ハッピー・ウエディング(5)
(運命の人)

キリ番15,000を踏んだyo-yoさんより
拓巳が良太郎親子にどう対するのか・・・








 二人が足を踏み入れた途端、割れんばかりの盛大な拍手と祝
 福の声が会場に響き渡る。
 薄暗い会場。
 ピンスポットに照らされる。

何なんだ!?

 余りの人数の多さと、会場に広さに拓巳の頭の中は真っ白。
 会場内にいた者は全員正装していた。

 良太郎は動きを止め固まる拓巳をさっさと横抱きし中へと進ん
 で行く。
 一番奥はひな壇になっており、豪華な花で飾られたテーブルに
 椅子が二つ置かれていた。
 テレビなどで見る芸能人の婚約、又は結婚会見のような仕様。
 頭がついていかない。

 良太郎は周りに挨拶をし、満面の笑みを浮かべ時折拓巳に顔
 をすり寄せていた。
 ひな壇の左側の席のそっと拓巳を降ろし自分も右の席に腰を
 降ろす。
 それを確認し代田が頷く。
 良太郎達から今度は代田にピンスポットが当たり、司会進行を
 始める。
  
「皆様大変長らくお待たせ致しました。 これより奥寺良太郎・磯
谷拓巳の結婚披露宴を行いたいと思います」

 今まで意識を遠いところへ飛ばしていた拓巳が、代田の「結婚
 披露宴」と言う言葉を聞き戻って来た。
 そして良太郎を睨み付けた。

「・・・・・おい」

「はい」

 満面の笑みで返事をする良太郎。
 
「今あのクソ秘書が結婚披露宴と言ったが、どういう事だ・・・・・」

 その言葉に良太郎が答える前に、代田が会場の皆に説明をす
 る。

「本日は突然の事ながら大勢の方にお集まり頂けたことを、両家
に代わり熱く御礼申し上げます。 本日奥寺良太郎・磯谷拓巳
の養子縁組が滞りなく行われました。 お二人はごらんの通り男
性同士ではありますが、とても愛し合い、強い絆で結ばれており
ます。 世間ではまだ認められる事も少なく多種多様な目で見ら
れます。 しかし、そういった事にも耐え乗り越えました。 ご家
族の方もそんなお二人の気持ちに感動され、めでたく養子縁組
という今日という日を迎えました。 折しも今日は良太郎さんの
誕生日です。 二重の喜ばしい日でございます。 この喜ばしい
日を皆様にも祝って頂きたく、急ではございますが席を設けさせ
て頂きました。 それでは奥寺グループ社長であり新郎の父であ
る奥寺良一氏よりのご挨拶と乾杯の音頭がございます。 皆様
グラスをお手にお持ち下さい」

ちょっと待て、今何と?
誰と誰が愛し合い、強い絆で結ばれていると?
しかも、養子縁組が済んだと言わなかったか?
俺はそんな事許した覚えもないし、書類だって知らないぞ・・・

 どういう事だと嫌な汗が出る。
 頭の中で様々な事がグルグルと回る。
 そんな拓巳をよそに、良一のスピーチが進んで行く。

「今日、この良き日を皆様方と祝うことが出来、私はとても嬉しく思
います。 長男良太郎が拓巳君という、とても美しく聡明な良き
パートナーに巡り会えた事を感謝しております。 そして、拓巳君
のお父さん、お母さん。 二人の結婚を許し心から祝福して頂い
た事を心から感謝します。 拓巳君本当に有難う! これからも良
太郎の事を宜しく頼みます。 二人共幸せに! 乾杯!」

「「乾杯!」」

 会場中に響き渡る「乾杯」の声とグラスの音。
 皆が敵に見える。
 最大の敵はスピーチの最後に拓巳を見、感涙の涙を流した良
 一と、目の前にいる良太郎だ。
 憎々しげに見るが、良太郎はそれはもう幸せそうに微笑んでい
 る。

「拓巳さん、幸せになりましょうね。 さ、お祝いです、飲みましょ
う」

 頬を染め無理矢理拓巳の手にグラスを持たせ乾杯し、口元へ
 持って行く。
 めでたくはないが、気を落ちようとグラスの中身を飲み干す。

「よこせ」

 良太郎の持っていたグラスも奪い取り飲み干した。
 漸く一息ついた。

「なあ、今養子縁組が済んだとっていたが・・・」

「はい、拓巳さんはめでたく『奥寺拓巳』になりました。 晴れて夫
婦?夫夫ですかね」

 「あははは」笑う良太郎に『本当に殺してやろうか』と思いつつ、
 どういう経緯でそうなったのか聞く。
 そう、本当なら今日は婚約パーティーの筈なのだから。

「あの後、父と二人剣コーポレーションに行ったのは知ってます
ね。 剣とは遠戚なんです。 今日は仕事の事ではなくて私用で出
かけたんですよ。 その時父が「今日は良太郎の婚約パーティー
を開くんだ」って言ったんです。 そうしたら、剣の社長が、今日
は俺の誕生日なんだから、いっその事、籍を入れてしまえばいい
のにって言ってくれて。 じゃあ急いで拓巳さんの家に挨拶しに
行こうって事になりまして、その前に役所から用紙を取り弁護士を
連れて拓巳さんのご実家に行ったんです。 最初は「帰れ!」っ
て怒鳴られたんですが、後から合流した俺の母と、拓巳さんのお
母様が意気投合されて、何だかんだしている内に和気藹々として
、そのままお父様が書類に記入して下さって、めでたく完了しまし
た。 本当に良いお父様ですね。 拓巳さんと同じでとても綺麗な
方で。 あ、心配されなくても、俺は拓巳さん一筋ですから!」

死ね
死んでしまえ!

 何が拓巳さん一筋だ。
 自分の知らないところでそんな事になっていたとは。
 よけいな事を言った剣に腹が立ったが、それ以上に勝手に自
 分の承諾も無しに書類を記入し戸籍を弄った父に怒りを覚えた。
 とてもバイオレンスな父に勝てるとは思わないが、一発くらい
 殴らない事には気が済まない。
 あたりを見回し、父の姿を探す。

ちっ、肝心な時にいないのかよ・・・・・・

 会場の広さと、人の多さに父の姿が見あたらない。
 後で必ず探し出して殴ろうと誓った。

「お前、俺の意志は無視なのか? それで本当にいいのか」

 良太郎を見つめる。
 良太郎も真剣な目で拓巳を見つめ答えた。
 端から見れば熱々のカップルにしか見えない。

「いいんです! 今は俺の事を好きでなくても、拓巳さんは俺の事
絶対に好きになりますから。 いえ、好きにさせてみせます。 今
日から一緒に暮らすんですから、毎日口説きます。 覚悟して下
さいね」

 恐ろしい単語を聞いた気がする。

「・・・・一緒に暮らす?」

「はい、拓巳さんの荷物は実家からすべて新居に移動しました
から」

 その言葉に呆然とする拓巳だった。

「何だって・・・・・?」

「当然です。 俺達今日から夫夫ですから。 新婚さんなんです
よ。 新婚早々別居なんておかしいじゃないですか。 取り合えず
家が完成するまでの仮の家です。 急に決まった結婚だったの
で、新居が出来てないんですよ。 今日急いで手配しましたから。 
でもどんなに急いでも一ヶ月は掛かってしまうんです。 すみませ
ん」

 本当にすまなそうに頭を下げるが、そういう問題ではないだろう。
 どうして全てが事後承諾なのか。
 いや、結婚するつもりなど全く無かったのだから、先に言われ
 ても当然承諾なぞする筈もないのだが。

「俺はお前と一緒に住むつもりはない。 勝手に運ばせた荷物も
実家へ戻せ。 家も建てるな」

 断固拒否する拓巳の姿に、良太郎はすねた口調で口を尖らせ
 ながら言う。

「え〜、駄目ですよ〜。 今日は偶然にも大安で、ここに来る前に
地鎮祭済ませて来たんですから」

素早い・・・・・・

「新居は、俺の自宅の敷地内に建てているんです。 本当は拓
巳さんのご家族もご一緒にと思ったんですが、お仕事の関係上
無理だと言われまして」

「当然だろうな、家は店舗続きの家だからな。 いや待て、そうい
う問題じゃない」

「ええ、残念ですが。 それで新しい家族に何かプレゼントと思い
まして、皆さんに聞いてみたら、お父様はダブルベットが欲しいと
仰ったので・・・・・」

「人の話を聞け! ・・・・ん? チョット待て・・・・・皆さん?」

「はい、皆さん」

「親父とお袋と芳実と佳輔と佳斗全員か?」

「はい」

 あっさり迷わず頷く良太郎。

あいつら、人を売りやがったな・・・・・・

 怒りを再燃させる拓巳。
 今後の復讐をより強い物にするために、それぞれ貰った物を
 良太郎に聞いて行く。

父芳人・・・・・「ダブルベット」
いい年しやがって・・・・

母佳子・・・・・「毎日忙しい芳人の為にマッサージチェアー」
愛だな

長男芳実・・・「ホームシアター一式」
あんな狭い部屋で見られるか!

三男佳輔・・・「パソコン一式」
オタクが・・・・

四男佳斗・・・「マウンテンバイク」
しかもポルシェ製。クソガキが!覚えていやがれ・・・・・・

 背中に炎を背負いながら拳を握る。
 そんな拓巳の様子を物ともせずに話しかける。
 
「さあ、皆さんをご紹介しますから行きましょう」





Back  Top  Next





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送