求める心
(3)


キリ番44444をGetされたレイコ様からのリク





 その写真には、探し求めていた獲物の姿が。
 一年前と同じ姿で写っていた。
 他の写真にも写っているのではと思い、同じ体育祭の写真
 数枚手に取る。
 その中の一枚にやはり獲物の姿が。
 その写真では敬と獲物が親しそうな姿で写っていた。
 何という幸運。
 
 必死になって探していた獲物が、こんなに近くにいたとは。
 しかも敬と知り合い。
 もしかしたら友人か。
 顔には出さず聞いてみた。
 
「なあ、敬」

「なに?」

「ずいぶん楽しそうだな。 こんなに機嫌がいいお前見たこと
ないがどうしてだ」

 普段の敬は滅多に表情を表に出すことはない。
 なのに、ここに写っている敬は珍しく楽しそうな顔をしてい
 た。
 他の写真を見て分けていた敬がその作業を止め恭夜の手
 にしていた写真を覗き込んで来た。
 そして懐かしそうな顔に。

「ああ、これね。 去年の体育祭の写真か。 へぇ・・・・・」

 そう言って写真を見たまま言葉を発しない。
 その時の事でも思い出しているのだろうか。
 何でもい、直ぐに情報を得たいのに。

「なあ、どうしてだ」

 いつになくしつこい恭夜に、敬が訝しげな目で見て聞いて
 来る。

「いやに絡むね。 何かあるのか?」

「・・・・・この時の敬の機嫌の良さに興味がある」

「ふ〜ん・・・・・」

 恭夜の顔から何かを探ろうとしているようだ。
 だが恭夜もそう簡単には探らせない。
 納得はしていないが別に隠す程の事でもないと思ったのか
 あっさり教えてくれた。

 この写真に写っている人物が敬の一番のお気に入りだと
 いう事を。
 そして今は同じクラスである事。
 そして来週、この家に遊びに来る事になっているという。

あの獲物がここに来る?!

 心が震える。
 探しても一向に見つける事が出来なかった獲物がこんな
 に近くにおり、あまつさえ自分の兄と友人だとは。
 そして来週、この家にやって来るという。
 自分の手の中に戻ってくる、そう思うと笑いがこみ上げてく
 る。

 表情にはその喜びは出ていなかったが、敬は何かを感じた
 ようだ。

「先に言っておくけど、稔の前に姿を現さないでくれる?」

 釘を刺される。

姿を現すなだと?

 恭夜の雰囲気が変わった事に、敬は直ぐさま気付く。
 何故機嫌が悪くなったのかと眉を顰める。
 そして「ああ・・」と思い至ったらしい。

「別に恭夜と稔を会わせたくないって事じゃないんだ。 会わ
せるのは構わないんだけど、その姿はちょっとね・・・・・」

俺の姿?

 訝しげな恭夜に敬は指摘していく。

「そう。 稔は繊細だから、恭夜みたいに、髪は金髪だは目
つきも悪い、存在だけで恐怖を与える奴がいたら怯えるから
ね」

 確かに今の恭夜は殺伐とした雰囲気を纏っている。
 だが、それは目を付けた獲物が逃げ出し、見つからなかっ
 たから。
 恭夜の事を色々と言うが、敬自身も相当物騒ではないか。
 今現在はどうだか知らないが、以前外で敬を見かけた時に
 は自分より凶悪なのではないかと思った位。
 顔ではない。
 やってる事だ。
 そんな敬に、繊細と言われた獲物が友人でいられるのか。
 そう思った事が敬に伝わったらしい。

「俺はね、稔の前では優しくて穏やかだから」

 そう稔の事を話す敬の表情は軟らかい。
 家では、いやそれ以外の場所でもこんな穏やかな顔をして
 いる敬を見た事がない。
 それだけ敬にとっても、獲物、稔の存在は大きいのだろう。
 敬が、稔の事を一体どう思っているのか。
 一番それが気になる。
 だがこれ以上聞いて、敬に感づかれるのも困る。

どうせ来週には本人が来る

 二人の関係もその時に分かるだろう。

恋人なのか、それともただのお気に入りかも・・・・・

 敬の言う通り、このままの姿で合うのは不味い。
 こんなに近い場所にいたのに、見つからなかったという事
 は、稔が自らの意志で学校以外では身を隠していたという
 事は確実。
 理由は、恭夜に会わないようにだろう。

腹立たしい・・・・

 そこまでして身を隠していたのだから、この姿は稔にとって
 は恐怖以外の何者でもない筈。
 見た瞬間逃げ出すに違いない。
 そうなれば敬が出てくる。

 自分のお気に入りが、恭夜の顔を見た瞬間逃げ出すの
 だ。
 そして敬の事を徹底的し避けるだろう。
 なにせ自分の事を犯した奴が弟なのだから。
 
 敬はその事を聞き出すに違いない。
 そうなると厄介だ。

 普段は恭夜に対しては何も言わないし、邪魔をする事のな
 い敬だが、自分のお気に入りを傷つけたとしればどんな事
 をしてくるか。
 当然稔に近づく事は出来なくなるだろう。
 自分の気に入らない事、者はどんな手を使っても排除する
 のが敬だから。
 自分もそうだが、敬も家族だからといって手加減する事な
 どない筈。

 その時ふと思いついた事を敬に聞く。

「なあ・・・・・、敬の高校って校則煩いか」

 突然関係のない事を聞いてきた恭夜を訝しげな顔で見る。
 だが、ふと思い出したようだ。

「ああ、恭夜は今年受験か。 忘れてたけど。 なに、うちの
高校に入るつもり?」

 敬の言った事には答えず、もう一度聞く。

「校則は厳しいのか」

 答えるつもりのない恭夜に肩を竦める。
 そして、恭夜の知りたかった事を話す。

「そうだね、校則は厳しいよ。 恭夜の成績なら、全く問題な
いけど、その金髪だと入学は無理だよ」

「・・・・・そうか」

 取り敢えず、今知りたかった事が分かっただけでもよしとし
 ようと思い、敬の部屋を後にした。





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