幸せになりましょう(2)







気のせいか、今母上の言葉の中に『叶を妻に』という単
語が聞こえたような。
それに、伴侶が男と匂わせる様な言葉があったような・・
・・・

 少し顔をしかめ、俯き考え込む叶。
 そんな叶を見つめながら

母親似の美人になったからいけなかったんだろうか・・・・

 複雑な雅人。

「コホンッ。 まだ学生だが、すでに会社経営にも携わって
いて更に業績も上がっている。 とても優秀だ。 私の会
社とも取引がある。 断りたかったのに・・・・・」

 不満げな顔になってきた。

「あいつまで出てきて!『結婚させて貰えなけれは会社を
継がないと言っている』そこまでならいいが、『駄目ならこ
れからの取引は考えさせてもらう』だと! ふざけるな!
お前は子供か! だいたいあいつは昔から・・・・・・・・」

 ブツブツ1人怒り始めた。
 雅人もこの話しは知らなかった。
 引退し会長職に就いた義理の父。
 引退後会社に顔を出す事は全くなかった。
 それがある日、突然やって来たと思ったら叶の結婚相
 手の事だった。
 自分に話しを持って行っても激怒させるだけだと思った
 らしく、先に会長に話しを持って行き承諾させたのだ。

 現剣グループ総帥剣賢護は、大学時代の後輩。
 頭も顔も良く次期剣総帥という事もあり、非常のモテて
 常の取り巻きがいた。
 今まで何もかも一番でいた自分の上を行く後輩。
 色々な意味で癖のある後輩だったが・・・・
 会長の意志には逆らえないが、文句の一つも言いたく
 連絡を取ったら、先の言葉を言われたのだ。
 その後息子が正式に挨拶に来て、容姿と叶に対する誠
 実な態度に、妻春香がもろ手を上げて賛成したために仕
 方なく結婚を納得。  

 なんだかよく分からず、叶は春香を見ると「愛されてる
 のね〜」とニッコリ。

「愛されてる? 母上・・・・私はその方にお会いした事が
あるのでしょうか? 思いを告げられた事など未だかつ
てありませぬが」
 
 不審な顔。

「いいえ。 あなたはお会いしていますよ。 本当に良い
嫁ぎ先が決まって、安心しました。」

 と告げられた。

「・・・・・・はぁ?」

聞き間違えであろうか?

「ですから、あなたの嫁ぎ先が決まったんですよ」

 再度言われた。
 先ほどまで1人怒っていた雅人もすっかり落ち着いてい
 て頷いた。

「母上。 確かに私の顔は男らしくありませぬ。 しかしい
くら私が男らしくないといえど、男には違いありませぬが・・
・・」

「ええ、あなたが私に似て美人でも、ちゃんと男性だとい
う事は勿論分かっていますよ。 お相手の方もあなたが
男性と分かった上で申し込みにいらっしゃったのよ。 ご
両親も納得済みです」

 雅人を見た。
 
「まさかお前を嫁に出す日が来るとは思ってもいなかった
が・・・・・・・」

 眉間に皺を寄せながら、かなり不満げに言う雅人だっ
 た。
 今まで不平不満も言わず『長い物には巻かれろ』な叶
 だったが「嫁!」
 初恋もまだ、付き合った事もない、いくら女顔で美人だ
 からといっても

「嫁!」。

 さすがに今回は『巻かれて』はいけないかもと口を開こ
 うとした時、障子の向こう側から「お連れいたしました。」
 と声がかけられた。


「失礼します」

 低く落ち着いた声とともに障子が開き、婚約者と思われ
 るが人物が入って来た。

「剣・・・君・・・?」

 入って来た人物は叶の同級生『剣 鷹也』だった。
 国内外でトップを行く、剣グループの時期総帥。
 身長165pあるかないかの叶とは違い180pは越え
 ているだろう。
 筋肉質で引き締まった体型。 チタンフレームのメガネ
 の奥には切れ長な目、スッキリ通った高い鼻立ち、シャ
 ープな顎のライン。 
 知的で存在感があり、とても10代とは思えない落ち着
 いた雰囲気の人物だった。
 学校での成績はいつもトップで良く非常にモテていた。
 今年初めて同じクラスになったが必要最低限な事しか
 話した事はなかった。 
 本当に顔見知り程度。

「こんにちは、叶さん」

 優しく微笑む剣。
 心地よい声。
 上質の生地で作られたオーダーメードのスーツを着こな
 し、堂々とした態度は、今まで只のクラスメートとしか認
 識していなかった、男の叶をも魅了した。
 
「この度は、叶さんとの結婚を許して頂きまして有難うご
ざいます」

 呆然としている叶の隣に座り、剣は両親に向かい、両手
 を畳に付け深々と頭を下げた。





  




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