強い気持ち

(4)

30000をGetしたりんりん様より

「本当の気持ち」メンバーオール出演で綾瀬と間違われ、誘拐される若菜。二
人とも仲良く誘拐され・・・・貴章の会社に(または貴章に)恨みを持つ者犯行。





「兎に角、直ぐにでも迎えが来る筈だ。 それまで大人し
くしていよう」

 直ぐに迎えが来るとは一体どういう事なのか。
 自分達が誘拐されたのはつい先ほどの事。
 犯人達が身代金や、他の何かを要求したとしても、そ
 んなに早く解放や救出があるのだろうか。

 車に乗る時に耳元で綾瀬がこっそり「携帯は何処だ」
 と聞いてきたから「上着の右ポケット」と答えた。
 綾瀬は慌てて外に出た為に、持って来ていなかった様
 だ。
 綾瀬は素早く右ポケットから携帯を抜き取ったが、車に
 乗って直ぐ目隠しをされた為にその後の事は分からな
 い。
 若菜が持っていたカバンは、ここに連れて来られたとき
 に取り上げられてしまった。
 綾瀬が若菜から取った携帯もその時一緒に。
 不思議な顔で綾瀬を見る。

「まあ、色々ある訳だ。 気にするな」

「・・・・・・・・」

 納得いかないが綾瀬の言う事だ、きっと自分には分か
 らない何かがあるのだろう。 

 遠くの方から話し声と、足音が聞こえて来る。
 段々近づいてきたと思ったら障子が勢いよく開けられ
 た。
 
「お前が久我山綾瀬か」

 20代半ば位の男と30代前半位の男。
 その後ろに、自分達をここまで連れて来た男達がいた。

 年若い方の男は、茶髪で髪の毛も長く顔は何処かホスト
 のよう。
 白いスーツに中には赤いシャツ。
 胸元が大きく開けられており趣味の悪い金のネックレス
 が覗いている。

 もう一人の男は体格がよく、短く刈られた髪、目つきも
 鋭く、黒のスーツ姿はとても一般人には見えない。
 姿形は違えど、似通った雰囲気が二人が兄弟である事
 を教えてくれている。

 綾瀬が黙っていると苛ついた様に、スーツ姿、多分兄で
 あろう男が声を出す。

「久我山綾瀬かと聞いているんだ」

「・・・・・・だったらなんだ」

 綾瀬の方も負けず不機嫌な声。

「うわー、この美人すげえキツイよ」

「お前は黙っていろ」

「はいはい」

 二人が何者か分からないが、綾瀬をここまで連れて来
 させた人物なのだろう。

「俺に何の用だ」

 若菜を巻き込んだ事に怒りを覚えている綾瀬の口調は
 何処までも冷たくキツイ。

「お前自身に用はない。 ただ久我山会長がお前の事を
溺愛しているという事と、久我山貴章の弟だから、わざ
わざ連れて来てやっただけだ」

 このスーツの男が言う事から、やはり綾瀬の父正道と、
 兄貴章に何らかの恨みがある事は間違いない。
 逆恨みだ。

 正道も貴章も仕事に関しては厳しい。
 しかし、実際の経営方針や人事など全ての事は貴章が
 行っている。
 貴章は学生の頃から、正道の手伝いをしていた。
 現在のように経営、人事、新規事業と変わりなく。
 柔軟な発想、思い切りの良さ、素早い行動、そして必要
 ないと思われるものは全て冷酷に切り捨てた。
 正道が「そこまでしなくても」と思うくらい。

 長年取引があった会社に対しても、向上がないとあっさ
 りと切った。
 自分達に害をなすものは全て潰して来た。
 お陰で久我山グループは更に大きく、強固たるものに
 なった。
 但し学生の貴章が行える筈もなく、正道が代わりに行っ
 ていた。
 その為正道は表からは冷酷な経営者として、恐れられる
 ようになったのだ。
 貴章が社会に出て直ぐに幾つかの会社を任された時、
 「若造」と侮っていた役員達も、それが間違いと気付い
 た時には遅かった。
 正道が冷酷なのではなく、実際は貴章で、真の経営者で
 ある事を。

「それで、俺達はいつまでここにいたらいいんだ・・・・・」

 車に乗せられ、この家に来て約30分位だろうか。
 そろそろ迎えが来てもいい時間だ。
 若菜の身の安全の事も考え大人しくしていた方がいい
 だろうと考える綾瀬。
 急に大人しい口調になった綾瀬に、『心細くなったのだ
 ろう』と弟の方が勝手に思いこむ。
 元々ニヤケた顔が、よりだらしない顔で綾瀬に近づいて
 来た。

「本当は取引が終わるまでと思ったんだけどね、こんな
美人なんだから帰すのも惜しいな」

 そう言って綾瀬の顔に手を掛けた。
 触られた綾瀬は顔を歪める。

「まあ、お前の好きな様にしろ・・・・・」

「サンキュー、兄貴。 あの久我山の弟っていうところが
気に入らないが、こんな美人なんだからそれはそれでい
いか」

 若い方の男は貴章に恨みがあるらしい。
 いつまでも触られている事を不快に思い手を払いのけ
 ようとしたのだが・・・・・
 若い男が突然離れた。

「綾瀬に何をする!」

 綾瀬の前に人影が。
 若菜が男を突き飛ばし、綾瀬を庇うように立っていた。





 
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