暖かな光
(6)

5万をGetされたりんりん様より
「本当の気持ち」貴章の一人称で自分の過去、どうして血も涙も無いよーな
(若菜以外には)性格になってしまったのか。
ベッドで若菜と熱い夜を過ごした後、疲れて眠ってしまった若菜を横に。





「なにを・・・・・」

 頭の中が空白になった。
 神崎氏が何を言っているのか分からない。
 回りを見回すと私だけでなく、父も何を言われたのか理解
 出来なかったようだ。
 叔父に視線を移すと叔父の顔は怒りで真っ赤に。
 当然だろう。
 なぜ叔父がそんな事をする必要があるのだ?

 父もあまりにも突拍子もない言葉に、神崎氏に笑いながら
 「こんな時に、何の冗談を」と。
 しかし、神崎氏は真剣だった。

 いくら彼等がヤクザであるとはいえ、私には紳士な態度で、
 そしていつも真剣だった。
 自分達から暴力も振るわない。
 ましてや、人の人格、人生を狂わせる覚醒剤だの、薬に関
 しては特に厳しく、それらに関係した組員達は厳しい処罰
 を受けると狩野さんから聞かされていた。

まさか・・・・・

 その場にいた全ての目が叔父の事を疑心暗鬼で見ていた。
 一度根付いた思いは消えない。
 信じたい。
 でも・・・・・

「何を言う!」

 神崎氏に向かって怒鳴り始める叔父。
 怒鳴る姿を見るのは始めて。
 温厚な叔父が鬼の形相で怒鳴るなんて・・・・

「ヤクザ風情が何を言う。 だいたいそんな事をして、私に何
の得がある。 それに、私は貴章の事を自分の子供のように
可愛がっているんだ。 それを殺す? 名誉毀損もいいところ
だ! だいたい兄さんも何故貴章をヤクザの息子と仲良くして
いるのを知っていながら黙っていたんだ。 だから貴章がこん
な目に・・・・」

 こんな差別的な言葉を投げつけられているにも、拘わらず
 神崎氏は冷静だった。
 父は叔父の変わりように唖然となっていた。
 私も同様に。

「言いたい事はそれだけか?」

「な、何を!」

 態度同様、口調も落ち着いている。
 それに笑っているのはなぜ・・・・

「おい」

 後ろに控えていた一人の組員が前に出て、神崎氏に封筒
 を手渡した。
 あの中に何が・・・・・
 神崎氏は封筒の中から書類を取りだし叔父に向かって投
 げつけた。

 その書類には写真も貼付されていた。
 一体?
 拾おうとした私より早く叔父が飛びつき、それらをかき集め
 た。

「叔父さん?」

 見ると顔を蒼白にしながら大量の汗を掻いている。
 なぜそんなに慌てているのだろう。
 やましい事がなければそんな紙など用意されても何も問題
 ない筈。
 足下に飛んできた書類を拾おうと・・・・

「触るな!」

 怒号が飛ぶ。
 その焦りようが尋常ではない。

・・・・・まさか

 一度根付いた疑惑は消えず大きくなって行く。
 
「叔父さん・・・」

「信久・・・」

「何でもない・・・、何でもないから気にするな」

 明らかにおかしい。
 父も同じ事を思っているのが分かる。
 疑う私達に叔父は必死に「何でもない」と。

「何でもない事はないだろう。 そこには今までお前のして来た
事の全て書かれている。 カジノに嵌っているようだな。 仁科
の息のかかったカジノで相当負け越しているだろう。 埋める
為に任されていた会社の金を横領している事も分かってい
る。 それだけでは足りないから仁科に言われるがまま、中国
から来る久我山の船の荷物の中に薬を紛れ込ませていた事
も分かっている。 今では自ら別な場所から仕入れて売り捌
き多額の金を手に入れてるそうじゃないか。 そこには事細か
に書かれている。 後仁科組組長と料亭で仲良く食事してい
る写真も添えられている。 そしてお前は久我山氏を、跡継ぎ
である貴章君を憎んでいた。 仁科は私が邪魔で排除しようと
し、まず和磨から始末しようとした。 親友である彼等は常に共
にいて、殺すには好都合。 今回の事を計画した。 調べは着
いている、言い逃れは出来まい」

 神崎氏は一気に言い、また封筒から用紙を取り出しばらま
 いた。
 叔父に拾われる前に、私は震えながらそれらを手に取っ
 た。
 料亭と思われる場所で撮られた写真。 
 そこには確かに信久叔父が写っており、机の上に乗せられ
 たジェラルミンケースの中に金が入っているのが分かる。

 嘘だと言って欲しかった。
 例えそれが事実だとしても、脅されてやってしまったと言って
 欲しかった。

「叔父さん・・・・」

 手に持った書類を握りしめ、叔父の顔を見詰めた。
 始め蒼白だった顔が歪み、「クックック」と今までとは全く違
 うどす黒い笑みに。

「そうか・・・・、そこまで調べられていたのか」

 神崎氏の言葉が事実だったとは。
 信頼していただけにショックが大きい。
 それ以上聞きたくない。

「確かに借金はあったな。 そのせいで横領したのも事実。
仁科組長に脅されて密輸もしたが、あれはいい・・。 今じゃ
かなり儲けさせてもらっているよ。 それがなんだ?」

「信久、お前・・・・」

 父が唸り今にも殴る掛かろうとしたが、その前に叔父が懐
 から鈍く光る拳銃を取り出した。
 まさかそんな物まで持っているとは思ってもいなかった。
 神崎氏に付き添って来た組員達が俄に殺気立つ。

「止めろ」

 神崎氏に制止される。
 今このドアの向こうでは狩野さんの生死がかかったオペが
 行われている。
 こんな所で発砲され、騒ぎになって万が一の事があっては・
 ・・・

 騙されていた事が漸く頭の中で整理される。
 見かけだけの優しさを見抜けなかった愚かさ。
 思わず笑いが込み上げる。

「何が可笑しい!」

 叔父に怒鳴られる分だけ心が冷めていく。
 
「貴章、私は昔からお前のその澄ました顔が嫌いだった。 子
供の癖に馬鹿にした目で私を見て! 大きくなったらなったで
、私の仕事の邪魔をする!」

「何を言う!貴章が助言したお陰でホテル部門の利益が上が
って来たんだろう」

 父が怒鳴るがそれが気にくわなかったようだ。

「確かに上がったさ。 これからはアジアリゾートが受ける。 
貴章の言った通り不調だったホテルをその通りに改装したお
陰で利用客も増えた。 同じようにイタリアンが流行るからレ
ストランも増やした。 ワインブームになるからワイナリーも買
い、ワイン講座も開いた。 全部貴章の言った通り! 俺がど
んなに頑張っても経営は悪くなるばかり。 俺だって貴章と同
じ事をしたんだ。 俺の時はダメで何故貴章の時にだけ!」

 それは時期が悪かったのだと思う。
 確かに叔父も私と同じような事を計画し、行った。
 しかしそれはどれも当たらなかった。
 理由は分かっている。
 時期が早いのだ。

 叔父はいつも先へ先へと進んでいて、その後からブームが
 来る。
 見極めが出来なかったのだ。
 私はただタイミングが良かっただけ。

 それが叔父をこんなにまで苦しめていたとは・・・・
 
 だがそれならどうして、和磨を狩野さんを、健二さんを巻き込
 んだ!
 神崎氏は「私達の事で巻き込んだ」と言う。
 確かに清風会の下にいる仁科組が拘わっていた。
 しかしそこには叔父もいた。
 二人は私達を消し去るだけの為に、仲のいい健二さんを利
 用した。
 人の人生を何だと思っている!
 そして、その人生を狂わせてしまった私にも責任がある。
 この手で決着をつけよう。

 健二さん、狩野さん、和磨・・・・

 卑劣な彼等を私は許さない。
 自分の無能さを棚に上げ、他人を貶めるこの叔父を。
 私から信頼という言葉を奪い、親友を、そして親友が最も慕
 う大切な人たちを奪おうとしたこの叔父に、私は制裁を下そ
 う。





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