眠り姫
(5)

37000をGetされたあっこ様より

「本当の気持ち」





ダダダダダッ!

 入れ替わるように青葉が走って来た。

「やべ〜〜、若菜のメガネ持って来ちゃったよ〜」

 若菜のメガネに気付いたのは教室に戻って直ぐの事。
 返しに行こうと思った時には教師が入って来てしまったのだ。
 
 授業中だから保健室に誰かが行く事はないかも知れない。
 いたとしても校医の佐竹もいるのだから。

 それでも落ち着かなかった。
 授業が終わって急いで来たのだが、佐竹の姿はなかった。
 他の生徒もいなかった。
 一安心だ。

 カーテンを開けると丁度若菜が目を覚ました。

「うう〜〜ん、よく寝た〜。 あれ、青葉どうしたの?」

「若菜〜」

 延びをする若菜に、勢いよく抱きつく青葉。
 突然の包容にも拘わらず、若菜は驚きもせず抱き返す。
 戸田家では当たり前の行動だ。

 若菜に頬ずりをしていると保健室のドアが開く。
 授業を終えた綾瀬達が、若菜のカバンを持ってやって来たの
 だ。

「う゛っ・・・・・」

 体格も見た目も良い青葉が、デレデレと鼻の下を伸ばし若菜
 に頬ずりする姿はとても見るに耐えられないもの。

 綾瀬はカバンを落とし、有樹は固まり、珊瑚は後ずさり後ろに
 いた竜也にぶつかった。
 
 竜也は初めて見る若菜の弟。
 
 体格も容姿も全く違うため、それが弟だとは全く気付かな
 い。
 メガネを外している若菜の容姿をちゃんと見るのも初めて。
 前回はコスプレをしていたし、珊瑚に気がいっていて若菜を
 ハッキリ見る事はなかったのだ。
 美形を見慣れている竜也だったが・・・・・

これは・・・・
 
「・・・・・・兄弟の抱擁は家に帰ってからにしてくれ。 青葉君そ
の締まりのない顔を戻せ。 若菜何でメガネを外してるんだ」

 他の誰よりも早く立ち直った綾瀬。
 若菜の家に行くと同じような光景を目にするだけに皆よりも
 耐久性がついているのだろう。

「え・・・・若菜さん? 弟?」

 この美形が若菜で、この男前が弟という事実に竜也は呆然
 となる。
 その呟きを受け竜也を振り返り見る珊瑚。
 そして思い切り竜也の足を踏みつけた。

「痛っ!」

 見ると珊瑚が睨み付けている。
 竜也の顔が緩む。
 こんなあからさまに嫉妬をして貰えるとは。

「僕には珊瑚が一番ですよ」

 耳元でそっと囁く。
 甘く囁かれる言葉と体に響く低い声。
 自分の親友に嫉妬した事を竜也に気付かれ赤くなる。

「う、煩い!」

 周りから見るとイチャついているようにしか見えない。

「お前達も・・・・・家に帰ってからにしてくれ・・・・・」

 綾瀬の呆れた声に、珊瑚は更に顔を赤くする。

「お前のせいだからな!」

 言って睨み付ける珊瑚に「煩くするなら出てけ」と綾瀬は冷
 くた言い放つ。

 文句は色々とあったがここは保健室。
 若菜は怪我人なのだからとグッと我慢。

「カバン持って来たぞ。 後、早退の手続きも取ってある。 そ
れと車と病院の手配もしたから」

「え〜」

「そうだぞ、綾瀬さんの言う通りにしないと。 検査をして異常
がなくて、初めて大丈夫なんだからな」

 綾瀬の言葉に力強く同意する青葉。
 どちらが弟か分からない。

ボールは当たったけど咄嗟に庇ったし、痛みもないし〜
強いて言えば眠いだけで〜

 不満そうな若菜に綾瀬が一言。

「・・・ヨダレ」

「!」

 この言葉には若菜も敏感に反応。

「病院行こうかな〜」

 あっさりと早退と病院行きが決定した。
 眼鏡を渡され掛けるといつもの若菜に戻った。

 青葉も早退すると言ったのだが、一人で大丈夫だからと若菜
 に断られ、綾瀬にも久我山で対処すると断られてしまった。

 せめて迎えの車までと靴を履き替え門まで。
 すると門には既に車が到着していた。

「えっ?」

 驚きを隠せない若菜。
 あるはずのない車。

 中から人が降りてくる。
 この時間、ここに居るはずのない人。

「宜しくお願いします、兄さん」

「ああ」

 驚く若菜に近づき頬に手を添える。

「貴章さん?」

「ん?」

「貴章さん!」

 言って抱きつく若菜。
 それを優しく抱きしめる貴章。
 見ていて心温まる光景だが・・・・・・

「だぁ〜〜〜〜〜、若菜、離れろ〜〜〜」

 青葉が邪魔をしに入る。
 若菜を貴章から放そうと手を掛けるが、無惨にも叩き落とさ
 れる。

「兄弟でも気軽に触らないで貰おうか」

「なんだと! 他人の癖に俺の若菜に勝手に触るな!」

「フッ」

「ムカツク〜〜」

 鼻で軽くあしらわれ、地団駄踏む青葉。

子供だ・・・・・・

 白い目で皆に見られていた。
 体も大きいのに、容姿だってカッコイイのに。
 普段はとても落ち着いていてクールだとか言われているの
 に。
 若菜の事に関しては子供な青葉だった。

「戸田!」

 そこに橋本が走って来た。
 
 橋本が若菜を捜しに行くと「今日は早退した」と言われた。
 ふと、外を見ると門に向かう若菜達の姿を見つけた。
 そして慌てて靴を履き替え行ったのだが・・・・・

 いつもと同じメンバーの他に真新しい制服を着た男が一人。
 確か戸田の弟。
 今年、中等部からの持ち上がりで入ったという。
 学年トップでスポーツも抜群。
 顔もすごぶる良く、今年の新入生の中で断トツ1位と噂の。
 そして、何故かもの凄いブラコンという噂の弟。

「誰だ?」

 年下なのに強い迫力に押されてしまう。

「あ、いや・・・戸田・・・・」

 視線を向けた途端強い衝撃を受ける。
 保健室で見た美女に続く衝撃。

人間なのか?

 スーツを着た20代後半と思われる男。
 誰もが惹き付けられる、彫刻のように整った容貌。
 その美貌もさることながら、圧倒的な存在感。
 呆然と見つめていた。

「橋本君?」

 かけられた声に我に返る。
 見ると若菜が、その美貌の男の腕の中に大切に捕らわれて
 いた。

 思わず見比べてしまう。

なんだ、この奇妙な取り合わせは・・・・・

 相変わらずボサボサの髪にダサイメガネの若菜。
 似合わなすぎる、いや美貌の男を冒涜するよな姿だ。

「あの〜、橋本君?」

 またもや別な所に意識が行ってしまっていた橋本。

「ああ・・・すまん・・・・・・。 そうだ! 戸田すまなかった!」

 言って若菜に対し腰を90°曲げ謝る。

こいつか・・・・・・・

 若菜の怪我の原因の登場に青葉の顔が変わる。

「ワザとじゃなかったんだが・・・いやワザとだと思う。 俺はお
前が憎かった。 俺がどんなに頑張ってもお前には敵わない。
それにそんな容姿なのに憧れてる高津とも仲がいいし・・・・」

 貴章は淡々とその言葉を聞いていた。
 橋本の言葉に反応したのは竜也だった。

 竜也の雰囲気が一転した・・・・・・

 





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