新しい日々
(2)

キリ番39000をGetされた、みかん様より
「お試しください」







 見つめていたのはほんの短い時間。
 もっと見つめていたかったが、昼休みの時間は限られている。
 
 一ノ瀬にとって素の寝顔は天使の寝顔その物。
 起こしてしまうのはしのびない。
 このまま見つめていたかった。

 しかし、素は昨日の夜からまともな食事をしていない。
 まあ、それは素の事を放さなかった一ノ瀬の責任でもあるのだ
 が。
 帰ってから食事をさせればいいのだが、それでは素の健康に
 良くない。
 医者として意識に反する。

「素、起きろ。 素」

 一ノ瀬の声に反応するが、起きるまでにはいかない。
 朝のようにキスをして起こしてもいいのだが、それでは自分が
 収まらないだろう。
 
 本当のところ朝キスした時点で、素を襲ってしまうところだった
 のだが、仕事がある為に我慢したのだ。
 ここでキスしようものならば、確実に襲う。
 一日に2回もお預けにされるなんて事、冗談ではない。

「素」

 軽く揺さぶり起こす。
 
 今度は体に振動があったせいか、素の目がうっすらと開く。
 ぼんやりとした瞳。
 その瞳が一ノ瀬を捕らえた。
 そして嬉しそうに微笑んだ。
 素には意識も自覚もない。
 寝ぼけていただけなのかもしれない。

 ただ、一ノ瀬にとっては違ったらしい。

 出会ってからの素は、顔は可愛いが憎まれ口しかきかない。
 まあそれも一ノ瀬のせいであるのだが。

 いや違う。
 素の姿が25歳とは思えないほど愛らしいせい。
 弟の桜の友人と思ってしまったくらい、隣にいて違和感がなく
 つい、素が気にしている事を口にしてしまったからだろう。





 昨日の放課後、親友横田の眼科にコンタクトレンズを作りに
 行った、弟桜。
 ブラコンというわけではないが、桜の事は可愛いと思ってい
 る。
 容姿も性格もそこら辺にいる女より可愛い。
 そんな可愛い桜を見ていたせいか、自分に近づいて来る女達
 時には男もいたが、皆腹黒に見えていた。
 
 見た目、家、金。
 全て持っている一ノ瀬に、何とか近づこうとあの手この手を使
 って。
 適当につき合っていたが、全くウンザリだ。

 そんな時行った親友の眼科にいた素。

 桜と手を取り合ってはしゃいでいた姿が、本当に愛らしくて。
 声をかけた一ノ瀬の姿を見て口を開け、ポカンとしていた姿
 が庇護欲をそそった。
 初めて欲しいと思った。
 初めて自分の容姿に感謝した。

 僅かの染まった頬を見て、自分に好意を抱いてくれた事に気
 付いた。
 口説けばきっと断られる事はないだろうと思い、早速口説きに
 かかったのだが、地雷を踏んだらしい。
 
 25歳と聞いてあり得ないと思った。

 そして、童顔な事を本人は必要以上に気にしていた事。
 自分に抗議する姿も可愛くて、動くピンク色の唇が誘っている
 ようで、周りに人がいるのにも拘わらず奪ってしまった。
 
 時折漏れる声が艶めかしく、その幼い顔からは想像できない
 程の色香が。
 こんな姿を誰にも見せたくない。
 誰かに攫われてしまう前に自分が攫い、常に手元に置いてお
 こうと決めた。
 
 一旦離れ素を窺うと放心状態。
 何も考えられないのを良い事に「素、俺と付き合わないか。 
 絶対満足させてやる。 ダメなら別れてもいいから。 取り敢
 えず試しに付き合おう。 うん、と言え」と言い強引に「うん」と
 言わせた。
 
 横田と桜からは非難の眼差しと抗議の声が上がったが、横田
 は物で釣ってしまえば大人しくなる。
 桜は最終的には自分には逆らわない。

 我に返った素がまた騒ぎ始めたがキスで黙らせた。
 今度は手加減なく。

 素の反応から経験は殆どないと踏んだ一ノ瀬の読みは当たり
 気絶した。
 そしてこれ幸いとばかり思いついた事を行動に起こす。
 
 横田から素の住所を聞き出し、色々な弱みを握っている高校
 からの友人で探偵をしている堀田に連絡を入れた。
 繁盛していて忙しいらしいが関係ない。
 連絡をして「俺だ今から言う住所に行って全部引き上げて俺の
 所に持ってこい・・・」と言う。

『突然電話して来ていきなりそれかよ! 俺は忙しいんだ。 今
も対象者に着いて張り込み中なんだよ!』

 電話越しに怒鳴ってくる。
 まあ普通なら当然の事だろう。
 だが一ノ瀬には関係ない。
 そういう時には例の事を持ち出す。

「あ〜? 出来ないとは言わせないぞ」

 一ノ瀬の口調に何か感じたのか、堀田は焦った声。
 野性的な雰囲気で男前の堀田はかなりモテていた。
 その為依頼者や対象者にアプローチをかけられる事も多数。
 しかし堀田にはつき合っている男がいる。
 綺麗で我が儘で嫉妬深くプライドの高い、まるで猫のような男。
 堀田自身はその猫以外目に入らないのだが、周りが放ってお
 かない。
 それを見て猫が爆発し浮気に走るらしい。
 昔の事にでも腹をたて浮気に走った事がある猫だ。
 一ノ瀬は昔の事を色々と知っている。
 猫の知らない今の事も知っている。
 この間久しぶりにバーで飲んでいた時にも、仕事で知り合った
 と思われる女に偶然合い「この後二人で」などと迫られていた
 のを見たばかり。

『・・・・まさか、この間の事を言おうなんて思ってないだろうな!
頼む、それだけは止めてくれ。 また浮気に走るだろ! 分かっ
た、運ぶ・・・・・』

 後は素を連れて帰るだけ。
 幸い自分のマンションには空き部屋がある。
 そこに素の荷物を運び込んで住まわせよう。
 毎日素のいる生活。
 自分の生活に張りと潤いが。



 そして、それが今目の前に。
 想像以上に自分を満たしていた。

「あ、お帰り」

「何か食べないと体に悪い。 今用意する」

 寝ぼけて目を擦っている姿は本当に愛らしい。
 このまま押し倒してしまいたい程だ。

 それを我慢し部屋を出た。
 動けないだろう素に、ベットに昼食を持ち込む。
 2種類のベーグルサンド。
 一つはツナ。
 もう一つはサーモン。
 オリジナルドレッシングで混ぜたレタス、タマネギを一緒に挟
 んだ物。
 
「美味しい!」
 
 美味しそうに、幸せそうな顔。
 見ているこちまらまで幸せになる、そんな顔だ。

「う〜ん、美味しい〜」

 ついつい我慢出来ずに押し倒してしまった。

「馬鹿、なにすんだよ!」

 必死で抵抗するが、当然敵う筈もない。
 一ノ瀬は手と口で素を堪能。
 素の体を綺麗にし、意気揚々と午後の仕事に戻って行った。
 ふて腐れている事は間違いない素。
 仕事帰りにデパートの地下で食材を購入。
 帰ってみるとやはり素の機嫌は悪かった。
 口もきいてくれない。
 
「そういう態度なら、こちらにも考えがあるぞ」

 その言葉と態度に身の危険を感じたのか、慌ててこちらのご
 機嫌とりに。
 余りにも分かりやすい。

 機嫌がすっかり直っている訳ではないが、取り合えず会話は
 成立。
 夕食は素の好きそうな肉をメインとした料理。
 見た途端素はご機嫌になっていた。
 
餌付けだな

 その後は風呂に入れ、大騒ぎだったが。
 ベットで寝た。
 どうやら諦めたらしい。
 
 一ノ瀬は素を抱きしめて眠った。

 最初は体を堅くしていた素だったが、一ノ瀬が何もして来ない
 事に安心し、熟睡していた。





 
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