本当の気持ち
(14)







 突然無言になり、若菜を抱き上げリビングを出て行く貴章に不安にな
 る。

「あ、あの貴章さん?」

 答えず階段を上がって行く。 
 一体どうしたのか。
 何か貴章を怒らせる事を言ってしまったのだろうか。
 涙腺が緩んで行く。
 こんなに泣き虫ではなかったのに。
 「クスン・・・」という音に貴章が我に返る。

「どうした?」

 貴章の雰囲気が柔らかくなった。
 ホッとなる。

「何だか恐かった・・・・・・」

 貴章は自分の配慮にの足らなさに気付く。 
 若菜が相手だと、自分の理性があっさりと砕けてしまう。
 こんな自分ではなかった筈なのに。
 こんな事では若菜に何かあった時、直ぐに崩れてしまう。 
 何事にも動じることがなく、何時も物事を冷静に判断こなして来ただけ
 に、自分に大切な者が出来た時の弱さを知った。
 同時にそれさえ、強い物にしてしまえば、他に何が合っても揺るがない
 自分になれる事も知る。

「すまなかった」

 そう言い、若菜に優しく口づけた。
 貴章の口づけに、顔を赤くしながらももっと欲しがる自分がいた。
 首に腕を回し、ギュッとしがみつく。
 長い階段を上りきり、奥に歩いて行く。
 そして幾つかのドアを横切り、一つのドアの前で止まる。

「ここは?」

「私の部屋だ」

 そう言ってドアを開ける。
 中は貴章のマンションと同じよう。
 無駄な物がないシンプルな部屋。 
 かなり広く、机・本棚・ベットしか置いていない。
 寝に帰るだけなら、丁度良い部屋なのかもしれないがこれは寂しすぎ
 る。
 何時帰って来てもいい様に整え掃除はされているようだ。
 きちんと整えられているベッドの上に、若菜をそっと降ろす。
 
「若菜。 もう黙って私の前から居なくなるな・・・・」

 切なそうに顔を顰め若菜を抱きしめる。 
 黙って居なくなった事で、貴章にそんな顔をさせてしまった事を悔いる。
 しかし、あの時は自分の事で大好きな二人を仲違いさせたく無かった。
 何も言わなければ、綾瀬さえ黙っていてくれていれば、たった二日だけ
 の、何の取り柄もない自分の事など直ぐに忘れるだろうと。
 浅はかな自分の考えに、逆に貴章を苦しめる事になるとは。

「ごめんなさい・・・・・・」

 貴章を全身で確かめようと、若菜も強く抱きしめる。
 暫くのあいだ、そうしてお互いを確かめあう。
 どの位時間が経ったのだろう、貴章は力を緩める。

「身体は大丈夫か?」

 一体何の事だろうか、分からずキョトンとしていると、背中に回されてい
 た手が下の方へ降りてくる。
 そこまでされ、ようやく思いあたる。
 ボンッと音が聞えるかのように、顔が赤くなった。

「・・・え・・あの・・・・・・大丈夫です。 ちょっとまだ変な感じは・・・・・・・」

「良かった。 大分無理をさせたから心配だった」

 あからさまに言葉にされると、もの凄く恥ずかしい。
 見つめ合っていた視線を外し、彷徨わせる。

「駄目だ、私を見て・・・・」

 一瞬でも視線を離したくない。
 自分だけを見つめていて欲しいのだ。
 照れながらも、視線を貴章に戻す。

「若菜・・・・・・」

 甘い視線に囁き。 
 若菜はすっかり酔っていた。
 そしてそのまま唇が重なる。
 何度も何度も繰り返しながら、お互いが高まって行く。
 貴章はそのまま、若菜の制服を脱がしていく。 

 貴章とのキスは何度しても気持ちがいい。
 すっかり何だか分からなくなっていた。
 貴章は唇をそのまま首筋、鎖骨と落としていく。
 その度に若菜の身体がピクリピクリと反応する。
 その反応を楽しみながら、全ての衣類を取り去った。
 ほんのり染まった全身が艶めかしい。 
 若菜の口からも、艶やかな声が。
 その声に煽られ貴章の愛撫も執拗となっていく。





 
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