求める心
(6)


キリ番44444をGetされたレイコ様からのリク





 敬の弟という事を最大限に利用し、もてる時間全てを費
 やせばいい。
 あの真っ直ぐな瞳の持ち主は、親友の弟を無下にする事
 はしないだろう。

来週が楽しみだ
漸く手に入る

 恭夜の顔に笑みが。
 こんなに楽しそうな恭夜を見たことのない家族達。
 その理由を知っている父は苦笑している。
 全く持って不愉快だ。
 自分と、この父が似ている所が。
 自分では全く違うと思っているのだが、朝霧に言わせる
 とそっくりだと。
 それに、父の顔からもそれが事実なのだろうと伺える。

 しかし、似ていようが似ていまいが、自分は自分。
 父とは違う人格。
 父を睨み自分の部屋へと戻った。

 それから数日間、恭夜は真面目に規則正しい生活を送
 る。
 家から一歩出ると今までとは違う自分を演じる。
 服装も今までとは正反対。
 黒一色だったが、今では明るく柔らかい色合いの物を
 着てみたり。
 街で、同級生や今までつるんでいた者達を見かける事
 もあったが、やはり誰一人として恭夜に気付く者はいな
 かった。
 そしてふと思いつき病院へ足を向けた。
 病院には一ノ瀬がいる。
 今の時間なら昼休み終了前に行く事が出来るだろう。

 院内に足を踏み入れ受け付けの前を通り過ぎる。
 恭夜の事を知っている者ばかりだったが誰一人として気
 付く者はいなかった。
 それどころか見惚れていた。
 滑稽でしかたない。

 外科の医局に行く途中で目的の人物が前方から歩いて
 来た。
 離れていたにも拘わらず、恭夜だと気付いたようだ。
 
・・・・・・面白くない

 逆に一ノ瀬は楽しそうな顔。
 恭夜はその場に立ち止まったまま、一ノ瀬が近づいて来
 るのを待つ。
 そして上から下まで眺めた後「金髪よりそっちの方が似
 合ってるぞ」言う。
 だがそれだけでは終わらない。

「見た目は別人で誰も分からないだろうが、気配が変わっ
てないから直ぐにバレるぞ。 後その妙な演技は止めた
ほうがいいぞ。 見てて気持ち悪い」

 相変わらず一ノ瀬は恭夜に対して言いたい放題。
 どんなに睨み付けても一ノ瀬には全く効果がないのが
 腹が立つ。
 家族の前では普段と変わりのない態度だからそう思わ
 れる事はないだろうが、もし外でそういう姿の恭夜を見
 たら同じ事を思うに違いない。
 それは恭夜にとって非常に屈辱的な事。

 どうやら顔に出ていたようだ。
 一ノ瀬に「自分を作ろうとするな。  お前はお前のまま
 でいい。 変わる時は自然と変わるもんだ。 良い方に
 も、悪い方にも」「ま、今のお前なら前者だろうな」

 恭夜の肩をポンと叩いて午後の診療に向かって行った。
 やはり一ノ瀬には適わない。
 全てを見通しているようだ。
 舌打ちをし、そのまま病院を後にした。

 そんな事を恭夜が思っている時、一ノ瀬が『まだまだ子
 供だな。 可愛いもんだ』などと思っていた事など知る筈
 もない。


「じゃあ、明日よろしく。 お疲れ様、お休み」

「お休みなさい」

 家に戻り玄関を開けると、通いの家政婦笹本が帰るとこ
 ろ。

「お帰りなさい、恭夜さん。 また明日。 お休みなさい」

「・・・・・お休み」

 この笹本も苦手な人物と言えるだろう。
 姿が変わっても、何をしても態度を変える事なく恭夜に
 接していた。
 ふくよかな体型、顔もいつもニコニコと笑みを浮かべてい
 る。
 ある意味把握出来ない人物。
 考えてみるとやはり一筋ならない者ばかりが回りにい
 る。
 伯父の秀和も癖があるし。

 秀和は医者ではなく自分の会社を経営している。
 その内の一つがパソコン関係。
 そしてゲームソフトの会社も経営している。
 身内だからと、パソコンに詳しいからと何かと人に仕事を
 押しつけてくるが、ここ2年は全て断っていた。
 最初の一年は何もかもが面倒になり。
 後の一年は稔に出会い逃げた彼を捜す為に時間を全て
 使っていたから。
 
 そもそもは恭夜が中学に入学して直ぐの時、敬が構想
 した物を恭夜がなんとなくゲームにしてみたのだ。
 それを見た秀和が商品化し発売。
 それが物の見事に当たり、その年もっとも売れたRPG
 ソフトとなった。
 その年だけでなく、現在まで発売されたRPGの中でダ
 ントツとなっている。
 キャラクターも恭夜がその時に書いた。
 それがそのままイラスト集になったり、グッズとして売り
 に出され爆発的な人気を誇っている。

 ソフト、関連商品の売り上げのお陰で莫大な収入を得て
 いる。
 敬の方もRPGの構想を練ったという事で、恭夜程では
 ないがかなりの収入を得ている。

 和秀は結婚してはいるが子供はいない。
 その為恭夜に自分の後を継がせようとしている。
 父の前でそう言ったのだ。
 
 まあ恭夜自身医者になるつもりはないからいいのだが。
 だが、伯父の後を継ぐかというのも決めている訳でもな
 い。
 
 今はそんな事はどうでもいい事。

 笹本が帰り、敬が階段を上り自分の部屋に行こうとして
 いたのを留める。
 
『明日よろしく』
 
 その言葉が気になったのだ。
 稔が来るのではと。
 さり気なく聞いてみると案の定。
 それ以上はなにも聞かず恭夜も自分の部屋へと。

 自室の扉を閉めた瞬間、言いようのない思いが体の中
 を駆けめぐる。
 違和感を感じ手を見ると震えていた。
 それを押さえようとするが、押さえた手も震えていた。
 手だけではない全身が震えていたのだ。

何だこれは!

 湧き上がる感情を朝得る事が出来ない。
 初めての感情に戸惑う。
 だが不思議と悪い気はしない。
 足下をふらつかせながらベットへと倒れ込んだ。

漸くだ
漸くこの手に

 震える両手を翳し見る。
 
二度と離すものか!

 明日稔は自分を見てどういう反応をするだろう。
 全く変わった自分を見て。
 怯えるだろうか。
 それとも・・・・・・

 着替える事もせず明日の再会に思いを馳せる。
 いつの間にか眠りへと落ちて行った。





 
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