暖かな光
(3)

5万をGetされたりんりん様より
「本当の気持ち」貴章の一人称で自分の過去、どうして血も涙も無いよーな
(若菜以外には)性格になってしまったのか。
ベッドで若菜と熱い夜を過ごした後、疲れて眠ってしまった若菜を横に。





 高等部に入り、突然和磨の回りが騒がしくなった。
 それは和磨の父であり、清風会会長である征爾氏が狙撃さ
 れたから。
 怪我はしなかったようだが物騒な事だ。
 詳しくは聞いていないが九州に拠点を構えている組が関東に
 出てきたせいだと和磨が教えてくれた。
 
 和磨の両親には何度か会ったが、常にボディーガードは付い
 ていた。
 スケジュール等は側近しか知らされていないと言っていたの
 に襲撃されたという事は、中に裏切り者がいるのだと私達は
 確信した。
 しかし、それが誰なのかが全く分からないと悩んでいた。
 かなり用心深いその人物。
 和磨の友人である私にも用心しろと狩野さんは忠告してくれ
 た。

 組の中で良くしてくれたのは狩野さんの他に、和磨の父の腹
 違いの弟で叔父である健二さんと、若頭補佐須藤氏。
 健二さんは会長とは全く体格も容姿も異なっていた。
 彼はヤクザにしては穏やかな人物で、常に私達を気遣ってく
 れた。
 そして彼自身、組を一つ任されていた。

 健二さんと和磨の関係は、私と信久叔父と同じような関係。
 年の離れた信頼できる兄弟のようなもの。

 叔父達は、美味しい物が手に入ったとお土産をくれ、そして旅
 行にも連れて行ってくれた。
 顔を合わせた事はないだろうが、二人の叔父達はとても似て
 いた。

 健二さんは暴力を嫌い、「何でヤクザの家になんか生まれた
 んだろうね」と、悲しげに言っていたのを今でも覚えている。
 表情のあまり変わらない私気持ちを理解し、そして話し相手
 になってくれた。
 
 補佐の須藤氏は若頭である狩野さんにいつも振り回されて
 いた。
 会う度に真面目な顔で、私の顔を見て「今日も美人ですね」と
 顔を赤らめていたのを今でも覚えている。
 
「俺のだから惚れるなよ」

 和磨の冗談に顔を真っ青にしながら「坊ちゃんのいい人に手
 を出すなんて滅相もない」と慌てていた。
 その姿を見て皆が笑って・・・・・



 何故あの時の事を今頃思い出してしまったのだろう。
 私の心に闇が入り込んで行く。
 そして虚無に支配されそうになる。
 いけない・・・・

「うぅ・・・・ん・・・・」

 若菜。
 腕の中の温もりと、その声に我に返る。
 そして同時に、今まで心の中に巣くっていた闇が消えていく。
 胸元にすり寄る姿はとても愛らしい。

 そっと寝顔を覗き込むと、その優しい寝顔に心が穏やかに
 なって行くのが分かる。
 若菜が側にいるからだ。

 若菜・・・・・
 お前だけが私の心を救ってくれる。
 意図的に忘れた、あの時の事を何かの拍子で思い出しても
 今なら心が耐えられる。
 あんな事がなければ、まだ感情が豊かだっただろう・・・・
 


パンパン!

 乾いた音が室内に響く

「どうして・・・・・・」

 向けられた拳銃。
 足下には和磨が、狩野が倒れている。
 地面にはどす黒い色が広がって行く。
 目の前の出来事が信じられなかった。

 いつもと変わりなく家に遊びにおいでと、健二さんが私達を放
 課後迎えに来てくれた。
 狩野さんはまだ迎えに来ていなかったが直ぐ来るだろうと思
 い、全くいつもと変わらない様子だったから何も疑わず、私達
 は健二さんの車に乗りついて行った。
 しかしマンションに着いて気配が変わった。

 何処かおかしい。
 そう頭の中で警告音が鳴っていたのに・・・・
 案の定。
 部屋に入った途端銃を突きつけられた。
 そして和磨に向け撃った。
 咄嗟に私は和磨を突き飛ばしたが、庇いきれず玉が和磨の
 肩を撃ち抜いた。

「和磨!」

 血を止めようと傷口を手で押さえた。
 「何故だ!」と叫び振り返ると、今度は私に銃口が向けられて
 いた。
 
 あれ程暴力を嫌っていたのに。
 それがどうして、実の甥である和磨に向けたのか。
 あれ程仲の良い二人だったのに、何故和磨に向かって発砲し
 た!
 私は怒りに震えた。

「僕はね、兄さんが嫌いだったんだ。 長男ていうだけで清風会
を継いで、僕の憧れていた義姉と結婚して和磨を授かった。
そして兄さんの息子というだけで今度は和磨が清風会を継ぐ。
不公平じゃないか」

 暴力が嫌いだと言った言葉は嘘だったのか?
 たったれだけの事で和磨を殺そうと。
 あれ程和磨を可愛がっていたのに。
 
『僕は結婚していないから子供がいないけど、和磨が僕の子供
だよ』

 旅行に行き酒を飲んだ時、酔っぱらいながら和磨を抱きしめ言
 った言葉。
 あれは嘘だったのか?
 
『和磨を守ってやってね』

 真剣な顔で、狩野さんに言った言葉も嘘だったのか!
 私目の前が真っ赤に染まった。
 
「・・・・和磨は、あなたの事を本当に大切に思っていたのに!」

「・・・・だから? だからなに?」

 なぜあなたは笑っている。
 
「僕はね、君も嫌いだったんだ。 その綺麗な顔でみんなを誘惑
する。 和磨も狩野も、義姉さんでさえ君の事がお気に入りだ。
君も長男てだけで久我山の跡継ぎ。 僕には許せない!」

 だから和磨を撃ったと?
 そして今、私に銃を向けたと?

 ふざけるな!
 いい大人がまるで子供のように、自分の思い通りにならない
 からと。
 今まであなたを慕っていた、私達のこの気持ちを無視し、そん
 な事で私達を殺そうとするのか!
 
 信じていただけにその裏切りが許せなかった。
 私の中を負の感情が支配する。。
 怒りが、殺意が全身を包んで行く。

 私の雰囲気が変わった事に気付いた彼が引き金を引く。
 撃たれたとしても私はあなただけは道連れにしてみせる。
 あれ程信頼し、心を許していた和磨を裏切ったのだ。
 
 決して許さない!

「ユキ!」

パン

 狩野の声と同時に乾いた音が。 
 突然私の体に覆い被さる温かい体温。
 痛みは襲ってこなかった。
 目を開けると狩野に抱きしめられていた。

「狩野さん!?」

「・・・・間に、合ったか・・・・、うっ!」

「狩野さん・・・・?」

 苦しげな声に背中に手を回すと温かくヌルッとした感覚。
 そして錆びた鉄の匂いが濃くなった。
 手を引くと血に染まっていた。
 私を庇い撃たれたのだと直ぐに分かった。

「狩野、よくも・・・・」

 健二さんの顔が憎しみに歪む。
 瞳の中には狂気が。

「やめろ!」

 次の行動が分かるだけに、私は叫んだ。
 しかし・・・・

ハンパン

 更に銃声が二発。
 狩野の背中に向け放たれた。
 私を抱きしめていた手が弱まり、体が崩れ落ちた。

!!

「一人片づいた」

 何の感情もなく言い放つ彼に、私の中の怒りが爆発した。

「どうして・・・・・・」

 ゆっくりと狩野の体を床に横たえ、立ち上がる。
 私の中から感情が消えていく。
 神経が研ぎ澄まされ、彼の動きがスローモーションで見える。
 体を伏せ足を払う。
 バランスを崩し倒れた所を銃を持っている手を踏みつけ折る。
 バキッという鈍い音。
 拳銃を奪い取る。
 ほんの一瞬の出来事。
 
 痛みに喘いでいる健二に向かって、私は引き金を引いた。
 拳銃など生まれてこのかた触れた事などはなかったが、躊躇
 いはなかった。
 和磨と同じよう左肩を撃ち抜く。
 そして両足を。

「やめてくれー!」





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