暖かな光
(5)

5万をGetされたりんりん様より
「本当の気持ち」貴章の一人称で自分の過去、どうして血も涙も無いよーな
(若菜以外には)性格になってしまったのか。
ベッドで若菜と熱い夜を過ごした後、疲れて眠ってしまった若菜を横に。





 ここで言う『クスリ』が普通の薬でない事は私にも分かった。
 でも健二さんが『クスリ』を・・・・?

「あれの腕に針の跡があった。 一度や二度ではない・・・・」

「・・・・・そんな」

 それ程まで、クスリに頼らなくてはならない程、彼の心は弱か
 ったという事か。
 彼の事を尊敬していただけに、自分が愚かに思えた。
 しかし、次の事ばを聞き愕然となった。

「見えない場所に無数の針の跡があった。 あれは心は優し
いが弱くはなかった。 自分から薬を打つ事はまずない。 今
回この件に拘わった者を捉え、口を割らせ、健二が無理矢理
打たれていた事が分かった・・・・」

 なんて事だ・・・・
 健二さんは薬で自我を保てなくなっていたと?
 どうして気付かなかった!
 それよりも、私はそんな相手に何をした?
 全身から力が抜けていく。
 体が震える。

「健二、さんは・・・・、健二さんは!?」

 胸ぐらを掴んでいた手が、縋り付く形になる。
 知らなかったとはいえ私は健二さんを撃ってしまった。
 一度ではなく何発も。
 傷口を踏みつけ、流れる血をそのままにし、あまつさえ死ん
 でしまえばと願った。
 私は・・・・、私はなんという事をしてしまったんだ!
 
「今、手術の最中だ・・・・・」

「・・・・何処に。 健二さんは何処で手術を!」

「こことは違う病院で手術をしている」

 行かなくては。
 行ってその目で無事な確かめたい。

「どこの病院か教えてください!」

「それは出来ない」

「何故!?}

 『クスリ』を打たれていたとはいえ、次期清風会総帥和磨を
 撃ったという事実。
 そして、久我山グループの後継者であり、和磨の友人である
 貴章に拳銃を突きつけた事も許せる事ではないと。
 和磨に銃を向けた事は、清風会に刃を向けたと同じ事。
 裏切り者に会わせる訳にはいかないと言われてしまった。

「手術が終われば連絡が来る。 だから今はから大人しく待っ
ている事だ」

 そう言われてしまえば待つしかない。
 行きたくても場所を知らないのだから。
 私は祈るしかなかった。
 人が聞けば何を勝手な事をというだろう。
 私の手で、健二さんを傷つけたのだから。
 しかし私は本気で祈った。
 死なないで欲しいと・・・・

 二つ並んだ手術室の片方のランプが消える。
 中から和磨が出てきた。
 麻酔が効いているせいか、瞳は閉じられていた。
 顔色は悪いが和磨は生きている。

「和磨・・・」

 中から出てきた医師が手短に経過を報告してきた。
 命に別状はないし、怪我はしているが問題はないし今後
 リハビリをすれば元に戻ると。
 その場が安堵感に包まれた。

 良かった・・・・・

 神崎夫人と駆けつけた兄弟が付き添い、和磨はそのままIC
 Uへと運ばれて行った。

 狩野さん・・・・
 手術中の扉を見つめる。
 あなたの無事を祈る事しか出来ないこの状況がもどかしい。
 私は、あなたに生きていて欲しい。
 
「貴章!」

 バタバタ走る音と、「走らないで下さい!」という怒鳴り声。
 見ると父だった。
 そしてその後ろに弟浩人の姿も。
 二人共蒼白な顔をしていた。

 なぜここに?

 仕事が忙しい父とは暫く顔を合わせていない。
 浩人もこの時間はまだ学校なはず。
 二人に抱きつかれ、私は驚いてしまった。

 父には普段から久我山の後継者だと厳しくされてきた。
 愛情を感じない訳ではないが、こんな風に抱きしめられたの
 は初めてかもしれない。
 それに浩人も、普段は私に近づこうともしないのに。

「神崎さんからお前が撃たれたと聞いて飛び出して来た」

「俺は親父の秘書が学校に迎えに来て。 良かった・・・・」

 無事でよかったと言う二人の姿を信じられない思いで見た。
 彼等がこんなに私の事を思っていたとは知らなかった。
 好意は向けられていたのかも知れないが、私は彼等を無視
 していたのかも知れない。
 抱きつかれたまま、彼等を呆然と見ていた。
 
「久我山さん、この度は大変申し訳ありません」

 その声に振り返ると神崎氏が私達に向かって頭を下げて
 いた。

「頭を上げて下さい・・・。 今回の事ですが・・・、和磨君と付き
合いがあればいつかは起きるだろうと思っていました」

 えっ?
 私は父の顔を凝視した。
 分かっていたのに付き合いを認めていたのか?

「あなた方神崎の方達と出会い貴章に変化がありました。
確かにあなた方と付き合えば色々な憶測が飛びます。 しか
しそれでも構わなかった。 貴章は声を出して笑ったりはしま
せんが、笑う事が多くなりました。 それに綾瀬、一番下の弟
なんですが、綾瀬の面倒もよく見てくれ、綾瀬も貴章に一番
懐いてます。 これも神崎さん、あなた方のお陰です」

 ・・・・・お父さん
 あなたはちゃんと私を見ていてくれたんですね。
 ドンと足下に衝撃が。
 見ると幼い綾瀬が足にしがみついていた。

「おにいちゃ」

「綾瀬・・・」

 舌っ足らずで私を呼ぶ。
 大きな瞳で不安げに見詰めてくる綾瀬の頭を撫でると、安心
 したのか笑みを浮かべた。
 可愛いと思った。

「貴章・・・、無事で・・・・」

 私の姿を見て、涙を流す母。

「お母さん・・・・」

 あなたも来てくれたんですか・・・・・
 私はこんなにも家族に愛されていたのか

「貴章君、無事だったか」

 その後ろには叔父の姿も。
 母達をここまで連れて来てくれたようだ。
 今も昔も変わらず私を可愛がり、気に掛けてくれている。
 素晴らしい叔父だ。

「叔父さんまで・・・。 ご心配かけました。 わざわざありがと
うございます」

 お辞儀しようとした所を神崎氏に止められた。

「え?」

「夫人と綾瀬君達には少し席を外して貰っていいですか」

 口調は柔らかいはその響きは強く従わずにはいられない。
 神崎氏の側近の一人に促され、母と綾瀬、そして浩人はこ
 ちらを気にしながらも席を外す。

 三人の姿が見えなくなった所で、神崎氏が信久叔父に鋭
 い視線を向け、私達に告げた。

「この男も今回の件の首謀者の一人だ」と。





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