新しい日々
(3)

キリ番39000をGetされた、みかん様より
「お試しください」







 3日ぶりの職場。
 自分の意志とは関係なく休まされた事に腹が立つ。
 この怒りは誰に向ければいいのか。

 昨日一日寝ていたお陰で体は楽になった。

 一ノ瀬と二人朝食を取った後、一人家を後にしようとすると、
 またもや素の意思を無視し、一ノ瀬の車に乗せられ職場へ。
 
「一人で電車に乗って行く」

 速攻で却下された。

「ここがどこだか分からないだろう。 それに可愛いお前を満員
電車になんか乗せられるか。 俺以外の男が素に触れるのかと
思うと我慢ならん。 それに痴漢にあったらどうする」

 誰が好き好んで男の自分に痴漢をするんだ。
 
「そんな事思うのはあんたくらい。 今まで痴漢になんか合った
事ないし」

「分かってないな。 素は今まで自転車通勤だったからだろう。
今まで電車で通勤通学した事があるのか?」

 考えてみるとない。
 小中は当然自宅から通っていた。
 高校も自宅からで、20分かけ自転車で通学。
 専門学校はさすがに自宅から通う事が出来ないから、自宅を
 離れ一人暮らし。
 学校の割と近い場所にアパートを見つける事が出来、やはり
 自転車で15分の道のり。
 就職先の横田眼科も今まで住んでいたアパートから近く、20
 分程の場所だ。
 出かける時に電車は使っているが、満員電車になど乗った事
 はない。

「・・・・・・ない」

「お前にあの満員電車は無理だ。 だから大人しく俺の車に乗っ
て行けばいい。 しかし夜勤があるな・・・・・」

 そも後は一ノ瀬の独り言に。
 頭の痛くなる内容だ。

「ふん・・・・そうだな・・・・夜勤があったな・・・・・・。 場所を変える
か。 直ぐには見つからないだろうから、それまではタクシーで
通わせるか・・・・・」

なに言ってるんだ・・・・?
まさか引っ越す気なのか?
そんな事あるわけないよな。
そうだ、気のせいだ!

 ブツブツ素は自分に言い聞かせていた。
 しかし、無駄に終わった。
 おもむろに携帯を取り出し何処かへ連絡を入れる一ノ瀬。

「・・・・・・・俺だ。 ○○の近くにいい物件はないか? ・・・・そう
だ。 では、そこを買おう。 いつになる・・・・・分かった」

今のはなに?
買うって、何を?

 冷や汗がダラダラと流れる素。
 
「どうした、顔色が悪いぞ」

「今の何・・・・?」

「暫くは不自由だが今の家で我慢しろ。 あと一ヶ月もすれば通
勤も楽になるだろうからな。 今度のマンションは横田の所まで
歩いて10分くらいの筈だからな」

「・・・・・今度って?」

「勿論新しいマンションだ。 そこなら電車通勤しなくてもいいか
ら俺も安心して仕事に行けるからな。 それまでは俺が夜勤で
送って行けない時はタクシーで通勤しろ」

 次元が違う。
 その前に、一ノ瀬はおかしいのではないか?
 あっさりマンションを買うなんて。
 タクシーで通勤だなんて。

横暴だ!

「そんな事したら別れてやる!」

 つき合うとも、恋人とも認めていないのに「別れてやる」と出て
 きた言葉。
 だが、素は自分の物と思っている一ノ瀬には流す事の出来な
 い言葉。
 
「何だと・・・・」

「だってそうでしょ。 勝手に俺の荷物や俺を連れ込んで住まわ
せて。 そのせいで職場が遠くなったのに電車はダメだタクシー
で行けだなんて。 挙げ句また勝手にマンション買うだなんて、
あんたおかしいよ! そんな事しなくていいし、したくもないから
俺を元のアパートに戻せよ」

「素が何と言おうがこれは決まった事だ。 お前を前のアパート
に返すつもりもないし、俺から離れる事は許さない。 絶対にだ」

 向けられた眼光の鋭さに体が震えた。
 一ノ瀬が恐いと感じたが、負けたくなかった。
 しかし、今一ノ瀬に何か言っても無駄な事だと分かるだけに何
 も言えない。

「もういい!」

 言って部屋を出ようとすると、一ノ瀬に腕を捕まれた。

「何処へ行く」

「仕事に決まってるでしょ! 誰かのせいで2日も休む事になっ
たんだから。 これ以上俺の事休ませたら本当に許さないから
!」

 これは絶対に譲れない。
 男として、社会人として。
 とにかく精一杯睨み付けた。

 一ノ瀬は何も言わず、素の腕を掴んだまま部屋を出て、エレ
 ベーターで駐車場へ下りた。
 車で移動している間も何も話さなかった。
 横目で見た表情も硬く、厳しいもの。

 とても居心地が悪かった。

 職場に着いても一ノ瀬は無言のまま。
 横暴な一ノ瀬がいけないのに。
 自分は間違った事など一つも言っていないのに。

 車から降りる時前を向いたままの一ノ瀬に「行ってきます」と
 声を掛けた。
 相変わらず無言のままだった。
 ドアを閉め離れると、素の事など気にする事もなく車は去って
 行った。

「なんだよ・・・・馬鹿」



 その時の一ノ瀬の心は、非常に楽しかった。
 顔をほんのり染めて怒る姿は艶があった。
 本人は怒鳴っているのだろうが、一ノ瀬には鳥の囀りのよう。
 車の中で、様子を伺う姿は子犬の様にあどけなく。
 兎に角全てが愛らしかった。

 素は何と言おうが決定を曲げる事などは決してない。
 自分が夜勤の時にはタクシーで行かせる。
 拒んだ時には堀田に送り迎えさせよう。
 一ヶ月後には新しいマンションで、新しい生活。
 考えるだけで楽しかった。

 



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