流される日常
(2)

40000Getされたyo-yo様より
「運命の人」足掻きながらも馴染んでいく拓巳の新婚生活






 披露宴が行われたのは金曜日。
 その日はそのまま宿泊。
 起きた時には外は夕暮れ。
 部屋に届けられた父からの祝いの三段重を食べた後、動
 かぬ体を必死に動かしベットを下りバスルームへ行こうとし
 た。
 寝ている間に良太郎が拭いてくれたのか、スッキリとして
 いたが、やはり湯船に浸かって体を休めたい。
 藻掻いていると、良太郎がそれを察し拓巳を抱きかかえバ
 スルームへ。
 
 一人で入ると言ったのにも拘わらず着ていた服をいそいそ
 脱ぎ、入って来た。
 当然入るだけではすまない。

 拓巳の体が動かないのを良い事に色々された。
 最初は普通に体を洗うだけだったのに、段々手つきが怪し
 くなりその後は・・・・

 洗い場で一回。
 ジャグジーに入って一回。
 意識を飛ばしかけてた所を、体を拭かれベットでトドメの一
 回。
 前日にあれだけ体を繋いだのにまた3回も。

 若いという事もあるせいか、良太郎は絶倫なのか?

 さすがに次の日は仕事があるせいか、この日は2回で終
 わった。
 それでも2回・・・・・

 起きてみると、やはり体はボロボロ。
 こんな事で休みたくはない。
 良太郎を睨み付け「こんな体で電車に乗れるか!」と言うと
 車を出し、拓巳を会社まで送った。
 送らせたのはいいが、良太郎の運転する車で会社のエント
 ランスに乗り付けたくはない。

 近くまで来て、信号待ちの時良太郎を残しサッサと車から
 下り歩いた。
 
 ハッキリ言って会社まで遠かった。

 普段のように、健康な体なら5分と掛からないところを
 15分もかけ。

 体だけなら良かったが、会社の中に足を踏み入れた瞬間
 から精神的苦痛を与えられた。

 遠巻きにヒソヒソ言う者。
 興味津々で見る者。
 祝辞を言う者。

 とにかく、会社中の誰もが知っているらしい。

 舌打ちをしながら、エレベーターに乗り、自分の部署へと
 倒れそうになった。
 
 拓巳がドアを開け入るといきなりクラッカーが鳴らされた。
 一つではない。
 しかも花びらまで舞っている。

 自分にかかったクラッカーの中身と花びらを払うと目の前
 には大きな幕が。
 
『祝!寿! 磯谷拓巳』と書かれてあった。

 唖然としている拓巳に女子社員が近寄ってきて、とても豪華
 な花束を渡された。

「「「「おめでとうございます」」」」

 盛大な祝いの言葉まで贈られた。

 俯く拓巳。
 微妙に体が震えている。

 自分達に感動してくれたのか?
 代表して、拓巳の後輩である小川が拓巳に声をかけた。

「そんなに感激してもらえるなんて・・・・・」

 言った瞬間、拓巳の顔が上げられた。

 今まで見た中で一番恐かったと皆が語った程の冷たい眼差
 しと、冷ややかな声。

「みんな持っている仕事終わったのか・・・・。 そうか、じゃあ
他の仕事をあげよう。 今月は多かったんだよな・・・領収書
の偽造。 今まで黙って俺が片付けてたけど、これからはみん
なにやって貰おうか」

 黙って拓巳は自分の机へ。
 机の下から段ボールを2箱取り出す。

「さあ、調べてもらおうか」

 覗き込むと全てが領収書。
 初めて見るその数、量に誰もが青くなった。

 今まで誰も知らなかった。
 その中には「他の会社には偽造とかあるらしいけど、うちの
 会社は全くないな」と呑気に思う者もいたくらい。

 それがどうだ?

 あるわあるわ山のように。
 
「こんなに・・・・・・」

 誰かが呟いた。

「今月はまだ少ない方だから。 俺一人で処理出来たんだ、こ
れだけの人数がいるんだから早いもんだろ」
 
 他の者が見、知る前に、拓巳は全て処理していたのだ。
 
 一体いつ領収書を処理していたのか。
 これだけの量があれば誰か気づいてもいい筈。
 なのに、誰一人として気付いていないとは。
 しかも拓巳は残業もしていない。

 全員が青ざめた。

「出勤したばかりですが、体調が優れないので、今日は早退
させて頂きます。 あと、有給もかなり残っているので1週間程
休ませて頂きますので」

 言いたい事だけ言って部屋を後にした。
 エレベーターに乗り込む瞬間、悲鳴が聞こえてきた。

 携帯の電源を切り、会社を早々後にした。

 宣言通り次の日は仕事に行かなかった。
 次の日も休もうかと思ったが、このままでは自分の首も絞め
 かねない。
 皆にはいい薬になっただろう。
 出勤し拓巳が姿を現すとまるで救世主扱い。
 一日で憔悴しきっていた。
 女子職員は肌に艶もなく、髪もバサバサ。
 男女揃って目の下には隈が。

 たった一日でこの有様とは、全くもって情けない。

 代表してやはり小川が拓巳の元へ。

「先輩悪かったです〜。 だから機嫌直してこれ、なんとかして
下さい〜〜〜。 でも、俺達からかった訳でも冷やかした訳で
もなくて、ホントにお祝いしたかったんです〜〜〜」

 最後の方は拓巳に縋っていた。
 目には涙も浮かんでいる。

 あまりにも哀れな後輩の姿に拓巳はため息を吐いた。

 
 兎に角、拓巳を怒らせないようにしようと皆が誓った。
 だが一人だけは違った。

「そう言えば先輩、なんて呼んだらいいんですか? 籍を入れ
たからやっぱり『奥寺先輩』なんですかね?」

 言った瞬間床に沈んだ。


 昼は昼で、構って貰おうと良太郎が拓巳のもとへ。
 家に会社に鬱陶しい事この上ない。

「会社に来てまで、お前の顔は見たくない」

 冷たく言い放つとあからさまにショックを受けた顔。
 トボトボと去って行く姿は余りにも哀れをさそった。
 
 これが一日3回繰り返される。
 
 そして皆が良太郎に同情し応援を。
 
「頑張って下さい!」

「ええ、俺の愛は拓巳さんだけの物です!」

「「「きゃ〜〜〜〜〜v」」」

 本当に疲れる職場だった。





 
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