求める心
(7)


キリ番44444をGetされたレイコ様からのリク





 再会当日。

 恭夜は昨日そのまま寝てしまった体と頭の中をさっぱり
 させるべくシャワーを浴びる。
 そして皆との食事の時間をずらす。

 聡い家族の事だ、恭夜がいつもの通りにしていても気
 付かれてしまうだろう。
 浮き立つ心を。
 他の者は分からずとも、敬には分かってしまう。
 いつもと違う日常。
 稔が来るという。

 気付かれ警戒され、家ではなく外で会う事になれば。
 外で敬に偶然を装う事は無理がある。

 顔を合わせたくなく思うが、食事の支度をしてくれる笹
 本はそういう訳にはいかない。
 支度をしてくれている間、どうやら気付かれてしまったよ
 うだ。
 だが何も言ってはこなかった。
 いつもと同じように笑っているだけだった。

 食事の後は部屋に戻りベットに横たわる。
 寝るわけでもなく瞳を閉じ稔が来るのを待った。
 結局午前中には来なかった。
 何時に来るのか気になって仕方ないが、聞くわけにも
 いかず、昼食も敬と時間をずらし取る事になった。
 食事をした後は部屋にこもる。
 そして漸くその時が。

 インターホンの音が恭夜の部屋にまで聞こえてきた。
 敬も聞こえたのか、隣りの部屋のドアが開く音が。
 階段を下りていく足音。

『いらっしゃい。 早かったね』

『初めて来る所だから、迷って遅くなるのも悪いかと思ってさ』

 ドアの外から聞こえてくる敬の声。
 それに混じって別な者の声も聞こえて来る。

 だが、この一年間忘れる事はなかった声。
 待ち侘びた者と同じ声。

 ほんの僅かな時間。
 そして殆どが喘ぎ声。
 あの時聞いた声の持ち主がここに今いる。

 部屋を出てゆっくり階段を下りて行く。
 二人の声がボソボソと聞こえてくる。
 廊下とリビングを繋ぐ扉は透明なガラス。
 その場所からは敬の顔しか見る事が出来ない。
 自分の獲物稔は敬の反対側に座っているので、後ろ姿
 しか見えない。
 
こんなに華奢だったか?

 一年前と比べ体の線が細くなっている。
 髪も長め。
 そしてその黒髪から覗く項と、グラスを持つ手の白さ。
 
 去年ホテルに連れ込んだ時、服に隠れていた部分は確
 かに白かった。
 だがそれ以外、外に出ていた肌は綺麗に焼けていたの
 に。
  
 如何に外出していなかった事が分かる。

それ程俺に会いたくなかったのか!

 怒りがこみ上げてくる。
 だがこれからは常に自分の目の届く範囲にいると思え
 ば怒りも収まる。
 そんな事を思っていると中から不愉快な言葉が。

 「じゃあ、明日から一週間北海道に行こう」と敬が旅行に
 誘っているのが聞こえた。
 自分の物なのに勝手な事をされては困る。

だが下手に敬を刺激して邪魔をされては・・・・・
ならば!

 考えながらドアを開けリビングへ入って行く。
 自然さを装い視線を稔に向け「客?」と聞く。
 その時後ろ向きでいた稔が大きく反応。
 勢いよく恭夜を振り返った。

こいつだ!

 探し求めていた人物が目の前に。
 そして目を見開き自分を見詰めている。
 忘れる事のなかった瞳。
 興奮して行くのが分かる。
 
「なんだ、恭夜(きょうや)いたのか」

 敬の声で我に返る。
 目の前にいる稔がどこか怯えた表情に。
 そんな表情が見たい訳ではない。
 警戒心も見られる。

 少し笑ってみせた。
 笑うという行為自体何年もしていなかった為、上手く笑
 えたかどうか。
 だが目の前にいる相手は少し安心した顔になった。
 
 どうやら稔は気付かなかったようだ。
 自分を犯した相手だという事を。

 それもその筈。
 髪型も服装も変わった。
 真面目そうに見えるメガネも掛けている。
 忘れていた笑うという行為もしてみた。
 言葉も出来るだけ柔らかいものに。 

「いたらいけないのか?」

 聞いたことない声に戸惑う敬。
 
「ああ、稔。 弟の恭夜だ」

 いつも冷静な敬には珍しい。
 それが可笑しくもある。

「初めまして。 弟の恭夜です」

 笑みが自然と零れ、態度、言葉までもが柔らかいものに
 なっている。
 そんな自分に驚く。

「あっ、初めまして。 高梨稔です」

 警戒心を解いた獲物。
 自分を犯した相手だと気付かず、柔らかな笑みを浮か
 べている。
 去年、友人と一緒にいた時見せていた元気な笑みでは
 ない。
 真っ直ぐな視線は同じ物だったが、奥の方に怯えが見ら
 れた。
 それは多分、恭夜に犯された時の恐怖が残っているか
 らだろう。
 
 印象も薄くなり、全体的にすっかり変わってしまってい
 た。
 一瞬にして興味が失せてもおかしくはないのだが、今ま
 で以上に稔の事が欲しくなった。

 こんなに変わってしまった原因が自分なのだ。
 自分が稔を変えたのだと思うと、心のざわめきが止めら
 れない。
 全てを自分で変えてしまいたいという気持ちに囚われて
 しまった。

俺の物だ!

 敬が何か気付いたのか笑っている。
 だが恭夜はそれを無視し稔を見つめていた。

俺のものだ・・・・・





 
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