楽しいお茶会
(4)
50万Hits企画






今日はなんて良い日なんだろうv

 新作のスイーツを食べお祝いの特大ケーキもあり、普段なら会う事のない素に会っ
 た。
 そして素の兄にも。

 
 若菜が素と出会ったのは今から約6年前の事。
 素の勤める横田眼科に家族揃って行った時に出会った。

 引っ越しをして、まず初めに連れて来られた場所。

 視力はそんなに悪かった訳ではないのだが、家族全員に「新しい学校に行くのなら眼
 鏡は必要」「絶対に掛けなさい!」と言われたため。

 受付に座っていた素達。
 入った瞬間、皆が一様に驚いていた顔。
 その場にいた患者も若菜達家族に視線が釘付けになっていた。
 静まりかえる待合室。
 父晃司が「初めて掛かるんですが」と言うまで誰一人として動かず声を発しなかった。

 その後は凄かった。
 素の他にいた3人の女子職員が我先にと「初めてですか」
 「どうなさいました」「今日はどなたがかかられますか!」

 煩い事煩い事。
 余りの勢いと女子職員の必死な形相に、怖くなった若菜は隣りにいた母佐織にに抱き
 ついた。
 そして青葉が守るかのようにその前に立った。

 その仕草が皆のツボに嵌ったらしく「可愛い〜〜〜!」と更なる騒ぎに。
 あまりの騒がしさに診察をしていた院長が診察を一旦中断し受付まで来た程。
 3名の女子職員は受付から奥に行くように言われ、3人の迫力に呆然としていた素が
 院長に言われ受付を行った。
 
 視力検査も素が行った。
 初めての眼科。
 どんな事をするのかと内心ドキドキしていた。
 するとそんな若菜の心が感じられたのか、「痛い事や、怖い事とかはしないからね」と
 優しく言われた。

 その声に安心した若菜。
 不自由はしていなかったが、少しだけボンヤリとした世界。
 視力をレンズで矯正した事でぼやけた世界がハッキリと。

 素を見ると自分とそう年が離れていない男の子が立っていた。
 驚いていると「はい、じゃあ眼鏡外すから目を閉じて」と言われ目を閉じた。
 そして診察。
 その後眼鏡の度合わせ。
 やはり同じ人物。
 社会人とは思えないくらい可愛い男の子。

「よく見えるかな?」

 ニッコリ笑った顔が本当に可愛くって。
 
 優しくて可愛い素が大好きになった。
 その後は定期的に視力検査に通い。
 高校生になってからはコンタクトレンズを作り。

 初めてのコンタクトの時も眼鏡の時と同様優しく丁寧に指導してくれた。

 眼科のみのつき合い。
 出来る事ならこの優しくて可愛い眼科職員と眼科外でも会いたい。
 是非お友達になりたいと思っていたのだ。

 そしてその兄とも。

 診察を終えて待合室に行った時入って来た人。
 落ち着いた雰囲気の綺麗な人。
 患者は若菜しかいなかった為か受付にいた素が「あ、兄ちゃんもうちょっとで終わるか
 ら」とそのその綺麗な人に言った。

 兄と呼ばれた人は「慌てなくていいから最後まできちんと片付けて。 僕が来たせいで
 雑になったなんて言われたくないからね。 車で待ってるから」と言葉はキツかったが
 眼差しに愛情があった。

 振り向いた時視線が合った。
 見ていた事が気まずく取り敢えず「こんにちは」と挨拶をした。
 すると綺麗な微笑みと共に「こんにちは」と返してくれた。

 この瞬間にファンになった。
 佐倉の時同様『お友達になりたい』と思った。

 その願いが今叶った。

嬉しい〜〜〜〜!

 憧れの二人。
 そして目の前のテーブルにはスイーツが。

 ニコニコしながら皿を勧める。

「アンジェも美味しいですけど、ここのスイーツはもっと美味しいんですよ。 素材は選び
抜かれた新鮮な物。  見た目もほら、こんなに綺麗。 ん〜〜〜美味しい〜。 食べて
みて下さい」

 テーブルに置かれた皿の数と中央にある大きなケーキに驚いていた灯。
 確かに見た目、綺麗で美味しそうだ。

 この店が出来た事は知っていた。
 なにせ、灯の友人の関係している店の前。
 洒落た雰囲気で入ってみたいとは思っていたのだが、この店の近くには行き付けの
 カフェがあったのだ。
 お気に入りのデザートがあり、ついついそちらに行ってしまっていた。

 苺フェアーなのか全てが苺系のにスイーツ。
 好きなフルーツの一つだから嬉しいが。

 手に取った皿には苺のワッフル。
 生クリームが乗り苺のソースがかけられ、苺とベリーがトッピングされ彩りにハーブ
 が。

 少し酸味のあるソース。
 程良い甘さの生クリーム。
 トッピングの苺が新鮮で今摘まれたもののような感じ。

美味しい!

 目を瞑り味わう。
 アンジェにも同じようにワッフルはある。
 トッピングのフルーツも新鮮だ。

でも、それ以上にここのフルーツは!

 目を開き若菜を見る。

「ねっ?」

 得意そうな若菜。

「僕も食べよ〜」

 食べ始める。
 負けじと素も食べ始める。
 ものすごい勢いで減る皿。
 お互いの皿を突きながら「このパイ生地のサクサク感は他の店にはないね」「ねね、
 このムースの弾力感!」「ピンクの生クリーム! 苺味だよ。 凄〜い」まるで女子高
 生のようだ。
 特大ケーキも既に彼等の胃袋の中。

 雄大と千葉は呆気に取られる。

「次は何食べますか?」

「そうだね・・・・。 何がおすすめかな」

「チーズケーキもいいですよv」

「じゃあ、そうしよう。 素もそれでいい?」

「チーズケーキ大好き!」

「「「すみませ〜ん!」」」

 ウエイターに向かって叫ぶ。
 暴走する3人。
 誰にも止められない。

 年齢を超え職員、患者の枠を超え急速に仲良くなった。
 注文の品が来るまでの間に、今度は何処の店が美味しいか
 情報交換。

 話しに花が咲いていると「若菜!」と呼ぶ声が。
 見ると綾瀬が店の前に止められた車の中から出てきた。
 
 その顔は怒っていた。



 人が怒りを表すと違いはあるがそれぞれ迫力がある。

 特に造形の整った者が怒りを表すと、その迫力は更に上を行く。

 「若菜!」と呼び近づいてくる大親友と言っても過言ではない久我山綾瀬は若菜が
 知る5本の指の中に入る程の美貌の持ち主。

 その迫力といったら・・・・・

あ、あれ僕何かやっちゃった・・・・・・?

 座っていた椅子から慌てて立ち上がる。

 そして、ちょっと『逃げてしまおうかな』と思って、後ろに一歩下がってしまったり。

 そのテーブルに居た者全てが、綾瀬の迫力に固まっていた。

 目の前に来た綾瀬。
 腕を前に組み仁王立ち。
 蛇に睨まれた蛙。

 顔は笑っているが、内心汗がダラダラ流れている状態。

綾瀬怖い・・・・
やっぱり何かやったのかな〜
でもこの間、貴章さんのマンションで会った後綾瀬とは電話だけだし・・・・・・
その時も特に怒ってなかったのにどうして〜〜
何だか分かんないけど、ごめんなさ〜い

 心の中でひたすら謝る。

 見つめ合う二人。
 息を潜め回りの者は見守る。

 先に言葉を発したのは綾瀬。

「・・・・・・若菜」

「は、はい!」

 返事をして直立不動。

「どうして一人で出かけた」

 理由は何となく分かった。
 だから「えへっ」っと言って笑って誤魔化す。

 その仕草が綾瀬の地雷を踏んだ。

「笑って誤魔化すな! 言っただろ。 一人で出かけるな。 出かけるなら家族に誰か
に付いて来て貰え。 もし一人なら俺を誘えと! あれ程言ったのにお前は〜〜〜〜
〜」

 首を竦める若菜。

 言った。
 確かに綾瀬はそう言った。
 若菜もそれを覚えている。

でも家から近いし〜
99円ショップに行くだけなのにわざわざ付いて来て貰うのも悪いし〜
ゴージャスな綾瀬には、ちょっと似合わないし〜
そりゃあ99円ショップの後出かけたけど雄大さんの所だし〜

 上目遣いで綾瀬を見、心の中で言い訳を言う。

それに一人じゃないもん。
雄大さん、千葉さん、佐倉さん兄弟も一緒だもん!

 最後の方は開き直っていた。
 
 その開き直りを感じ取った綾瀬。

「なに、若菜? 何か言いたい事があるなら口でハッキリ言え」

 冷たい眼差しと口調に言い訳が飛んでいく。
 更に身を小さくする。

「え〜っと、え〜っと・・・・・・」

この場は謝るに限る!

 そう思い口を開こうとした時、綾瀬越しに珊瑚と竜也の姿が見えた。
 その一瞬綾瀬の怒られている事を忘れた若菜。

「あ、珊瑚! 竜也君」と叫び「若菜!」と綾瀬に雷を落とされた。

 若菜に気付いた二人が来たにも拘わらす、「そこに座れ」と言われくどくど綾瀬にお
 説教される。

うえ〜〜〜ん
ごめんなさい、ごめんなさ〜い

 ひたすら謝る若菜。

「いいか若菜。 俺は若菜が心配だから言ってるんだ。 この先ずっと一人で出かける
なって言ってる訳じゃない。 前に間あんな事があったんだから一人になるなって言っ
てるんだ」

「はい・・・・・」

 項垂れ返事をする若菜。

「あの時は久我山の事で若菜を巻き込んでしまって本当に申し訳ないと思ってる。 俺
達に拘わらなければ若菜が怪我をしなくて・・・・」

「そんな事ない!」

 顔を上げ強く言い切る。

「そんな事ない。 僕は綾瀬に出会えて、友達になれた事を誇りに思ってる! それに
この間だって、綾瀬は助けてくれたでしょ」

「若菜・・・・」

 隣りに座った綾瀬の手を取る。

「ホントだよ。 綾瀬がいてくれたお陰で人生が変わった。 大げさなんかじゃないよ。
綾瀬が友達になってくれたから、有樹や珊瑚とも友達になれた。 声をかけてくれな
かったら今も一人ぼっちで根暗のオタクだって言われて苛められてたかもしれないん
だ」

 感動する雄大達。
 素に至っては涙を浮かべている。
 
「それに綾瀬と友達になれたからこそ、貴章さんと出会う事が出来たんだもん」

 そう、綾瀬がいたからこそ貴章と出会えたのだ。
 綾瀬と友人でなくとも、いずれは貴章と出会う事もあったかもしれない。
 それは1年先か10年先かは分からない。
 出会ったとしても隣りに誰かがいないとも限らない。
 今、綾瀬と友達になれたから貴章と出会い、恋人になり、この幸せが手に入ったの
 だ。

綾瀬がいたから・・・・・

 周りの感動がピークに。
 が、次の言葉で台無しとなる。
 
「そりゃ、綾瀬にしてみたら僕みたいに不細工でオタクみたいな友達はいらないかも
しれないけど・・・・・・・」

おい、誰が不細工?

「コンタクトして、家族にコーディネートして貰った服を着れば少しは普通に見えるか
もしれないけど〜」

 言っているうちに段々不機嫌になっていく。
 最後にはふて腐れ頬を膨らませる若菜。

「・・・・・・・・・」

 全員のこめかみにタコマーク。
 この場に居る者全員が素顔を見て知っている。
 タイプは違うがここにいる綾瀬・珊瑚・灯は誰が見てもその美貌に目を奪われる。
 素は美人ではないが、かなり可愛い。
 その中で素顔の若菜は断トツの美貌の持ち主なのだ。

それが普通だと〜〜〜〜?

 珊瑚がキレタ。
 
「おい・・・・・」

「なに、珊瑚?」

「この顔の何処が不細工だ〜〜〜」

 若菜の両頬を引っ張る。

「いひゃい〜(痛い〜)。 はひふりゅのひゃ〜(何するのさ〜)」

「若菜が不細工なら、俺達の顔なんて潰れちゃってるよな〜。 コンタクトして普通?
喧嘩売ってんのか、コラァ〜!」

 ウンウンと頷く佐倉兄弟。

 容赦ない珊瑚の引っ張り。

「ウギャ〜〜〜〜!」

 痛みに涙する若菜だった。





 
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