暖かな光
(4)

5万をGetされたりんりん様より
「本当の気持ち」貴章の一人称で自分の過去、どうして血も涙も無いよーな
(若菜以外には)性格になってしまったのか。
ベッドで若菜と熱い夜を過ごした後、疲れて眠ってしまった若菜を横に。





 この人は何を叫んでいるのだろう。
 
「なぜ? あなたと同じ事をしているだけなのに」

 抑揚のない声に、一瞬他人喋っているように聞こえた。
 でもこれは確かに私の声で、私が喋っている。
 
「私達を騙していただけでなく、あなたは殺そうとした。 そんな
くだらない理由で。 好きでこの顔に生まれた訳じゃない。 好き
で長男に生まれた訳でもない。 なのにあなたはそれが許せな
いと言う。 私達はどうしたらいいんでしょうね・・・」

 言って撃ち抜いた肩を足で踏んだ。
 余りの大きな健二の叫び声に、意識を失っていた和磨が目を
 覚ます。

「健二、さん・・・・・?」

 倒れ両手両足から血を流す健二さんの姿と、その健二さん
 に拳銃を突きつけ踏みつける私の姿を目にし和磨は目を見
 開いた。

「気付いたか和磨。 よかった・・・、動けるか?」

「・・・・ああ」

 状況が把握出来ていないようだ。
 無理もない。
 しかし和磨には動いて貰わなくてはならない。

「和磨、外に須藤さんがいる筈だ。 連絡して直ぐに来て貰って
くれ」

「しかし・・・・・」

「早く! 狩野さんが危ないんだ!」

 叫んだ事で他人であった私の感情が元へと戻った。
 和磨も足下に倒れている狩野さんにに気付いたようだ。
 
「狩野!?」

「早くしろ!」

 負傷した肩を押さえ狩野の上着から携帯電話を取り出す。
 
「和磨だ。 直ぐに車を、医者を呼べ!」

『何があったんですか!?』

 須藤の焦った声が聞こえてく。
 一刻を争うのに何をしている!
 和磨の手から奪い始めて人を怒鳴りつけた。

「和磨と狩野さんが撃たれました。 かなり危険な状態なので
至急医者を!」

『!!  分かった』

 自分の言葉に少しだけ冷静になった。
 健二さんは動ける筈もないからこのまま放っておいて構わな
 いだろう。
 今は狩野さんだ!

 床に広がる血の量が尋常ではない。。
 このままでいけば出血死してしまう。
 一発は左上腕。
 私は着ていたシャツを脱ぎ、切り裂いて肩の近くできつく縛
 り付けた。

 しかし、問題は他の二発。
 一発は腰に、もう一発は背中に撃ち込まれていた。
 縛る事が出来ないこの場所にシャツを強く押しつけた。
 真っ白であったシャツがあっという間に真っ赤に染まり、そし
 て流れ落ちる。

「止まれ・・・・、止まれ!」

 恐怖が私を襲う。
 抑えた手が震える。
 
「嫌だ・・・・・、嫌だ、嫌だ! 死なないで下さい!」

 目を開けて!
 涙など今まで一度も流した事などなかった。
 それが今、私の目から涙が零れ落ち、狩野さんのシャツを濡
 らして行く。

「和磨さん、兄貴!」

 飛び込んで来た須藤氏とその舎弟達が現状を見て呆然
 となっていた。
 
「健二さん・・・? しっかりして下さい!」

 須藤氏は健二さんも襲われたのだと思ったらしい。
 かけ寄り手当しようとしたのを私は止めた。
 
「貴章さん?」

「和磨達を撃ったのは健二さんです」

「何だって!?」

 驚くだろう。
 誰が見ても仲の良い叔父と甥の姿だったのだから。

「でも、誰が健二さんを・・・・」

「撃ったのは私です。 彼は、和磨に、この私の銃を向けた・・」

 淡々と語り、冷たい眼差しで血塗れになっている健二さんを見
 下ろした。 
 銃をは無縁の世界にいた私が、撃ったのだ。
 しかも平然としているのだから。
 そんな私を見て、彼等は目を瞠り蒼白な顔になっていた。
 ここにいる誰よりも冷酷なこの私に。

「それよりも狩野さんです。 このままでは・・・・」

 彼等は私の声に我に返った。

「兎に角、ここに居てもまともな処置は出来ません。 病院に移
動しながら、途中でこちらに向かっている医師と合流します。
おい!」

 玄関に置かれていた二つのコート掛けとシーツを使い、手際よ
 く即席の担架を作る。 
 体格のいい狩野さんには小さく華奢だが、ないよりはマシだと、
 そこに狩野さんが乗せられ、私は和磨に肩を貸し移動した。

 須藤氏が健二さんの手足を縛り、止血する姿を見て、そのまま
 置いておけばいいと言ったのだが、神崎の家の者だから勝手
 に処分出来ないと。
 忌々しいと睨み付けた。

 こんな事ならいっそのこと殺してしまえばよかったと本気で
 思った程に。
 簡単にそう思える私の心は壊れていたのかも知れない。
 あれだけ信頼していた健二さんに裏切られ、銃口を向けられ
 たのだから。
 撃たれなかった私がそう思うのだ。
 それなら、撃たれた和磨の心は?

 痛みに耐え、無言で歩く姿からその心は分からない。
 ただ、ショックを受けている事だけは事実だ。

 車に乗り5分程移動した所で、医師を乗せた車と合流した。
 一安心したがその医師は余りの傷にこの場の治療は無理と
 判断したのだ。

「そんな・・・・・」

「今出来るのはこれくらいだ」

 流れ出る血液に、輸血だけが施された。
 早く、早く着いてくれ!

 僅かな時間が永遠に思えた。
 病院裏に止められた車、降りるとストレッチャーが用意されて
 おり、そこに三人が乗せられ運ばれて行った。
 私はただ見送る事しか出来ない。
 血塗れの姿で私達はオペ室へ向かう。
 異様な光景に、すれ違う職員が足を止め目を剥いていた。
 だが私の目には入ってこない。

 和磨は肩に一発受けただけで命に別状はないだろう。
 健二さんの事はどうでも良かった。
 いっそ死んでくれた方がいいと本気で思った位。

「狩野さん・・・・・」

 死なないで欲しい。
 あなたのお陰で、私の人生に変化が起こった。
 和磨という友人を与えてくれた。
 あなただけが私を子供として扱い、人生の楽しさを教えてく
 れた。
 教えて貰いたい事はまだまだあるのに。

「くそっ!」

 オペ室の前に座り込み床を殴る。
 神経が麻痺しているのか痛みを感じない。
 もう一度床に叩き付けようとした所を止められた。

「誰だっ!」

 掴んだ腕の先を見ると、神崎さんだった。
 その隣には磨梨子夫人も。
 
「巻き込んですまない」

「神崎さん・・・・・」

 和磨や部下で瀕死の状態にいる彼らを気遣う前に、私の謝罪
 した来た事に驚いた。
 
「健二の事は薄々気付いていた。 あれが私を憎んでいる事、
そして磨梨子に思いを寄せていた事も」

「分かっていながらなぜ!」

 神崎さんの胸ぐらを掴み上げた。
 その場にいた組員が私を取り押さえようとしたが神崎氏に
 よって止められた。
 私の手を解こうとはせずされるがまま。
 彼の瞳に後悔と苦悩が見て取れた。
 その気持ちは分からなくもない。
 しかし神崎さんが健二さんに対して何か言葉でも、行動でも
 表していたのならこんな事にはならなかった筈。
 言葉には出さなかったが、神崎氏は私の思いに気付いたよ
 うだった。

「あれが悪いのではない。 あれは踊らされていたのだ。 私を
清風会のトップから引きずり落とそうとした者達に。 気付いた
のはごく最近だ。 計画その物は以前から立てられていたらし
い。 健二はその計画の実行直前に加えられたようだ。 行動
を起こそうと思えばいつでも出来た。 しかし、あれは思うだけ
でそれをしなかった。 和磨の事も可愛いと思っていたのは間
違いない」

「それならどうして!」

 どうして健二さんは彼らに手を貸してしまったんだ。
 どうして私達に銃を向けた。
 知らぬ間に私の目から涙が零れていた。
 
「・・・・・クスリを打たれていたからだろう」

「!?」





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