶に中に何か入っているのでは』と疑って
 しまうくらい。
 ジッとカップを睨み付ける。

「どうしたの、綾瀬。 お茶冷めちゃうよ?」

 若菜に声を掛けられ我に返る。
 見ると有樹と珊瑚のカップの中身は半分以上減っていた。

「このお茶凄く美味しいです、何か特別なお茶なんですか?」

 有樹が無邪気に貴章に話しかける。
 
恐れを知らないというか、なんと言うか・・・・・・うっ!

 綾瀬が視線を向けると、お茶の用意をし終わった貴章が、
 若菜のいるソファーに座り、若菜を自分の膝の上に乗せ
 横抱きに。
 そしてケーキを食べさせていたのだ。
 若菜といえば、なんの疑い、抵抗もなく貴章にケーキを食
 べさせて貰っている。
 あの時の旅行で、かなり耐久性はついたと思ったのだが・・・

 見ると珊瑚の顔が引きつっていた。

普通そうだろう・・・・・・

 自分とて、何度同じ事を見ても馴れる事はないだろう。
 しかし、有樹は違った。 ニコニコとしながら見ていた。
 有樹の感覚も時々分からない。

「綾瀬〜、このケーキ凄く美味しいね。 生クリームの絶妙な
甘さが堪らないね。 どこのケーキ? 僕今度買いに行こ〜」

 呑気な若菜の声に脱力。

「・・・・・良くなったら、俺が一緒に行くから。 それより身体の
方は大丈夫なのか」

 今日、ここに来た目的を思い出す。
 別れた後も、自分の事を庇って怪我をした、若菜の事が
 気になって仕方なかったのだ。
 兄と一緒だから、手当やなにやら心配はないのだが。
 
「うん。 午前中に貴章さんに病院に連れて行って貰って、色
々検査したけど、どこも異常なかったし」

「しかし、春休み早々酷い目にあったな」

 珊瑚がケーキを頬張りながら言う。
 
「珊瑚、お行儀が悪いよ」

 有樹に窘められる。

「う〜ん。 でも僕綾瀬を守れたから良かったと思う。 だって
大好きな綾瀬の綺麗な顔が傷付かなかったし」

一番綺麗なお前が傷付いてどうする・・・・・・・

 皆が思ったに違いない。

「兎に角! 無茶をするな。 いいな」

「う、うん」

 珊瑚の勢いに押され頷く。

「でもね、綾瀬が『直ぐに迎えが来る』って言ったから、恐くは
なかったんだ。 綾瀬の言う事は間違いないだろうし、そこま
でハッキリ言い切るって事は貴章さんが来るに違いないって
思ったんだ」

 ニッコリ笑い、貴章の胸にすり寄る。
 どういう根拠と自信なんだろう。

「だって僕には、貴章さんだもん。 綾瀬が僕に言うんだから
貴章さん以外の人が来るとは思えないよ。 ね、綾瀬」

 相変わらず良く分からないが、綾瀬が若菜に「大丈夫」だと
 言えば、貴章が何とかしてくれるという事なのだろう。
 もの凄く強い信頼。
 いや、愛されている自信なのか。





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