暖かな光
(2)

5万をGetされたりんりん様より
「本当の気持ち」貴章の一人称で自分の過去、どうして血も涙も無いよーな
(若菜以外には)性格になってしまったのか。
ベッドで若菜と熱い夜を過ごした後、疲れて眠ってしまった若菜を横に。





 私は両親から愛情を受けていたにも拘わらず、幼い頃から表情が
 乏しかった。
 そんな私に両親は一時戸惑っていた事もあったが、それでも疎
 う事なく愛情を注いで大切に育ててくれた。

 しかし直ぐ弟が出来た事と、その弟が子供らしく表情豊かであっ
 た事、私が手の掛からなかった事で両親の目は弟に向けられて
 行った。
 寂しいを感じた事はなかったが、父の弟である叔父が弟と私を差
 別していると両親に憤慨し、何かと構ってくれた。
 旅行にも連れて行って貰った、誕生日の時には誰よりも喜び祝
 って沢山のプレゼントを贈ってくれた。
 何度も叔父の家に泊まりに行き、同じ部屋で眠った。
 両親以上に愛情を注いでくれた、優しい叔父だった。

 両親に、同じ年代の子供達とふれ合えば感情も豊かになるだろう
 と、私は私立の保育園に入れられた。
 美しい容姿の両親から生まれた私は、周りからは天使のようだと
 言われた。
 子供の目から見ても私の容姿は人目を惹いていたようで、その保
 育園で他の子供達から多種多様な扱いを受けた。

 女子からはまるでアイドル、もしくは王子様の扱い。
 中には男女だの嫌がらせをしてくる子供もいた。
 直接手を出される事もあったが、物心ついた頃から習っている武
 道と、大抵は私が見詰めるだけで泣き出していた。

 直ぐに保育士達がやって来て、何があったのか聞いて来たが、
 周りにいた子供達が私に代わりその状況を正直に話した。
 私が悪くないのはわかり、なぜ嫌がらせをしたのに泣いている
 のかと相手に聞くと、その子供は私に構って貰いたかったのだ
 と話した。
 周りの子供に嫉妬してだとの事だった。

 その子供は散々保育士に注意された。
 私が立っていただけなのに、何故ないたのかと聞かれると、そ
 の子供は私の目が怖かったと。
 ただ普通に見られただけだが、その目が怖かったと保育士に
 伝えた。
 彼等の横で私はその言葉を聞いていた。

 自分でさえも異質だと思っていた。
 子供らしくないという事も。
 周りがお絵かきだの、ままごとだの子供らしい遊びをしていた中
 で本を読んでいた。
 その頃は簡単な漢字も読めるようになっていたから低学年用
 の本、偉人伝や歴史の本など。
 後は辞書を読んでいた。

 周りにいた大人達も初めは可愛いだの賢いだの言っていたが
 政治や世界情勢、株の話しをしたり、理路整然と話し出すのだか
 ら次第に距離をおき離れて行った。
 
 下に生まれた弟浩人が子供らしかった事で、その事が余計目立
 ったようだ。

 久我山の息子という事と、その容姿のお陰で私は何度も誘拐され
 かけた。
 物で釣ろうとしたり、道を尋ねるふりをして。
 子供だと思い、私の事を侮る愚かな大人達。
 だが物心ついた時から護身術を習っていた事と、子供と侮って
 いた為に難なく回避する事が出来た。
 
 しかし、それが余りにも頻発だったため、両親は私をセキュリティ
 ーの整った保育園に移した。
 政財界の子息達が大勢通い、幼稚園から大学まで一環している
 鳳学園に。
 そして行き帰りは送迎となりボディーガードも付けられた。

 突然編入して来た私の事を歓迎し、私の容姿を見て彼等はこぞっ
 てナイトを申し出てきた。
 自分の身は自分で守る事が出来るだけに、その申し出は鬱陶し
 いものでしかなかったが、彼らには分からなかったようだ。
 何とかして取り入りたい。
 それだけが見てとれた。

 急に周りが煩くなったが、私は変わる事はなかった。
 そして両親の願いもむなしく、特に仲の良い友人も出来る事なく小
 学校へと上がった。
 そこでこの先唯一の友人とも呼べる人物に出会った。
 それが神崎和磨。

 和磨が鳳に入学して来た時、学園内は騒然となった。
 というのも和磨が全国に名を馳せる清風会の、ヤクザの息子だっ
 たためだ。

「お父さんが言ってたんだけど、神崎君の家ヤクザなんだって」
「近づいたら殴られるよ」

 大人の偏見が子供の真っ白な心を灰色にし、そして黒く染めてい
 く。
 和磨が誰かを殴った所など見ていないのに、ヤクザ、イコール
 暴力的な子供だと決めていく。
 愚かな事だと、子供ながらに思った。
 そして和磨には誰もが近づく事なく、遠巻きに見ているだけ。

 確かに和磨も私と同じ他の子供達とは違っていた。
 小学一年生なら子供らしくあどけない筈なのに、和磨の目は大
 人びており、冷めた目をしていた。
 自分が周りからどう思われているのか理解しているようだった。
 かたや取り巻きに囲まれ、かたや孤独な存在。
 だが私達は今、繋がっている。

 和磨との切っ掛けは喧嘩。
 ヤクザの息子というだけで、和磨は上級生から嫌がらせを受け
 ていた。
 だが和磨は決して手を出すことはなかった。
 自分の立場が分かっているからだろう。
 手を出せば、例え正当防衛だとはいえ誰もそれが正しい事だと
 認めない事が分かっていたからだ。

 それに万が一何かがあっても、和磨なら上手く切り抜けるだろう
 と思っていた。
 だから私は見ていただけ。

 だが上級生が獲物を持ち、無抵抗な和磨に襲いかかってった事
 で変わった。
 押さえつけられていた和磨。
 その目先にはライターが。
 髪の毛の焦げる匂いにその卑劣さに我慢ならず、その場へ飛び
 出して行った。

「神崎君の家がヤクザだからといって、それはやりすぎだと思うけ
ど」

 当時は体も小さく、まるで少女のような容姿の私が現れた事
 に彼らは驚いていた。
 そしてその一瞬が勝敗を決めた。
 体格の差は大きく、相手は5人。
 いくら私が護身術や武芸を嗜んでいても勝つのは容易ではない。
 一瞬の隙を突いて彼らを排除した。

 しかし卑劣な子供は何処までも卑劣で、翌日その子供達の親
 が怒鳴り込んで来た。
 こんな親に育てられたから、愚かな子供が育つのだろうとその時
 ハッキリ思った。
 和磨の保護者は忙しく、代理として来たのは狩野という男だっ
 た。
 きっちり着込んだスーツ姿。
 エリートサラリーマンにしか見えない美丈夫。
 彼がヤクザとは思えない

 丁寧な物腰に、怒鳴り込んで来た親達も戸惑っていた事を今でも
 覚えている。
 あの場には私もいて彼等に手を出したのも私なのに、呼び出さ
 れたのは和磨だけだった。
 和磨とは同じクラスであったため、その呼び出しに私は気付いた。
 あくまでも和磨をこの学園から追い出したいのが見ていて分か
 る。
 狩野は怒鳴る彼らの話を聞き、ただ謝るだけ。
 和磨も何も言わない。
 ドア越しで私は聞いていた。

 何故。
 何故、ただ黙って聞いているんだろう。
 親がヤクザであっても、その子供がヤクザな訳ではない。
 小学一年生がヤクザになれる訳ないのに。
 子供にその親、家を選べる筈もない。
 それを寄って集って恥ずかしいと思わないのか。
 恥ずかしくないから幼い子供を怒鳴りつけられるのだろう。
 庇う訳ではないが、その場にいる大人達は真実を知るべきだ。
 如何に自分達が愚かであるかを。

 そしてそれを見て、まだ子供を庇うのであればそれなりの手段を
 使い、罰を受けさせてやるべきだと本気で思った。

「自分の子供が可愛いからといって、正しい事をしているとは限りま
せん。 本当に可愛いと思うなら彼らの行いを知り、認め叱るべきだ
と僕は思いますが」
 
 突然現れた私に視線が集まる。
 小学一年生で、可憐な容姿の私が大人びた口調で意見する姿
 に驚愕していた。
 よく大人達が言っている言葉「子供が余計な事をするな」という
 言葉が出る前に、私は卑劣な行為を写した証拠を目の前に突き
 つけた。

 特に意味はなく持っていた使い捨てカメラ。
 それが役に立った。
 子供の嘘、卑怯な手。
 彼らの痣がこの私の手によってという事も話した。
 そして私の名、久我山の名を出した。
 案の定、親達はその名に反応した。
 それはそうだろう、久我山の名は大きい。
 彼らの大半が久我山と関わりがあるのだ。
 それを見越してその名を出したのだから。

 彼等の態度があからさまに変わる。
 己の子供を怒鳴り責め、私に向かい謝罪の言葉を述べて来た。
 和磨ではなくこの私に。
 吐きそうなくらい醜悪な態度。
 私達は無言でその言葉を聞いていた。

 彼らが帰った後残ったのは私達3人だけ。
 用は済んだと部屋を出ようとした所で、狩野に呼び止められた。

「何か?」

 エリートサラリーマンの姿はなく砕けた姿。
 だがその瞳は鋭かった。
 ゾッとするような瞳に彼が極道である事を知らしめている。
 初めて怖いと思った。
 しかしその目は面白がっていた。

「なぜ和磨を庇った?」

「庇った訳ではありません。 ただ真実を伝えただけ。 あの醜さ
に耐えられなかっただけです。 あの狡賢さ、あなた方より極道に
向いてますよね」

 怯む事なく正面から挑む私に、彼は一瞬唖然とした後、大きな声
 で笑い始めた。
 何が可笑しかったのか私には分からない。

「変わってるな、久我山の坊ちゃんは・・・・」

「その呼び方はどうかと思いますが」

 面と向かって言われ、そんな呼び方をされたのは初めてだが不快
 ではなかった。
 何故か彼には好感を持てた。

「じゃあ、貴章、堅いな・・・・。 ユキでいいな。 俺は狩野だ」

 貴章なら分かるが何故ユキなのか。
 しかしそれを言っても、この人は呼び方を変えなかった。
 そして彼だけが私の事を「ユキ」と呼び続けた。

「狩野さん、ですか・・・」

「おう。 呼び捨てでも構わないぞ」

 初対面にも拘わらず呼び捨て。
 しかも年上なのに呼び捨てなど出来る筈がない。

「それは無理です」

「堅いな」

「あなたが軽すぎるのでは」

 真面目に返すと豪快に笑う。
 その場限りの縁なのになぜ構って来るのだろう。

「和磨、いい友達持ったな」

「友達じゃない・・・・」

 和磨は狩野さんに髪の毛をガシガシとかき回され、抵抗しながら
 訂正してきた。
 和磨の言う通り。
 なのに彼は諦めなかった。
 
「なら、これから友達になればいいだろ」

 どうしてそこまで、私に拘わるんだろう。
 まあ、構わないけれど。

 その言葉通り、和磨を迎えに来る狩野が何かと構って来たので
 いつの間にか和磨と過ごす時間が増えて行った。
 無口で大人しいと思っていた和磨だったが、狩野といる時は表
 情も豊かで子供らしい所があった。

 お互い武道を習っていた事と、彼がどうせなら一緒に教われと言
 って放課後、私の予定がない時には必ず和磨の自宅に連れて行
 かれた。
 そこであらゆる格闘技を狩野さんや、清風会の組員にたたき込
 まれた。
 子供だからといって手加減のない所が私には喜ばしかった。
 私の自宅も都内にしては大きいが、和磨の自宅は更に大きか
 った。
 自宅に馬を飼っているのも、和磨の家くらいだろう。
 私はこの家で乗馬まで習った。
 
「和磨もユキも子供らしくないぞ。 子供はもっと笑え。 感情を出
せ。 無愛想な奴はな、男にも女にもてねえぞ」

 端正な顔は役者に負けていない。
 そんな容姿とは裏腹に彼は豪快に笑い、よく髪の毛をグシャグ
 シャにかき回しした。
 そんな彼のお陰で私の表情、感情に変化も起こった。

 学園内でも次第と和磨と過ごす事が多くなった。
 そのせいか、周りにいた者達は和磨がいる事で離れて行った。
 私にとっては好都合、お陰で静かになった。
 初等部での生活が穏やかに過ぎて行った。
 
 中等部になると別な意味で周りが騒がしくなった。
 それは互いの容姿の事で。
 和磨は身長も伸び男らしい体格に。
 私も身長は伸びたが、和磨には及ばない。
 そして容姿は中性的なものに。
 全く気にしていなかったが、回りからは私達が恋人として付き
 合っていると思われていたらしい。
 付き合いはあったが、それは友人としてのもの。
 聞いた時にはあまりの馬鹿らしさに二人で笑っていた。
 狩野さんもお腹を抱えて笑っていた。

「確かにユキは美人になったが、こんな恐ろしい奴を恋人にする
のはないない」

 そう、まだあの時までは笑っていた・・・・・





Back  Top  Next





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送