初めてのデート(4)


キリ番5000Get りんりんさんよりのリクエスト
初めてのデートで温泉をとの事で。
少し長くなりそうです。
『本当の気持ち』








 最後に出されたデザートもとても美味しかった。 
 やはりパスタの時と同じように、食べさせあった。

 余りのアツアツぶりに見ている方が恥ずかしく、綾瀬達は無言で食べ
 ていた。

地獄だ・・・・・・

 すっかり満足した若菜、貴章は名刺を取り出し、何か裏に書き始める。
 ウエイターを呼び、名刺をシェフに渡すように言づて、伝票を持って立ち
 上がる。 

 会計をしていると奥からまだ若い男が出て来た。
 年は30前後。 
 スラッとした細身の整った優しい顔立ちの男だつた。

「いらっしゃいませ、社長」

 優雅に頭を下げる。

「忙しそうで何よりだ。 味も落ちていない、更に腕を上げたな」

 シェフを褒められ嬉しそうに微笑む。

「そうですね、毎日遅く研究しています。 折角来て頂いたのに会えなく
て残念がっています」

「ああ、又来る。 連れがとても喜んでいた」

 以前と違う貴章の雰囲気に戸惑いつつも

「お待ちしております」

 と丁寧に挨拶した。
 
 先に出ていた若菜達に近づいて行く、見知らぬ女が四人いた。
 
「私たち、四人で今日来たんです。 もし宜しかったら、ご一緒しません
か」

 自分たちより少し前に会計を済ませていた女達だ。 
 容姿もそれぞれ整っており、全身ブランド物で固めているがそれとは分
 からない様に着こなしている。 
 自分たちの見せ方を知っている。
 入って来た貴章達にチェックを入れていたのであろう。
 自分たちに自信があるだけに、断られることは無いだろうと思い、出て
 来るのを待ちかまえ、声を掛けて来たのだ。

鬱陶しい・・・・・・・

 悠二が適当にあしらい、断っているのにも拘わらず、女達はしつこか
 った。
 困惑している若菜と無言の綾瀬。

「何をしている」

 貴章が現われると、更に女達の目つきが変わる。

「あの、こうして出会えたのも何かのご縁なのでご一緒しませんか。 四
人同士で数も丁度いいですし」

「・・・・・・・・・・」

「良いですよね」

 そう言って、一番顔に自信を持っている女が馴れ馴れしくも貴章に手
 を掛けようとする。

「・・・私に触るな。 行くぞ」

 凍てつくような視線に女達が固まる。
 そして冷たく言い放った後、若菜の腰に腕を回し、車へと向かう。
 こんなに冷たく軽くあしらわれ侮辱された事は初めてだったのだろう。
 女は、その怒りを横にいた若菜へとぶつける。

「そんな、ブサイクより私達の方が全然良いじゃない!」

 その言葉に貴章の雰囲気が一瞬にして変わる。 
 そこに居た全員がビクリ、となる。 
 振り向いた貴章は、相手を射殺しそうな視線を放っていた。
 言った女はガクガクと震え、真っ青に。 
 残り三人も震え泣き出していた。
 
ブサイク・・・・・・・・

 やっぱり自分は、ブサイクなのであろうか。 
 綾瀬達は美人だと言ってくれたけど、あれはやっぱり本当の事を言う
 のは忍びないと気を遣ってくれたのか。
 悲しくなり貴章を見上げる。

「・・・・僕、やっぱりブサイクだから、貴章さんには似合わないのかも・・・」

 大粒の涙がポロポロと零れ始める。
 綾瀬と悠二は恐怖に陥る。

やめてくれ〜〜〜

 心の中で叫ぶ。
 
 愛しい若菜を泣かせ、ブサイク呼ばわりした女に貴章は殺意を覚える。
 若菜を無言で綾瀬に託し、女の元へ。
 女達は恐怖で座り込んでしまった。

「あ馬鹿、若菜!」

 後ろから聞える、焦った綾瀬の声。 
 振り返るとメガネをはずし、あろう事か、悠二に抱きつき服で涙を拭って
 いた。

プチッ

 貴章の中で何かが切れた。
 若菜の元へ行き、悠二を引き剥がし放り投げる。
 余りの事に、涙も止まる。 
 唖然としていると、貴章が若菜の唇を奪う。
 激しい口づけに、恐怖を覚え身体を強張らせるが、大好きな貴章から
 の口づけに、しだいに力が抜ける。
 そして自分からも舌を出し絡める。
 たどたどしくも一生懸命な若菜に、荒れた心が治まって行く。
 飲みきれない唾液が顎を伝う。
 恐怖で泣いていた女達も、投げ飛ばされた悠二も突然始まった、ディ
 ープなキスに一同唖然と。

 一頻り口づけ満足した貴章は最後に、若菜の顎を伝っていた唾液を
 舐める。
 余りの淫らな口づけに全員が真っ赤になっていた。
 ようやく離して貰えた若菜は息も絶え絶え、顔はほんのりピンクに染ま
 り焦点が合っていなかった。
 そして、壮絶な色気を放っている。
 若菜の素顔を見た女達は、その美貌に驚き固まる。
 自分たちの容姿に、今までかなり自信を持っていたのにも拘わらず、
 それがあっさりと崩され、足下にも及ばない事に気づいた。
 四人が口を開け間抜けな顔。
 貴章は、若菜にメガネを掛け肩を抱き車へ向かった。
 その後に、綾瀬と悠二が続く。
 間抜けな女達を残し、さっさとその場を後にした。

 車に乗った貴章は不機嫌だった。
 若菜が泣いたのもそうだが、悠二に抱きついた事がとても気に入らな
 かった。
 そんな貴章の怒りをひしひしと感じている、綾瀬と悠二。
 悠二は大きな体を縮こまらせ、怯えていた。
 綾瀬は貴章の気持ちがよく分かる。
 自分もはっきり言って怒っているのだ。
 
悠二の奴、若菜に抱きつかれて喜びやがって・・・・・・

 普段は、雑に扱っているが悠二の事はとても好きなのだ。 
 そうでなければ男同士でなんて付き合えない。
 あれだけしつこく、「綺麗だ」「好きだ」「死ぬまで一緒だ」とか言ってお
 きながら若菜の美貌によろめくとは・・・・・

許せん・・・・・・

 若菜は無言な貴章に、どうしたらいいのかオロオロとしていた。
 
うえ〜ん
どうしたらいいの〜

 このままでは、埒があかない。
 思い切って話しかけてみた。

「貴章さん・・・。 機嫌悪い?」

 後ろ二人が恐怖に陥る。

若菜〜、そんな直接的な訊き方止めてくれ〜
それじゃあ、更に機嫌が悪くなる〜〜

 貴章は、若菜に視線を向け、少し笑い前を見る。

「そうだな。 若菜が悠二に抱きついたからな。 どうして他の男に抱き
ついたのか、私が納得出来る様な説明が欲しい」

うっ・・・・・・・

 思い出して見れば、確かに悠二に抱きついてしまった。
 意味は無かった。
 本当に。
 ただそこに若菜の欲しい物があっただけで。

「えへへ。 ごめんなさい。 丁度目の前に拭く物があったからつい・・・・」

 頬を指で掻きながら笑う。
 
ふくもの?

 一瞬何のことか分からず全員の頭を疑問符が飛びかう。
 そして『拭くもの』だと気づく。 
 ハンカチ代わりだと。

 なんの冗談、いい訳かと、貴章と悠二は思ったが、綾瀬だけは、若菜
 の言っている事が冗談などでは無く、本気だと分かり頭を抱えてしまっ
 た。

「若菜・・・・・、ハンカチ持ってないのか・・・・・」

 綾瀬が低い声で問いかけると

「持って来たんだけど、車の鞄の中に忘れちゃって。 あっ、ティッシュも
なんだけど。 丁度目の前の服が目に入って。 悠二さん御免なさい。 
服汚しちゃって・・・・・・」

 ションボリ項垂れる。

マジかい! そんなんで俺っては投げられちゃった訳・・・・・・? 綾瀬に
は睨まれるし・・・・・

 最後の事は自業自得なのだが。
 貴章は一気に疲れてしまった。
 ただのハンカチ代わりとはまさか思いもつかなかった。
 しかし、他の男に抱きついた事に関しては別だ。

「次からは、私が持って来て若菜に渡すから。 忘れても人で拭くのは
止めなさい。 私がとても嫌だから」

 貴章に嫌われたくないので、それだけは気を付けようと思い、真剣な顔
 で貴章に「はい」と告げた。
 理由も分かり、若菜も素直に了承した為に、貴章の機嫌も少し直った。
 しかし悠二に対しての怒りは、まだ修まらない。
 後で何か報復しようと思っていた。
 その思いが若菜に伝わったのか、信号で止まった時、急に貴章の顔を
 両手で挟み自分の方へと向け、「チュッ」と軽くキスをして来た。
 突然の若菜の行動に、またもや他3人が呆然と・・・・・

「僕ね、貴章さんにキスされると、とっても嬉しくて幸せな気分になるんだ。
貴章さん、何だか機嫌悪そうだったから。 少しでも嬉しくなった?」

 無邪気な若菜。
 そんな、気遣いと思いに貴章も苦笑する。
 不機嫌でいる事も馬鹿らしく
 なってしまった。

恐るべし若菜・・・・・・・





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