強い気持ち

(9)

30000をGetしたりんりん様より

「本当の気持ち」メンバーオール出演で綾瀬と間違われ、誘拐される若菜。二
人とも仲良く誘拐され・・・・貴章の会社に(または貴章に)恨みを持つ者犯行。





「ところで兄さん、あの後の事は・・・・・」

 若菜の身体の次に、気になっていた事を貴章に聞く。
 貴章に撃たれた二人の事。
 一緒にいた、どう見ても堅気ではない、『和磨』という人物。
 若菜の事を助けてくれた、あの『澤部』とかいう若い男。
 
「・・・・・・・・・」

 貴章は何も答えない。
 ただ、「聞く必要はない」と視線が語る。
 その視線の強さ冷たさに、綾瀬は冷や汗を流す。
 珊瑚と有樹も息を呑む。
 部屋に緊張が走る。

「あっ!」

 突然大きな声を出す若菜。
 一瞬にして、緊張が霧散する。

「どうした」

 突然腕の中でオロオロとし始めた若菜に、貴章が。

「昨日、家に電話するの忘れちゃった・・・・・。 どうしよう・・・
無断外泊しちゃった・・・・・・」

 涙目になった若菜。

「ああ、それなら心配ない。 俺が昨日電話しておいたから」

 すかさず綾瀬のフォローが。
 一瞬にして、晴れやかな顔に。

「ありがと、綾瀬。 そうだ、電話しなくちゃ」

「じゃあ、俺達帰る。 若菜も元気な事確認したし。 あまり
長居しても疲るだろうし。 また連絡するから」

 丁度いいと珊瑚が立ち上がる。
 一刻も早くこの部屋から出て行きたいようだ。

「そうだね」

 有樹も続く。

「俺も。 そうだ若菜。 家には若菜がウチの階段から落ちて
怪我をしたから泊まらせたっていってあるから」

「え〜、格好悪いよ〜」

「大丈夫、誰も疑ってなかったから、電話には紗英ちゃんが出
て、若菜にはあり得るって言ってたから。 じゃ」

 笑いながら出ていった。

「・・・・・・ヒドイ」

 自分を抱く腕が、微妙に揺れている。
 まだ少し痛い身体を捻り見ると、貴章が笑っていた。

「貴章さんまで笑うなんてヒドイ・・・・・」

 口を尖らせる若菜。
 その口にチュッとキスをし、「すまない」と謝るが、目はまだ
 笑っていた。
 疲れたであろう若菜を寝室に運び、ベッドへ寝かせる。
 拗ねている若菜に携帯を渡し、機嫌をとる。

「家に連絡するんだろ」

 思い切りはぐらかそうとする貴章に、また拗ねてしまう。
 しかし、心配しているであろう家族が気になり、渋々ボタン
 を押す。
 
 一回目の呼び出し音が鳴った瞬間『若菜!?』と言う父晃
 司の声。
 電話の前でかかって来るのを待っていたとしか思えないくら
 いの、あまりの早さ。

「う、うん」

 勢いに思わずどもってしまう。

『大丈夫か若菜!。 昨日綾瀬君から「若菜が階段から落ち
て怪我をした」って聞いた時、パパ心臓が止まるかと思ったよ
。 それで、怪我の具合はどうだ。 今日パパはお休みだから
今から迎えに行くよ。 青葉、邪魔をするな!』

 先ほどから、晃司の声の後ろから聞こえる青葉の怒鳴り声。

いいから、俺にも早く寄こせよ! 若菜! 大丈夫か、怪我は、怪我の
具合はどうだ』

 晃司から受話器を奪い取った青葉が、勢いよく話し始める。

「うん、大丈夫。 そんなに酷くないから。 ちょっと手とか顔と
かに、擦り傷があるけど骨とかには異常なかったから」

『・・・・・顔に傷・・・・・・・・』

 受話器の向こうから聞こえてくる、呆然とした青葉の声。
 青葉の言った言葉に、同じ様に受話器の向こうから、晃司
 の「傷! 若菜の顔に傷!」とパニックを起こした声が。

「もしもし? もしも〜し」

 戸田家男達は既に使い物にならなくなっていた。

『もしもし、 若菜ちゃん?』

「あ、お母さん」

 見かねた母佐織が、呆然としている青葉から受話器を奪い
 取り代わった。

『昨日綾瀬さんから電話があったけど、大丈夫?』

「うん、念のために病院に行って検査してもらって何処にも異
常なかったよ。 傷っていってもホント大した事ないし、擦り傷
だから心配しないで」

『そう』

 受話器の向こうから聞こえる、ホッとしたような母の声。
 若菜の持つ携帯を貴章が取る。

「お電話代わりました。 綾瀬の兄貴章です。 この度は若菜
さんに怪我をさせてしまって、本当に申し訳ありません」

『まあ、貴章さんこんにちは。 いつも若菜がお世話になって
ます。 気にしないで下さい』

 佐織が口にした『貴章』の言葉に、今までパニックを起こして
 いた、戸田家男達が後ろで反応していた。

『何、貴章だと! ママ電話を代わりなさい!』

「今回の事なんですが・・・・」

 貴章が本当の事を話そうとするが、佐織がその言葉を遮る。

『若菜が心配ないと言うんです。 ですから私は何も心配して
いません。 それに貴章さんが一緒なんですから、ね?』
 
 貴章の事を全面的に信頼している言葉に苦笑してしまう。
 後ろで叫んでいる二人を適当にあしらっているし。
 「母は強し」だと貴章は思った。
 
「有難うございます」

 この一言に、貴章は思いを込める。

『ところで、若菜ちゃんの事なんですが・・・・』

「もし、そちらに都合がなければ一週間ほどこちらでお預かり
したいのですが」

『ご迷惑ではありませんか?」』
「いいえ、私は是非こちらに居て欲しいので」

 貴章の持つ携帯に耳を寄せ、二人の会話を聞いていた若
 菜。
 自分を抜きに着々と進んで行く、若菜お泊まり計画に喜び
 の色を隠せない。

『顔に傷が付いている若菜ちゃんを見た瞬間に倒れてしまう
人達がいるので、是非お願いします。 着替え、送りましょう
か?』

「大丈夫です、全てこちらで揃えていますから」

『そうですか? それでは宜しくお願いします』
待て、切るな。 若菜〜〜
『二人とも静かに。 それでは失礼します』

「若菜さんの事は、責任を持ってお預かりします」

「お母さん有難う!」

 貴章の持つ携帯に向かって叫ぶ。
 携帯を切った貴章に抱きつく若菜。
 これから一週間、この家で貴章と過ごす事が出来るなんて
 夢のようだ。

「さあ、若菜疲れただろうから少し休みなさい」

「はい」

 貴章と一緒にいるのに、寝てしまうのは勿体ないが、これか
 ら一週間の間、一緒に暮らす事が出来るのだ。
 昼は仕事で、夜も遅いかもしれない。
 しかし、貴章と同じ空間で過ごす事が出来るのだから。
 
 少し疲れていたのかもしれない、横になり布団を掛けて貰い
 貴章に頭を撫でて貰っている内に寝てしまった。
 そんな若菜を愛おしそうに貴章は見ていた。
 そして、強く思った。
 何があっても若菜の事を守ろうと。

 今回は自分の甘さを痛感していた。
 いくら過去の事とはいえ、勝手にライバルと思いこみ逆恨み
 をしていた者を放ってたのだ。
 これからまた、そういう者が出て来ないとは限らない。
 弟は高校生の時貴章に、兄は父(実際は貴章なのだが)に
 会社を潰され、恨みを持っていたのだ。
 どちらも逆恨みなのだが。
 徹底的に、自分に逆らう事が出来ないように潰さなくてはい
 けないと、新たに思った・・・・・・





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