強い気持ち

(6)

30000をGetしたりんりん様より

「本当の気持ち」メンバーオール出演で綾瀬と間違われ、誘拐される若菜。二
人とも仲良く誘拐され・・・・貴章の会社に(または貴章に)恨みを持つ者犯行。





 障子の外へと投げ飛ばされた若菜。
 その姿に、綾瀬の中で時が止まる。
 障子の向こう側は廊下だが、その先は庭だ。
 それも、大きな庭石がゴロゴロと置かれている日本庭園。
 万が一その庭石に叩き付けられようものなら、ただではす
 まない。
 打ち所が悪ければ、死に至る。
 若菜のあどけない笑顔が綾瀬の頭の中を過ぎる。
 大切な親友が・・・・・・

「若菜――――――!」

 悲痛な叫び。

「痛って〜」

 その場にそぐわない暢気な声。
 見ると、綾瀬達をここまで連れてきた男達の中で一番若い
 男だった。
 その男が、飛ばされた若菜の事を抱きかかえていた。
 
「いや〜、俺とした事がこんな事ぐらいで。 まさか飛んで
来るとは思わなかったぜ。 危機一発って感じ?」

 惚けた声、しかし全身から発せられる雰囲気にその場に
 緊張が走る。

「お前、何者だ・・・・・・」

 兄であるスーツ姿の男が剣呑な目で聞く。
 それもその筈。
 この場には誰も近づくなと強く側近に言い渡しておいたの
 だから。
 下っ端であるこの男がこの場にいる事は、絶対にあり得
 ない事だから。
 
「駄目っすよ、素人さんにこんな無体な事。 あんたらみた
く頑丈じゃないんですから。 あ〜あ、可哀想にボロボロじ
ゃない」

 自分の腕の中で、気を失っている若菜を傷ましそうな目で
 見る。
 近くで見るその肌は、白くきめ細かい柔らかそうな肌だっ
 た。
 それが、擦り傷だらけ。
 男の視線が若菜から、傷つけた男達に向けられる。
 その視線はとても厳しいものだった。

「あんた達兄弟はやりすぎた。 この始末は付けなくちゃな
らない。 もうすぐここに和磨さんが来る」

「「!」」

 『和磨』という名前を聞き、二人の顔が蒼白に。
 今まで余裕だったこの男達を一瞬にして、恐怖に陥れる
 『和磨』という男は一体何者なのか。
 男に抱きかかえられている、若菜の姿に取り合えず綾瀬
 は安堵する。

 気を失ってはいるが、最悪の事態だけは免れたのだか
 ら。
 そして、遠くの方から大勢の人の声と足音が。
 『和磨』とかいう人物なのだろうか。
 その音に、顔色を無くし放心状態だった若い方の男が我
 に返り、最後の足掻きか若菜を抱えた男に突進して行っ
 た。
 だが次の瞬間、畳の上に転がっていた。

「イテーよ・・・・・」

 見ると右足から血を流していた。
 そして今度は左足からも。
 綾瀬には一体何が起こっているのか分からなかった。
 
ドサッ

 別な方向で、何かが倒れる音が。
 見ると今度はスーツの男が両足から血を流していた。

「ぐあぁ・・・・・っ」

 畳の上で二人の男が血を流し倒れている。
 呆然と見つめる綾瀬。

「素人さんな筈なのに、過激だな・・・・・・」

 若い男の呆れた声。
 見るとその男の横に、兄貴章が。
 手には黒い物が握られており、倒れている男達に向けら
 れていた。
 見ると、それは拳銃だった。
 自分が知る、一般的な物より先が長い。
 サイレンサーが付けられていた。

「兄さん・・・・・・」

 無表情なままの兄。
 
「がぁ・・・・」

 見ると、今度は若い男の腕から血が。
 そして別な所から血が吹き出る。
 淡々とした表情で、貴章がなんの躊躇いもなく撃ってい
 た。
 この時程、自分の兄が恐ろしく感じた事はない。
 まるでいたぶっているかの様だ。

止めなくては・・・・・

 このままでは、殺してしまう。
 そう思っても身体が動かない。

「その辺にしておけ。 後はこちらで始末する」

 冷ややかな声。

いつの間に・・・・・

 貴章の肩に手を掛けた、別の男。
 長身である貴章よりも更に背の高い男。
 服を着ていても分かる、鍛えられた逞しい身体。
 切れ上がった瞳。
 一見モデルの様に見える姿だが、纏った雰囲気は何処
 までも冷たい。
 その男が貴章の手から、銃を取る。

「和磨さん」
「綾瀬!」
「綾瀬! 若菜君!」

 後から大勢の人が。 
 そして、その部屋の中を見て誰もが口を閉ざした。
 
 貴章は、男から若菜を受け取りそっと畳の上に降ろし
 た。
 そして優しく抱き起こす。
 傷だらけの若菜に、貴章の顔が歪む。

こんな・・・・・

 久我山の事に、最愛の者が巻き込まれてしまった事が貴
 章の中に大きな傷となる。
 今後こういう事がまた起こるかもしれない、しかし貴章は
 若菜を手放す事は出来ない。
 若菜がいるから、自分の今があるのだ。
 何処までも闇の中を彷徨っていた自分に光を照らしてくれ
 たのが、若菜なのだ。
 
「すまない・・・・・・若菜・・・」

 優しく、傷ついた若菜の顔を撫でた・・・・・・





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