ナ・イ・ショ
(7)

33333Getされた、りんりん様より

貴章のバースデーのプレゼントの為に友人の紹介でコスプレ
パブでバイト。 ボケをかましつつ慣れてきた若菜だったが、
貴章に見つかり、ラブラブなおしおきv





 若菜を見つめる雄大。
 誘蛾灯に引き寄せられるかの如く、若菜に引き寄せられて行く。
 
 その人物が本当に実在しているのか確かめるべく、手を伸ばす。

 後少しで触れるという時「バシッ」と手を叩かれ、「グイッ」と後ろ
 から襟を思い切り引っ張られた。

「ゲホッ! 何だよ・・・・」

 手を叩いたのは、珊瑚。
 襟を引っ張ったのは秘書の千葉。
 二人とも思い切り恐い顔で雄大の事を睨んでいた。

 文句を言おうと開かれた口だったが、そのまま閉じられる。
 そして、雄大は珊瑚に部屋の隅に引っ張られて行く。

「いい? 先に言っておくけど、若菜には指一本ふれないでよ。 も
し、触ろうものなら命の保証はないからね。 叔父さんだけじゃない
よ、客の誰もだからね!」

 小声で脅すように言う。
 「命がない」とは穏やかでない。
 「大げさだな」と笑って言うが、珊瑚の目は真剣。

まさか・・・・・?

 後ろを振り返り若菜を見る。
 離れた所から見ても若菜の美貌は損なわれない。
 触れてみたいが、触れてはいけない。
 聖域のような雰囲気。

「なあ・・・・・本当にあれなのか?」

 どう思い出しても、あの女神と、野暮ったい若菜が結びつかな
 い。

「勿論若菜。 普段は、本人は気付いていないけど、擬態してる。
そうじゃなかったら、危ないからね」

 素顔はまだ見てないから分からないが、ちょっと手を加えて、あ
 の美貌なのだから、擬態するのも分からなくはない。
 
「あと、俺達名前変えとくから、若菜は翠、有樹は春香、俺は静佳
だから。 間違っても本名は教えないでよ! 本当に命ないからね
!」

 珊瑚の迫力に押され頷く雄大。
 
 またもや珊瑚に引っ張られ、皆の所へ戻って行く。
 皆はまだ、若菜の美貌に釘付けになっていた。

「改めて自己紹介をする。 姪の静佳に、その友人の春香くん、翠
くんだ。 この仕事は始めてだから、皆フォローしてやってくれ。 
簡単に挨拶して」

 自分の左横に立つ珊瑚を見て促す。

「初めまして、静佳です。 姪になりますが、仕事には全く関係な
い事なので忘れて下さい」

 冷たい眼差しと、物言い。
 こんな事で本当に勤まるのだろうか。

「春香です。 初めてのお仕事にとても緊張しています。 皆さん
の足を引っ張らないように頑張ります」

 先程の静佳とは打って変わって、笑う顔は名前の通り柔らかい
 春の雰囲気。
 
「翠です。 どこまで出来るか分かりませんが、精一杯勤めさせて
頂きます。 短い期間ですが宜しくお願いします」

 ニッコリと微笑んだ姿はとても艶やか。
 
 皆が「ホウッ」とため息を吐く。
 同時に、こんな所で働かせていいのかと思ってしまう。

 そんな中、一人桜子だけが燃えるような目で、三人を見つめて
 いた。

「さあ、時間だ。 皆、今日も宜しく頼む!」


 コスプレをしてるというだけで、仕事の内容はテレビ時々特集番
 組の「高級クラブ」となんら変わりなかった。
 話しを聞いたり、お酒を作ったり、飲んだり。
 ただ、三人は高校生。
 お酒を作ったり、飲んだり出来ない。

 珊瑚はカクテルくらいは飲める。
 有樹は全く飲んだ事がない。
 だから、ウイスキー飲んだり、作ったりなんて事は当然出来な
 い。
 一人を除いて・・・・・・

 そして雄大の言う通り、テレビで見る弁護士政治家、会社社長
 などのVIPばかり。
 しかし、会話の内容は堅苦しい株であったり、趣味や食べ物の
 話し。
 何だか可笑しかった。

 若菜達は三人セットで接客。
 新人なので先輩ホステスのヘルプとして入ったのだが・・・・・
 
 最初に付いた席は大手美容整形外科の院長。
 三人を見た瞬間、手に持っていたグラスを落とし割ってしまっ
 た。
 コスプレとはいえ、会員制の高級クラブ。
 何かを落としたり、割ったり、大きな声を荒げたりする事などあ
 り得ない。
 いくら店が新しいからといっても、そんな失態があれば「教育が
 なっていない」「質が悪い」と、次から店に人が来なくなってしま
 う。

 幾つか同じ様な店を経営している、雄大のでは初めての事。

質落ちたか・・・・
 
 そう思ったに違いない。

 残念に思いその音のほうに、皆が注目する。
 そして店のあちこちで、同じ様にグラスの割れる音が。
 
 余りのにも大きな音と、その割れる数の多さに、隣の部屋にい
 た雄大が焦り出てくる。
 
 そこで見たものは、若菜達三人を見て硬直若しくは、恍惚となっ
 たするVIP達の姿だった。

 瞬間、雄大は「勝った!」とほくそ笑んだ。

 明日からの売り上げ倍増は、間違いない。
 

 その日の客は皆若菜達に見惚れ飲んだり食べたりする手が止
 まってしまった。
 
 若菜達が仕事を終える時間まで、あと1時間半。
 このままではマズイと三人をそれぞれのテーブルを回らせた。
 そこで「飲み物はいかがですか?」「フルーツはどうなさいます
 か?」と聞くと、皆がこぞって、気を惹こうと高いボトルを入れた
 り、フルーツを注文した。

 そのお陰でたった1時間半で、一週間分の売り上げとなった。
 
 雄大の笑いは止まらなかったが、三人が帰ってしまった後の、V
 IP達からのクレーム対応に苦しめられる事となった。

 そんな雄大を、千葉は冷めた目で見ていた。



「ただいま〜〜」

 初めてのバイトは思った以上に疲れた。
 
 そのまま2階に自分の部屋に行き、着替えを持ちリビングへ。

「「お帰り若菜」」

 晃司と青葉の包容を受ける。

「疲れたから、お風呂にいくね・・・・・」

 やんわりと二人を押しのけ、浴室へ。

「何かあったのか?」

「・・・・さあ」

 顔を見合わせる二人。


 疲れた身体にお風呂は最高。
 しかし、風呂入っている途中で寝てしまう。
 
 紗英が「若菜ちゃん、携帯鳴ってるよ」と声を掛けてきた。
 
 驚いて思わず「ガボガボ」してしまい、その音に紗英が気付きドア
 を開けると、湯船で藻掻いている若菜が。

「キャ――――――! 若菜ちゃん!?」

 その声に晃司と、青葉が飛び込み若菜を助け上げ事なきを得た
 のだが。
 その後、「「危ないから、一緒に入る!」」と言う二人を宥めるの
 に一苦労。


 再び掛かって来た貴章からの電話。
 画面に映る貴章は今日も格好いい。
 今日あった事、バイトの事を抜かして話しをする。

「でね、そこのカフェ珊瑚の叔父さんのお店だったの。 凄い偶然
!」

『そう、それは偶然だな。 そろそろ休みなさい』

「え、もう?」

『声が疲れている、早く休んだほうがいい』

 確かに疲れてはいるが、貴章の顔を見ているだけで疲れが癒さ
 れる。
 直接会えないのは寂しいが、このテレビ機能の付いた携帯のお
 陰で画面では会えるのだから。
 顔には表れていないが貴章の方が疲れている筈なのに、自分の
 事を気遣う優しさが好きだ。

「はい、貴章さんも、早く休んでね?」

『ああ。 また明日。 愛してる・・・・』

「・・・僕も、貴章さんの事大好き・・・・」

 照れながらも一生懸命伝える。
 
 そんな若菜を、愛おしそうに見つめる貴章。

「お休み」

「お休みなさい」

 言って携帯を切る。

 本当に疲れた一日だった。
 しかし、楽しい一日でもあった。





 


   
Back  Top  Next




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送