ハッピー・ウエディング(2)
(運命の人)

キリ番15,000を踏んだyo-yoさんより
拓巳が良太郎親子にどう対するのか・・・








 辺りを伺いながら玄関を出る。

「よし、誰も居ない」

 人影も車も見当たらない。
 家にそのまま帰るのは危険だから、取りあえず今日一日何処
 かホテルにでも身を隠そうと決め歩き始めた。

 その横に音も無く車が一台着けられ、中から社長秘書の代田
 が降りて来た。

「迎えに来ましたよ、磯谷君」

 人の良さそうな笑みを浮かべているが、拓巳には胡散臭くし
 か見えない。
 腹に一物二物ある笑顔だ。

「なっ! どうして」

「山内部長から、今君が早退したとの連絡を貰いましてね」

部長の奴俺を売りやがったな・・・・・

 心の中で山内を呪う。

「君の事なので、絶対逃げると思いましてね。 もし早退をする
様であれば必ず私に連絡する事を、君の上司に言いつけてお
いたんですよ。 私は社長達のお供をせずに社内で待機してい
たんです」

 爽やかな笑顔でニッコリと笑う代田が憎らしい。
 それよりも行動を読まれていた自分が腹立たしい。
 なんとかこの場を逃げなくてはいけないのだが。

「さ、諦めて車に乗りなさい」

「嫌です」

 目の前にいる代田は拓巳よりも背が高く、体つきもすごぶるい
 い。 
 太っている訳ではなく、スポーツで鍛えられ引き締まった体つ
 き。
 とても腕力では敵わないだろう。
 ジリジリと少しずつ下がり間合いを広げる。

ドン

 何かに当たりそれ以上後ろに下がる事が出来ない。
 嫌な予感がし、振り向くと代田と同じ様な体格の男二人が立ち
 拓巳の行く手を阻んでいた。

「仕方がないですね。 藤本、長野、磯谷君を車へ」

 代田の部下と思われる二人に両脇から腕を捕まれ車へと押し
 込められる。
 そして逃げられない様に真ん中に座らされた。
 いくら広い車内でも後部座席に男三人はかなり圧迫感があっ
 た。

「降ろして貰えませんか」

「それは無理。 君には色々準備して貰わないといけない事が
あるから」

「遠慮します・・・・」

「悪いようにはしないから」

 半ば拉致されるように車に乗せられ、自分の意思も尊重せず
 にいるのに、何が「悪いようにしない」なのだろう。
 代田は爽やかに笑うが、実はもの凄く腹黒いのだと理解した。

今まで一番の腹黒だ

 拓巳の力では、この男達から逃げ出すのは無理そうだ。
 頭の中をグルグルと色々な考えがめぐるが良い方法は全く思
 いつかず、そうしている間に車が止まった。

「まず始めは服を用意しないとね」

 後ろを振り返り代田が拓巳にウインクする。
 降りてみるとそこは銀座の高級ブティックの前。
 代田を先頭に拓巳は両脇を固められ渋々中へ入って行った。
 中に入ると数名の店員が待ち構えていた。

「お早うございます。 今日は無理を言ってすみません。 こちら
の方です。 宜しくお願いします。 私達はここで待っていますの
で」

 代田はそう言い拓巳をサッサと店員に渡した。

「気になさらないで下さい。 良太郎さんの大切な方ですからね
飛び切りにして差し上げますよ」

 支配人と思しき人物が代田に言い、拓巳の手をとり奥に連れ
 て行く。
 女性とは思えないような力強さ。
 周りをその店の従業員に囲まれアッいう間に身包みを剥がさ
 れ下着一枚の姿に。

 呆然とする拓巳。 

 せめてもの救いはスタッフが全て男で、事務的に作業を進め
 ている事だった。 

 あちらこち採寸され、色々な背広、礼服を着させられ、終わっ
 た時には精根尽き果てていた。
 ソファーに座らされ、冷たい飲み物を出され一気に飲み干す。
 直ぐにお代わりを持ってこられたが、それも一気に。
 身体が水分を欲しがっていたのだと実感した。
 
「お疲れ様でした。 お腹もすいたでしょうから食事にでも行きま
しょう」

 そう言い、ブティックから歩いて直ぐの所にある和食専門店に
 連れて行かれた。 
 自分ではまず入ることの無いだろう、見るからに高級そうな店。
 個室もあり、その一室に入った。

「嫌いな物はないかな」

「ありません・・・・」

「そう、じゃあ遠慮せず適当に頼んでいいから」

「別に食事はいいんで、帰りたいんです」
 
 好き勝手にされいい加減頭にきている。
 拓巳が何時も以上に冷たい眼差しで見ているのにも関わら
 ず、代田はニコニコ笑うだけ。
 それがまた腹が立つ。

「君は怒った顔がとても綺麗だね。 うん。 でも帰らせる訳には
行かないよ。 まだ色々やることがあるし。 諦めたら」

「諦められないから言ってるんです」

「困ったね」

此奴っ!

 ギリリと睨み付ける。
 だがこの代田、あの社長秘書をやっているだけあってのらりく
 らりと拓巳をかわしていく。
 そのうち頼んだ料理が来たので一旦話を中断し食事をする。
 悔しかったので、一番高い昼のコースを頼んだ。
 見た目も鮮やか、、勿論素晴らしく美味しかった。

 食事が終わり、今度は美容院に連れていかれ、髪の毛をセッ
 ト。
 その後メンズエステに連れて行かれ色々塗りたくられマッサー
 ジされた。

「お客様、とても色が白くてお肌もきめ細かくて、お手入れの必要
なんか要らないくらいですね」

 店員に褒められ複雑だった。

 全てが終わった時には、外は真っ暗。
 時計を見ると6時をまわっていた。

「少し遅くなりましたね。 急ぎましょう」

 言われ連れて行かれたのは都内でトップのホテル。
 国内だけでなく、海外にも幾つかホテルを持ち食事・サービス
 全てに置いて一流で数々のVIPも利用しているという久我山
 グループのホテルだ。
 連れて行かれたのは直通のエレベーターに乗って最上階の部
 屋。
 
これはスイートルームとか言う部屋か?

 全く縁の無い部屋に連れてこられ思わずしり込みしてしまう。
 所在なさげに佇む拓巳。
 チャイムが鳴らされ、代田が出て行く。 
 戻ってくると、朝連れて行かれたブティックの支配人が黒のイ
 ブニングドレスを着て箱を抱えたスタッフ一人連れて入って来
 た。

「何とか間に合いましたわ」

「本当に無理を言って申し訳ありません」

「いいえ、良太郎さんの大切な方の為ですわ」

もう駄目だやっぱり逃げられなかった・・・・・

 良太郎の事は嫌いではない。 
 しかし嫌いではないだけ。
 好きだとかそういった感情は全く無い。
 どうやって好きになれというのだ。
 ため息をついていると代田がスタッフを連れてやって来た。

「さあ、着替えましょう」

 拓巳を連れ別室に行き箱の中身の服に着替える様促した。

「本当にこれに着替えなくちゃいけないんですか・・・・・」

「当然です。 諦めて着て下さい」

「俺、男と結婚する気はさらさら無いんですけど」

「無理ですね」

「第一おかしいでしょう。 おかしいと思いませんか」

「思いません。 何故なら、良太郎さんがあなたとの結婚を強く
望んでいますから。 良太郎さんが幸せならそれでいいんです」

そんな無茶苦茶な・・・・・

 拓巳の意思など全く無視。 
 代田との会話は暖簾に腕押し。
 全く会話にならない。
 結婚とか言っているが本当は冗談では無いのかと思い込み
 たい。
 
そうだ、きっとそうだ 
悪い冗談に違いない

 と思ったが手渡された箱の中身を見て本気だと悟った。
 箱の中身は上下全て真っ白の燕尾服だった・・・・・





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