初めてのデート(2)


キリ番5000Get りんりんさんよりのリクエスト
初めてのデートで温泉をとの事で。
少し長くなりそうです。
『本当の気持ち』








「初めまして。 久我山綾瀬の兄で、久我山貴章です。 若菜さんと交
際させて頂いています」

 若菜の腰に手を当てたまま、何の臆面も無く言い切る。
 聞いていた若菜の焦りは最高潮に。

 貴章との付き合いを認めて貰えた事は、とても嬉しい。
 嬉しいのだが今まで悩んでいた自分は一体何なんだろう。
 少し世間に疎い所があると、自分でも自覚はしている。
 しかし、男同士の交際は世間からは冷たく、差別される事くらいは分か
 るし、知ってもいる。
 だからこそ、家族に迷惑をかけないように、貴章から毎晩来る電話も
 気を付けていた。

隠していたのに

 頭の中が真っ白になる。

・・・・・・・・・綾瀬・・・・綾瀬に聞いたと今言われた様な・・・・!

「あ、綾瀬?」

 強張った身体と顔をゆっくりと親友に向ける。

「紗英ちゃんから連絡貰ってね。 一通り話しておいた。 メデタク俺の
兄さんと付き合うってね」

 ニッコリ笑って事なげに。

「・・・・・・それって、いつ・・・」

「月曜の夜。 若菜を家に送る前」

そんなに早く知られていたなんて・・・・ 

 呆然となる。
 でも紗英は何も言わなかった。 

 自分に好きな人がいる。
 でも大切な人、綾瀬を無くしたくないから、付き合う事が出来ないと話
 した。
 その後、特に何も聞いて来なかったから、気遣っていてくれるのだろ
 うと思っていたのに。
 全部知っていたのなら、聞いて来る必要もない訳で。
 と、いう事は、この旅行の事も先に聞いていて、だからあんなに後押し
 してくれたのか。

だからお母さんも・・・・・・? 
・・・・お母さん?

「紗英・・・・・、お母さんに?」

 顔面蒼白

「勿論。 最初は男の人と付き合うって話したら驚いていたけど、綾瀬さ
んから、貸して貰った写真見たら喜んでたし」

「そうなの。 若菜ちゃん、今までお付き合いしてる人とか、好きな人い
なくて心配だったのよ。 でも、もし居ても皆が賛成出来る様な人じゃな
いと当然反対するけど。 紗英に写真を見せて貰って、男の方なのには
ビックリしたけど。 凄く素敵な方で、冷たい印象はあるけど、でもきっと
若菜ちゃんの事を大切に守ってくれると思ったのよ」

 熱く語る母に、若菜を除いた三人が苦笑していた。
 ここまで言われたら、開き直るしかない。

「ありがとう。 凄く心配だったんだ。 男同士だし、貴章さんには社会的
地位もあるし、知られたらみんなに迷惑がかかると思って・・・。 でも、
貴章さんの事は大好きなの。 一緒に居たいの・・・・・」

 若菜が自分の事を、そんなにも考えていてくれるとは。
 胸が熱くなる。
 回りには手を出させない。
 何に変えても若菜を守り、幸せにしなくては。 
 その思いは、前にも増して強くなる。
 掛け替えのない、自分の唯一の宝。
 腰に回した手に力が入る。

「私も愛している。 心配する事は何もない。 必ず守り、幸せにする」

「貴章さん・・・・」

 熱烈な告白に頬を染め、貴章を見る。
 可愛らしい仕草に、貴章も愛おしげに見る。
 二人の世界に入っていた。
 そんな二人のやり取りに、他三人の顔は赤くなり、呆れる。
 何時までも続きそうな、甘い雰囲気。
 このままでは、目的地に着くのが遅くなってしまうと思い、綾瀬は勇気
 をだし声をかける。

「時間はたっぷりあるから。 そろそろ出ないと混むんだけど」

 甘い雰囲気が壊され、顔を顰めるが、綾瀬の言う事ももっともなので
 仕方ない。

「では、若菜さんをお借りします」

 紗英達に軽く会釈し、若菜の荷物を紗英から受け取る。

「いってらっしゃい。 気を付けて、楽しんで来てね」

「若菜の事、宜しくお願いします」

 二人に見送られ車へと。
 車の横に人が立っている。
 近づくと、綾瀬の彼氏楠瀬 悠二だった。
 貴章は若菜の荷物を、トランクに入れている。
 彼もこの旅行に一緒に行くのだから、ちゃんと挨拶しなくては。
 綾瀬の隣りで、自分の顔を見て何だか驚いている。
 不思議に思いながらも

「お早うございます。 ご無沙汰しています。 今日は宜しくおねがいしま
す」

 と言ったのだが。
 
「あ、は、初めまして。 俺楠瀬悠二と言います。 宜しくお願いします」

 顔を真っ赤にし、90°腰を曲げお辞儀をされてしまった。
 この間、少しだけど会って挨拶し、初めましてではないのだが。

「あの〜」

 返事がない事で悠二が困惑していると・・・・

バシッ!

 綾瀬に、頭を後ろから思い切り殴られる。
 あまりの痛さに、楠瀬は地面に蹲り呻く。
 少し痛みが収まり、立ち上がり綾瀬を睨みつけるのだがその目には
 涙が。

「何すんだよ〜!」

 怒鳴ってみたものの、綾瀬に下手惚れな楠瀬。 
 かなり弱々しい、情けない怒鳴り声だった。

「お前は、馬鹿か」

 綾瀬よりも年上で、T大経済学部にも拘わらず、馬鹿扱い。 
 時々「愛はあるのか?」と思う綾瀬の態度。
 しかし、惚れてしまい、5年もかけて口説き落とした下手惚れな恋人
 なのだ。

 甘い感じの男前。 
 学校内外、かなりもてるのだが彼の目には綾瀬しか居なかった。

「なんで?」

「こないだ、会っただろう」

 キョトンと自分を見下ろす楠瀬に、忌々しげに言う。
 若菜の事は、楠瀬に話している。 
 とても綺麗で、守ってあげなくてはいけないと思う大切な友人なのだ
 と。
 以前会った時にはメガネをかけていて、かなりダサイ若菜だった。
 綾瀬の言う事に間違いはないとは思っていても、どうしても納得出来
 ない様子だった。
 メガネで擬態しているとも、言っておいたのに。
 忘れているのがムカツク。
 若菜の美貌に顔を赤らめ、緊張している事に更にムカツイていた。

「若菜だよ。 戸田若菜」

 楠瀬の中で、以前会った若菜が、思い出される。
 その人物と目の前の美人が重なり・・・・・・・

「うえ――――――――――――!!」

 奇妙な叫び声が、爽やかな早朝に響き渡った。





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