初めてのデート(1)


キリ番5000Get りんりんさんよりのリクエスト
初めてのデートで温泉をとの事で。
少し長くなりそうです。
『本当の気持ち』








 紅葉の綺麗なこの季節。 

 今日は、綾瀬に誘われ群馬県は草津温泉に一泊で温泉に行く事に。
 綾瀬の家は、日本各地に別荘を所有しており、月に一度は何処かの別
 荘に行くらしい。
 何度か誘われた事があるが、何時も晃司と青葉に反対され、行くこと
 が出来なかった。

 今回も、ダメもとで一応聞いてみた。
 やはり、何時もと同じように反対された。 
 自分たちも一緒ならいいが二人だけは絶対にダメだと。
 理由は『若菜も綾瀬も美人だから』との事。
 綾瀬はともかく、自分は違うから大丈夫だと言ったが、もう力一杯二人
 で若菜の可愛さ、美人さを語られ途中で力尽きてしまった。
 しかし、今回は違った。
 何時もなら同じ様に反対していた妹の紗英が

「まあ、一度位なら良いじゃない。 ああ見えても綾瀬さん空手2段だし」

 と言って、後押ししてくれたのだ。
 三人揃って『一体紗英に何が!』と思ったが、若菜にはラッキーだった。
 更に、母佐織までも後押しを。

『何故!?』

 そう思ったが、三対二。 
 愛する者達に押し切られ、渋々OKする事に。
 自分達も付いて行きたかったが、晃司は前日からフライト予定になって
 おり、青葉は試合がある。
 日にちをずらして欲しいと言ってみたが、「今が一番紅葉が綺麗だから
 無理」と、あっさり言われ断念した晃司と青葉であった。
 
 友達と行く初めての温泉旅行。 
 家族での旅行はよく行くが、友達同士は初めての事。 
 その初めてが、一番大好きな友達の綾瀬という事で、前日、金曜の夜
 は興奮してなかなか眠れなかった。
 本当なら今週の月曜日に再会し、晴れて恋人になった、貴章とも一緒に
 旅行出来れば良かったのだが・・・・・

 久我山グループホテル・リゾート開発部門を纏める社長なだけに忙しい。
 毎日携帯の小さな画面で逢い、話してはいるがほんの数分だけ。
 とても寂しく、逢いたいのだが仕事なのだから仕方がない。
 逢いたいと言いたいが、それは我が儘だと思い我慢する。
 
 ゆっくりと行きたいが、今は紅葉シーズン。
 「土日は混むから6時半位に迎えに行く」と言われ、5時に起き綾瀬が来
 るのを、今か今かと待つ若菜。 
 
 洋服は昨夜紗英が選んでくれた服を着ている。
 寝る前いそいそと旅行鞄に着替えなどを入れていたら、紗英がドアをノ
 ックし入ってきた。
 そして鞄の中を覗き込み「これじゃあダメよ」と言い、折角入れた服を全
 て出してしまった。
 そして、「これとこれを入れて・・・・、明日はこの服を着てね」と勝手に決
 めてしまった。

 今まで何度も家族で旅行に出かけたが、服を決められた事など一度も
 なかったのに。
 不満げな声を出すと「絶対この服!」と押し切られてしまった。
 今着ている服も当然昨日紗英に「明日着ていく服」と言われた物であ
 った。
 白いパンツに、白のセーター、白のジャケット。
 全てが白で統一されていた。
 白は汚れが目立つから厭だと言ったのにも拘わらず、却下されてしま
 った。
 髪の毛も、これまた紗英に弄られ、綺麗に整えられている。
 今回の旅行に並々ならぬ力を入れている。
 そうして全て紗英に整えられた若菜はとても輝いていた。
 ふんわりとした雰囲気はまるで妖精、または天使のよう。
 満足げな紗英であった。

 但しメガネをかけた瞬間にもの凄く野暮ったい雰囲気に。
 ここまで変わるのもまた不思議。
 
 朝から紗英に弄られ少し疲れ気味だが若菜の頭の中は既に旅行へ。
 やっぱり旅は駅弁。 
 これは外せない。 
 気持ちはすっかり電車の中。
 
 晃司はもう仕事でいないが、青葉は若菜を見送りたかった。 
 そして綾瀬にくれぐれも頼むと言いたかったのだが、試合会場が遠い
 為、若菜が出かける30分前、6時には家を出なくてはならない。
 それだけが心残りで仕方ない、過保護な青葉だった。
 そして若菜を見送る事なく、青葉は泣く泣く試合会場へと出掛けて行っ
 た。

 6時半まで後10分。
 ピンポーンとチャイムが鳴る。

来たっ!

 いそいそと荷物を持って外へ出る。
 綾瀬がニッコリ爽やかに「お早う」と挨拶。
 制服姿もいいが、私服だと更に目立つ綾瀬だった。
 その後ろにチラリと車が見える。

??

「お早う、綾瀬。 良い天気だよね。 後ろに車が見えるけど、駅までは車
で行くの?」

 不思議そうに言う若菜。
 それを笑って否定する。

「違うよ。 電車じゃなく車で行くんだ」

 しかも妙に含みのある言い方。 

何だろう・・・・・

 すると車から、誰か出てきた。 

綾瀬の彼かな?

 降りて来た人物人は、逢いたくて仕方なかった貴章だった。

「嘘・・・・・」

 メガネの下で、若菜の目が大きく見開かれる。
 都合の良い幻だろうか。 
 やはり昨日興奮してあまり寝ていないせいなのか。
 幻でも逢えて良かった。
 幻が近づいて来る・・・・

「若菜・・・」

ああ声まで
なんて都合のいい・・・・

 ボウッとしながら見ていると、幻である貴章が手を伸ばし、若菜の頬を
 撫でてきた。
 大きく、優しい手。

まさか本物?

「貴章・・・さん・・・・?」

 優しく微笑む貴章の姿が、幻から現実のものへと変わる。

本物だ!

「貴章さん。 貴章さん!」

 思い切り抱きつく。
 貴章も優しく若菜を抱きしめる。

「若菜。 逢いたかった・・・」

 抱きつき、胸に埋めていた顔を上げ貴章を見詰める。

「僕も凄く逢いたかった。 信じられない・・・・。 本当に貴章さん?」

「ああ。 この休みを取る為に逢えなかった。 綾瀬に頼んで旅行に誘
わせた。 それと私の事は話さないようにと言っておいた・・・」

 この旅行は貴章が企画した物。 

 本当ならば毎日5分でもいいが、若菜に逢いたかった。
 しかし逢ってしまったら、5分だけでは無理がある。
 気持ちを押し殺し、携帯でのほんの少しの会話と姿で我慢し、週末の
 休みを取る為精力的に仕事をこなしたのだ。
 自分も若菜に逢えないのは辛かったが、若菜も同じだったのだと痛
 感した。

 携帯での若菜は特に逢いたいと言う事も言わず、仕事だから仕方ない
 、でもこうして携帯で話せて、顔も見る事が出来るだけでも嬉しいと言っ
 ていたから。
 寂しく思った。
 自分にこんな感情が湧くとは思ってもいなかった。
 誰かに凄く逢いたいとか、寂しいとか思う事が来るとは。
 思わず苦笑していた。

 若菜に実際逢ってみて、自分だけが寂しいと思っている訳でない事が
 分かった。
 貴章の姿を見て、貴章に逢いたいという願望が強すぎて幻を見ている
 のではと自分の目を疑い、実物と分かった瞬間抱きつき、身体全体で
 逢いたかったと訴えていた。

すまない事をした
こんなにも寂しい思いをさせていたとは

 例え5分でも逢っていれば、こんな思いをさせなくてもすんだのに。
 自分の不甲斐なさを叱責する。
 これからはほんの少しでも、若菜と会う事にしようと。

 包容でお互いを確認し合う二人に、「ん、んん!」と咳払いが。

 見ると玄関から紗英と佐織が出て来ていた。

「あっ・・・」
 慌てて離れようとするが、貴章の手は腰に回されたままで動けない。
 包容を見られ恥ずかしい反面、慌ててしまう。 
 家族の前という事もあるが、二人は男同士なのだから。

「あ、あの・・・・これは・・・・・・」

 しどろもどろで、一生懸命何か言おうとするが、頭が回らない。
 モタモタしていると、紗英が近寄ってきて、若菜のメガネを外す。

「紗英?」

 不思議に聞く若菜を余所に、メガネを若菜に渡し佐織の所へ。
 貴章も不振に眉を寄せる。
 そんなツーショットを見た、佐織と紗英は、突然手を取り合う。

「お母さん凄いわ!」
 
「本当ね!」

 早朝にも拘わらず黄色い声を上げハシャギ始めた。
 突然の事に呆然。

何、二人共どうしたの・・・・・・・

「若菜ちゃんが選んだ位だから、きっともの凄いんだろうなって思ったけ
どこんなに凄いとは思わなかったわ〜」

「そうね。 パパも青葉もかなり格好良いけど、違ったタイプで凄く素敵
ね」

「「お似合いね」」
 
 若菜は全身白で統一。
 対して貴章は全身黒で統一されていた。
 貴章の美貌をより引き立て、よりシャープな印象を与える。
 初めて見た、カジュアルな服装。
 スーツ姿もとても凛々しく似合っていたが、私服で髪型も少し違う貴章
 に違った男の色気を感じ見惚れる。
 両極端な二人だったが、お互いがさらに引き立て合っていた。

 そんな事よりも、佐織と紗英の言葉が気になる

凄いって、お似合いって???

「あの、二人共?」

「綾瀬さんから聞いてたの。 若菜ちゃんがお兄さんとお付き合いを始
めたって。 安心して、若菜ちゃんが初めて好きになった人なんだもん、
反対なんてしないから。 パパと青葉には内緒にしておくし。 あの二人
が知ったら大変だもん」

「ええ、勿論内緒よ。 もし二人が知ったら大変。 でも若菜ちゃんの彼が
こんなに素敵な人だなんて。 ママもウットリだわ、良かったわね」

彼って・・・・・

 まさか知られているとは・・・・・
 それに男同士なのに祝福されるなんて・・・・





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