眠り姫
(4)

37000をGetされたあっこ様より

「本当の気持ち」





 若菜が竜也達に連れられていなくなった後も橋本は動けなか
 った。
 何事にも対しても、あまり動揺しない橋本にはないその姿に
 
「運が悪かったんだよ」
「手が滑ったんだよ」
「わざとじゃないんだからさ」

 と次々に声を掛け慰めてくる。
 他の者は自分が若菜に対し憎しみを抱いているとは思ってい
 ないから言える言葉。
 
こんな醜い心を持っているとは・・・・・・

 スポーツマンにあるまじき、恥ずべき心。
 逆恨みもいいところだ。

謝りに行こう・・・・・

 思った時には次の授業のチャイムだった。



ドタドタドタ!

 廊下をもの凄い勢いで走る一人の生徒の姿が。
 
ガラッ!
 
「若菜!」

「煩い! 静かにしろ!」

 負けず叫ぶ声。
 先に叫んだのは、若菜の弟青葉。
 その後に叫んだのは校医の佐竹秋子。
 とても性格のキツイ29歳。
 でも顔は美人だ。

自分だって声でかいのに・・・・・

「若菜が運ばれたって聞いたんですけど!」

 今度は小声で。
 
「確かに運ばれたな」

「やっぱり! それで若菜は!?」

「叩き出されたいのか?」

 この校医、見かけ華奢だが意外にも柔道・空手共に2段の
 腕の持ち主。
 女子柔道部顧問であり、男子顧問を投げ飛ばしたという実
 力者。
 言葉だけではなく、本当に言葉通りたたき出されるのがお
 ちだ。
 ブンブンと首を振る。
 ふんっと鼻を鳴らす佐竹。

嫁のもらい手ね〜ぞ・・・・・

 そんな青葉の視線に気付き冷たく言い放つ。

「余程兄貴に会いたくないらしいな」

「! 秋子先生、今日も一段とお美しく・・・」

「ふん、どうせ兄貴が一番美人だとしか思ってない癖に」

「ええ、まあ・・・・いえ、そんな事ないですよ。 ははは」

「まあいい。 確かにお前の兄貴は今まで見た中じゃとびきりの
美形だからな。 そこのカーテンの中で寝てるよ。 見たところ
大丈夫そうだが、念のため昼には早退させて病院に行かせる
けどな。 それより、お前の兄貴は寝不足らしい」

 大丈夫という言葉に一応は安心する青葉。
 しかしその後の言葉は?

「寝不足、ですか?」

「そうだ」

 言い切る佐竹。

「爆睡してるぞ。 大物だな、お前の兄貴は」

「はあ・・・・・・」

 言われ引かれたカーテンの中を覗く。
 確かに爆睡している。
 ヨダレを垂らして。

「・・・・・・・・・・」

 見た目の異常は全くない。
 ボールの当たったと思われる右こめかみにも。
 念のため掛けていたメガネを外し確認を。
 やはり大丈夫なようだ。

 ホッとして力が抜ける。

「な、爆睡してるだろ」

「若菜〜」

 ベットの脇へへたり込む青葉。
 
「お、そろそろ次の授業だぞ。 早く戻れ」

 制服の襟を掴み、青葉をカーテンから引きづり出す。

「若菜〜〜〜」

「やかましい!」

 そして廊下へと放り出されてしまった。
 目の前でドアが閉められる。
 青葉の手には若菜のメガネが握りしめられたままだった。




 4時間目の授業が終わって直ぐ、橋本は保健室へと走った。
 一刻も早く謝りたかったから。

「失礼します・・・・・」

 開けて入ると校医の姿はなかった。
 中へ入る橋本。
 ベットの周りに引かれたカーテン。
 そこに人が寝ているという事だ。

「戸田?」

 言ってカーテンに中に入る。

「!!」

 そこには別な人物が寝ていた。
 それが若菜だとは気付かない橋本。

 小さな形の良い卵形の顔・抜けるような白いきめ細かい肌・
 長い睫毛・柔らかいふっくらとした口元。
 閉じられた瞳は一体どんな色なのか。
 顔にかかった柔らかな髪。
 見た事のない美女が寝ていたのだ。

 思わず息をするのを忘れてしまった程。

 実在する人物なのか確かめたくて手を伸ばす。

温かい・・・・・・

 まるでおとぎ話に出てくる眠り姫のようだ。
 眠りから目覚めさせたい。
 しかし眠りを妨げてはいけない。
 心の中で葛藤する。

「う〜んっ・・・・・」 

 触れられた体温に眠りが浅くなったのか、身じろぎをする。
 その仕草と声に慌てて手を引っ込める。
 そして、自分がここに何をしに来たのか思い出す。

 もっと見ていたかった。
 しかし、今すべき事は違う。
 ここに寝ているのだから、この白鳳学園の生徒である事には
 違いない。
 これだけの美女は見た事はないが、もしかしたら転校生なの
 だろう。

直ぐに会える・・・・・

 ポケットの中から携帯を取りだし、写真を何枚か撮る。
 
直ぐに会える。

 そう思い、その場を後にし若菜の教室へと急いだ。



 

 


Back   Top   Next






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送