本当の気持ち
(7)







コンコン

 晃司が若菜の部屋のドアをノックする。

「若菜? 開けるよ」

 返事がなかったが心配でそっと開けた。
 中を覗くと若菜は布団の中に入り寝ていた。 

「「どうしたの!」」

 それぞれが叫んで部屋に入る。
 本当は一人ゆっくりしていたかったが、大好きな家族に心配かけたくな
 い。
 布団から顔を覗かせる。

「別に何でもないから。 昨日綾瀬と遅くまで起きていたからちょっと眠く
って」

 家を出る時誰もいなかったので心配するといけない思い『綾瀬の家に
 行って来ます』とメモを置いておいた。
 誰もが綾瀬を信頼しているので、こう書いておけば疑われないから。
 もし電話があったとしても綾瀬なら何とかしてくれると思ったし。

「遊びすぎたのか? ダメだぞ夜遊びは美容の大敵だぞ。 気を付けない
と」

 ベッドの脇に座り込み、布団から覗くツヤツヤな若菜の頬を撫でる。

「ん?」

 晃司の手が止まる。

「どうしたんだ若菜! 熱っぽいぞ」

「「え!若菜ちゃん熱?」」

「青葉、氷枕! 医者だ医者」

 大騒ぎになってしまった。
 寝ていれば明日には治っているはずだから取り敢えず寝かせて欲し
 い。
 原因は分かっているのだから。

「大丈夫だから。 寝てれば明日には良くなってるからね?」

 とお願いする。
 心配だが若菜が大丈夫言うのだから大丈夫なのだろう。
 ダメな時はちゃんとダメと言うのだから。
 それに若菜のお願いには誰も勝てないのだ。

「でも、昨日綾瀬さんから電話があった時には何も言ってなかったぞ?」

綾瀬から電話が?

 きっとあの後電話してくれたに違いない。
 有り難かったがかなり複雑。

「帰る途中でなんだか怠くなったんだよ・・・・・」

 これ以上喋ったら何かボロが出てしまう。
 どうしようか考える。

「若菜が大丈夫だと言うのならいいが・・・・・ ママ何か栄養のある物を
頼むよ」

「ええパパ。 早く良くなって貰わないとね。 何がいいかしら?」

 この夫婦腕を組んで急にイチャイチャし始めた。
 晃司は若菜も大切だがそれとは別に妻佐織も大切だった。
 目の前で急にイチャつき始めた両親に子供達は呆れる。

「何でもいいけど、僕ミネストローネがいいかな」

 若菜は皆に早く出て行って欲しかったので注文した。
 仲のいい二人を見るのが辛かった。
 自分も貴章とこんな風に一緒にいたかったのに・・・・・

「そう? じゃあ待っててね」

「ちゃんと寝てろよ」

 先に二人が出て行く。
 青葉と紗英の二人が残ったが、青葉は紗英に追い出される。

「お、おい紗英。 何すんだよ」

「いいから先に出て。 青葉煩いから邪魔なのよ」

「何だと。 こらー!」

 紗英にも早く出て行ってほしかった。
 青葉を追い出した紗英は若菜の顔を見て複雑そうな顔に。
 
「ねえ、若菜ちゃん。 何かあった?」

 突然の言葉にうろたえてしまう。
 焦ったら感のいい紗英に気づかれてしまう。

落ち着け・・・・・

「え、何もないよ。 どうして?」

「だって若菜ちゃんなんか辛そう・・・・・・」

 ドキリとした。
 何か態度がおかしかったのだろうか。 

「雰囲気は色っぽいのに、目が辛そうだから・・・・」

 あまりの鋭さにしばし呆然。
 どうしようか、ハッキリ言ってしまった方が少しは楽になれるのだろうか。
 無言で見つめ合う二人。 
 紗英も若菜の迷いを感じ待ち続けた。
 先に目をそらし俯く。
 そして大きく息を吸い、意を決して口を開く。

「僕ね、好きな人が出来たんだ・・・・・」

やっぱり

 でもどうしてそんなに辛そうなのか気になった。
 大好きな若菜には幸せになって欲しい。
 こんなに綺麗で優しい兄を悲しませるなんて許せない。
 どう始末してやろうかと、紗英は物騒な事をつい考えてしまう。
 自分でさえこんな事を考えるくらいだから、晃司や青葉が知ったら一体
 どうなることか・・・・・

「うん」

「初恋なんだ。 凄く素敵な人で、その人も僕の事好きだって言ってくれ
たんだけど。 本当に大好きなんだ。 でも一緒にいられないだ・・・」

 貴章を思い出し切なくなる。 

「どうして一緒にいられないの? 好きだって言ってくれたんでしょ。 何
がいけないの?」

両思いなのに一緒にいられないなんて・・・ 
一体若菜ちゃんの相手はどういった人?  
まさか不倫・・・・・ 
・・・・・・それはあり得ないわね

「その人と一緒にいたら大切な人をなくしてしまうかもしれないから。 こ
れからもずっと一緒にいたいから、悲しませたくないから・・・・・・」

 何となく分かった。
 若菜の大切な人。
 家族以外で心を一番許しているのは久我山綾瀬。
 綾瀬に関係した人物。

でも綾瀬さんの所って兄弟だけだった気が・・・・
細かい事は置といて、早速連絡しないと

 話しを切り上げ部屋をでた。
 綾瀬の携帯に連絡を入れたが繋がらない。
 きっと何か知っているはずだ。
 しかし結局その日は連絡が取れなかった。

 不安だけが紗英の心に残った・・・・・・





 
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