初めてのデート(5)


キリ番5000Get りんりんさんよりのリクエスト
初めてのデートで温泉をとの事で。
少し長くなりそうです。
『本当の気持ち』








 車に戻り今来た道を下りて行く。

 町から少し離れた所に別荘はあった。
 周りに家などは無く、とても静か。
 中は掃除され、綺麗に整えられていた。
 貴章達が来る前に管理人が来て中を掃除し、冷蔵庫に食料品など
 を入れ部屋の空気を入れ換えておいてくれたのだ。
 
「凄く、大きい・・・・・・」

 外から見た時もあまりの大きさに驚いてしまったが、中も広かった。

「ここら辺一帯は久我山の物なんだ。 当然この辺りには人は入って来
る事は出来ない」

 綾瀬の言う一帯とは、どの位なのだろう・・・・
 
「因みにどの位?」

「ここはそんなに広くない筈だ。 4千だったかな.。 紅葉も綺麗だから
後で兄さんと散策しておいで」

・・・・・・・・・・・・。

 どんな数字だ。
 でも誰もいない所で貴章と二人きりの紅葉狩り。 
 何て贅沢なんだろう。

「貴章さん、一緒に行きましょ」

 言って、腕を取る。
 貴章も若菜と二人きりになるのは勿論嬉しい。
 ゆっくりと二人で紅葉を楽しむ為に、お茶の用意をしバスケットに入れ
 敷物を持ち出かける。

 敷地内の紅葉もとても綺麗だ。

 若菜が自分や家族の事、綾瀬との事を話す。 
 それに貴章が相づちを打ち、聞いてくる。
 貴章は若菜に分からない様、家や学校、友達の事を聞き出し回りに
 不審な人物などがいないか聞き出していた。
 今のところそういった人物はいないようだ。 

 定期的に報告される若菜に関しての書類にも問題はない。
 貴章は綾瀬だけでなく若菜に関しても人を付け、定期的に報告させ
 ていた。
 何かあった時、直ぐに動けるように。
 それに若菜の家族には興味があった。
 綾瀬からは、それぞれがかなりの美貌の持ち主だが、若菜が一番の
 美貌だと聞いた。
 若菜に対し、とても過保護な家族だとも。
 そして家族の中で、一番愛されていると。

 今日会った、母親と妹。 
 綾瀬の言った通りだった。
 母親は優しく、妹は華やかな美貌の持ち主であった。
 始めは若菜と付き合っている事を言わず、人となりを見て追々話そうと
 思っていたのだ。
 やはり、自分の家族が男と付き合うのは理解を要するから。

 しかし、綾瀬から既に若菜が自分の兄と付き合っていると聞いていて、
 若菜の初恋で幸せなのであればと、逆に歓迎されてしまった。
 実際に自分に会い、若菜の事を任しても良いと判断してくれたようだ。
 顔も気に入られたらしい。
 兎に角女性陣は理解し歓迎して貰えたのだが。
 綾瀬は男性陣の事を気にしていた。
 もし反対されたとしても若菜を奪う自信はあった。
 しかし若菜の事を考えると、出来るだけ穏便に済ませたいし、済ませる
 つもりだ。
 若菜を幸せに出来るのは自分だけだと、そう思っている。

 少し開けた、周りを紅葉に囲まれた場所に敷物を敷き、そこに二人で
 座る。
 持ってきたバスケットの中から、先に行ったレストランで購入したスコー
 ンを出し紅茶を入れた。

「さ、飲みなさい。 身体が暖まるから」

 貴章から熱い紅茶の入ったカップを手渡され口にする。
 気が付いてはいなかったが、実際には身体が冷えていたようだ。
 紅茶の温かさが身体に広がって行く。

 若菜を引き寄せ、足の間に挟みこみ後ろから抱きしめる。
 背中から伝わる貴章の体温が心地良い。
 若菜を挟みこんだままスコーンにクリームを付け若菜の口元へ。
 大きな口を開け食べる。

「美味しい〜」

 若菜もお返しにと、ブルーベリーソースを付け身体を少し捻り貴章の口
 元へ。
 若菜の手を掴み食べ、 手に零れたソースを舐め取る。
 くすぐったかったが、貴章の舌の動きに息が上がり始めてしまう。
 
 腕の中で高まる体温。 
 貴章は若菜の顎を掴み口づける。
 唇が、舌が、全てが甘い。 
 クリームのせいだけではない。
 そうしてお互いが口づけに夢中に。
 このまま押し倒してしまいたかったが、日も傾きかけ寒さも増してきた。
 若菜に風邪を引かせたくない。 
 理性を総動員し、口づけを解く。
 潤んだ瞳が悩ましい。

「大分寒くなって来た、風邪を引く前に戻ろう」

「はい・・・・・・」

 口づけの余韻に浸ったまま、片づけを終えた貴章の手に引かれ別荘へ
 と戻って行った。
 中に入るとそこは静まり帰っていた。
 電気もついていない。
 綾瀬達の姿も見あたらなかった。
 何処かへ出かけたのかと思いつつ、帰って来た時に直ぐに食事が出
 来るようにと、夕食の支度を始めた。
 着いた当初は、夕食も外でとの事だった。
 しかし若菜がお金がかかるのは一緒なのだから自分が作ると言った
 のだ。
 貴章は管理人に連絡を入れ、若菜が言った食材を用意させた。

「そこに座って待っててね」

 対面式のキッチン。 目の前のダイニングテーブルの所に貴章を座ら
 せ冷蔵庫から食材を取り出す。
 貴章も料理はする。
 何気なく始めた料理。 
 意外と奥が深く、自分に合っている事に気づき嵌った。
 しかし、貴章を知る人はその事を知らない。

 勿論家族も。

 この間家に来た綾瀬が、自分が若菜の為に料理を作ると知ってかなり
 驚いていた。
 目の前で楽しそうに料理を作る若菜は手際よかった。
 腕前もかなりのものだろう。
 そして気が付いた。
 エプロンをしていない事に。
 回りを見渡すと、カウンターの所にデニムのエプロンが一つ置かれて
 いた。
 それを手に取り、若菜の元へ。 

「若菜、服が汚れるからこれを着けなさい」

「はい」

 一端手を休ませ、貴章からエプロンを受け取ろうと手を出す。

「手が濡れているだろう。 私がするから、後ろを向きなさい」

「その位、自分で・・・・」

「いいから」

 何だか照れくさいが、折角なので甘える事に。
 後ろに立ち紐を結ぶと、そのまま手をお腹に回し抱きしめ、若菜の肩
 に顎を乗せてくる。
 貴章の息がくすぐったい。
 
「何を作る」

 楽しそうな声。

「折角なんで、地元の物を使った物。 生ハムとチーズのサラダにキノコ
のスープと、キノコのパスタ。 チーズのリゾット。 それと・・・・・・」

「そんなに沢山?」

「え、多すぎる? 貴章さんにいっぱい色んな物食べて欲しくって・・・」

 一生懸命な若菜が可愛い。

「今度、私の家に来た時にまた作ってくれればいいから」

 若菜の髪に口づけ優しく言う。
 貴章の家に行ける。
 『また』と言う言葉がとても嬉しかった。
 貴章にもたれ掛かり甘える。

「ゴホン」

 突然声がし視線を向けると、綾瀬と悠二が立っていた。
 綾瀬は気まずげに、悠二はスッキリとした顔で。

「新婚さんですね。 羨ましい」

 そんな悠二に冷たい視線で

「そんな顔をしたお前に言われたくない」

 何もかも知っているぞと言わんばかりの言い方。
 何の事か分からない若菜はキョトンとし、珍しく綾瀬の顔が真っ赤にな
 った。

「綾瀬顔赤いよ」

「えっ! いや暑いなと思って」

「お前が熱いのは、そこに居る悠二のせいだろう」

 貴章の指摘に、綾瀬は部屋での事を思い出してしまった。
 兄に自分達の関係は知られていても、そこにある情事を言われるのは
 勘弁して欲しかった。
 特に若菜には知られたくない。
 自分が二人の情事を見てしまった事は良いのだが。
 
「二人でお風呂に入ったんだ〜」

 まだ完全に乾いていない、綾瀬の髪を見て何気なく言った一言が、綾
 瀬を凍らせてしまった。
 確かに一緒に入ったが、それだけではなく。
 そこであった事になど気づいてはいないのだろうが、ニッコリ無邪気に
 言われて悠二も気まずい。
 貴章は苦笑していた。





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