眠り姫
(3)

37000をGetされたあっこ様より

「本当の気持ち」





 試合形式は9人制。
 若菜のポジションは後列右端。
 橋本は前列右端。
 最初のサーブは若菜から。
 綺麗なオーバーサーブだった。

 元バレー部エースアタッカー橋本のいるBクラスの面々は余裕
 で勝てるはず。
 なのに実際は違った。
 点は確実にBクラスが取っていた。
 しかしポイントが着くまでに時間がかかり過ぎている。

おかしい・・・・・・

 もう1チームの試合は既に終わっている。
 綾瀬達Aクラスの勝利だ。
 なのにまだ1セット目。

何故だ?

 試合している者達は気付いていないが、コート外にいる者は
 気付いていた。
 打つアタックが若菜に拾われているという事に。

「すげーよな、戸田。 あの橋本の玉、平気で受けてるぜ」

「ああ、しかも軽くな・・・・」

「あいつ頭もすげー良いけど、運動神経もいいんだな」

「変わった奴だけどな」

 クラスメイト達がそんな事を言っている。
 竜也も新たな若菜を見て『さすがです、貴章さん』と貴章を賞
 賛していた。

 そして漸く1セットが終了。
 コートチェンジとなり、選手交代となった。

「お疲れ様若菜、有樹」

 綾瀬に迎えられ今度は応援に回る二人。

 橋本はまだコートの中。
 ほんの少しの休憩時間の時にクラスメイトから言われた言葉
 を思い出す。

「戸田ってさ、お前の玉全部拾ってたぜ。 元バレー部でエース
だからさ、素人相手に力抜いてるのかもしれないけど、抜きす
ぎもどうかと思うぞ」

 ショックだった。
 
 試合の時同様真剣にやっていたのに。
 それなのに手を抜いてると思われるとは。
 プライドが大きく傷つけられた。
 試験でも勝てない。
 最も自分の得意なバレーでも負けるとは・・・・・

許せない!

 コートの中から若菜を思いきり睨み付けた。


 試合が始まる。
 1セット目とは違いポイントがドンドンBクラスに加算されて行
 く。
 
戸田が抜けたせいか・・・・・

 見ると若菜はコートの後ろ横で有樹と楽しそうに話しをしてい
 た。

俺なんか眼中外だと!?

 橋本の怒りは頂点に。
 その時丁度サーブが橋本の番。
 怒りを全てボールに込めジャンピングサーブ。

 若菜を意識し過ぎていたせいか、玉が思い切りそれた。
 意識を向けていた方にボールが飛んでいく。

「若菜!」
「あっ!」

 有樹から顔を反らす。
 そこに橋本が力を思い切り込めたボールが。

バシッ!

 若菜の右こめかみに直撃した。
 ボールは体育館隅に転がっていった。
 床には若菜が倒れていた。

「「若菜!」」
「若菜さん!」
「戸田!」
「大丈夫か!」


 皆の声が入り乱れ、倒れている若菜の元に駆け寄り騒然と
 なる。
 打った橋本はその場で呆然と。

 いくら憎いからといっても当てるつもりはなかった。
 
 しかしそれは言い訳でしかない。
 憎いと思った心が自然と狙ってしまったに違いないのだか
 ら。

「お前ヤバイよ・・・・・」

 そんなクラスメートの声に我に返る。
 慌てて若菜の元へ。
 周りを取り囲む人を押しのける。

「戸田、すまない!」

 グッタリとする若菜を保健室に連れて行こうと手を伸ばす。

「触るな!」

 見ると剣財閥御曹司、剣竜也が厳しい目をして橋本の事を見
 ていた。
 何もかも見通されている。
 自分の若菜に対する憎しみも。
 そんな気がした。

「頭を打っているんだ、下手に動かすな」

「すまない・・・・・」

 教師が慌て外に連絡しに行こうとする。

 若菜の顔がしかめられる。

「大丈夫か戸田!?」

「・・・・・・痛い・・・」

 目がうっすらと開けられ意識が戻った事に、その場にいた全
 員が安堵した。

「若菜さん、少し我慢して下さい」

 言って竜也が若菜を抱き上げる。
 それに焦る若菜。

「駄目だよ珊瑚が痛っ・・・・・・」

 竜也の腕の中で丸くなる若菜。

「何言ってんだよ! 竜也早く!」

 竜也を急かす珊瑚。

「後はお願いします」

 険しい表情の綾瀬に言われ「分かった」と頷く教師に「立場が
 逆だろ」と生徒達は思った。

 病院を手配すると言った綾瀬と竜也に、若菜は頑として頷か
 ず保健室に連れて行くように言った。

 ボールは確かに当たった。
 音も凄い音を立てた。
 しかし、咄嗟に顔に手を上げたため実際に当たったのは手。
 手がワンクッションとなり、頭への直撃は避けられたのだ。

 しかし頭に衝撃があった事には変わりない。
 昼になったら帰るから、それまで保健室にいると言い張った。
 そして・・・・・

「眠いんだから、寝かせて!」

 と叫んだ。

 これには4人も呆れるばかり。
 まあこれだけ元気があれば大丈夫かと、若菜一人を残しその
 場を後にした。







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