新しい日々
(1)

キリ番39000をGetされた、みかん様より
「お試しください」







「素、起きろ」

 意識は起きている。
 しかし体が言う事を聞かない。
 それもその筈。
 二日間みっちり一ノ瀬に抱かれたのだから。
 
 一ノ瀬と出会ってまだ二日。
 どんな奴なのかもまだ全く把握していない。
 
 分かっているのは強引で自己中。
 人の言う事なんか全く聞かない迷惑な奴。
 男に抱かれる事が初めてだった素が、あっという間に慣れ
 快楽に溺れるほどセックスが上手いという事。

可愛い彼女を作って、結婚して、平凡ながらも幸せな生活を送って
行く筈だったのに・・・・・
こんなんじゃお婿に行けない・・・・・

「素、寝てるのか? 仕方ない奴だな」

 甘い声で言う一ノ瀬。

何が仕方ないだ。 お前のせいだろう!
腰が痛いんだよ。 眠いんだよ!

 目を閉じて文句を心の中で言い続ける。
 それが顔に出ていたらしい。
 眉間に皺を寄せた不機嫌な顔。
 しかし、一ノ瀬から見ると、それは不機嫌ではなく、赤ちゃんの様
 にむずがっている風にしか見えないらしい。

 ベットが揺れ、俯せに寝ていた体を引き寄せられる。
 体は痛いが優しい動きだった為に負担にはならなかった。
 
 大きな腕の中にスッポリと収まり、優しく髪を撫でられ、なんとも恥
 ずかしい。

 目を開けると思った以上に一ノ瀬に顔が近かった。

「お早う素」

「・・・・・・・お早う」

 敬語はすっかりなくなっていた。
 使いたくなかったし、一ノ瀬が嫌がったから。
 使った時には苛められた。
 エッチな事をされ、厭らしい言葉を沢山言われたし言わされた。
 そして、絶対に「お前なんかに敬語なんて、二度と使うか!」と
 誓ったのだ。

「体は大丈夫か?」

「この姿を見て『ああ、大丈夫そうだな』っていう奴の顔を見てみた
いね・・・・・」

「まあ、確かにやりすぎたな。 それもこれも素が良すぎるからだ」

 あれだけやっておきながら「悪い」と言われた日には、速攻で抹
 殺だろう。
 余計機嫌が悪くなる。

「横田には今日も休むと連絡してあるから、ゆっくり休んでおけ」

・・・・・・・・・
今日も休み・・・・・・。 二日続けて休まされるなんて・・・
ムカツク!

「本当は今日も一緒にいてやりたいんだが・・・・・大人しく待ってい
ろよ。 なるべく早く帰って来るから。 昼の食事は冷蔵庫に用意
してあるから、温めて食べて・・・・・・・」

 最後まで言えなかった。
 腹を立てた素は、弱々しいながらも一ノ瀬に対し手元にあった枕
 をぶつけたから。

 枕を退け素を見ると一ノ瀬の事を睨み付けていた。
 だが、一ノ瀬はその行動を「寂しい」という風にとった。

「すまない、素。 昼には一度帰って来るから」

 そう言って切なそうな目で素を見つめ、抱きしめた。

「!」

 痛い!やめろ〜〜〜!
 一ノ瀬の腕の中でグッタリとなった。

「行って来る」

 チュッと素にキスをして意気揚々と仕事に出かけて行った。
 帰って来なくていいと心の底から思った。

 時間を見ると8時15分。
 この時間なら横田は医院に来ている筈。
 いくら一ノ瀬が代わりに横田へ休みの連絡を入れたと言っても、
 素も25歳。 
 成人男子。
 社会人としてのけじめはちゃんとしないと。
 怠く、軋む体を必死で起こすと、ベット横のサイドボードに子機
 が。
 勝手に使うのもどうかと思ったが、自分の携帯が近くに見あたら
 ない。
 電話代くらいで文句は言わないだろうと使う事にした。

 5回程のコール。

『はい、横田眼科です』

 一日ぶりに聞く横田の声。
 怒りが沸々と沸いてくる。
 聡に売られたせいでこんな事?になったのだから。
 いや、その前になんで一ノ瀬と友達になったんだ。

「・・・・お早うございます。 佐倉です」

雇い主に対し、こんな不機嫌な声でどうよ?
でも、爽やかな挨拶なんて出来るか!

『あ、お早う佐倉君。 どうしたの?』

どうしたのって・・・・・・

「いえ・・・・体調が優れないんで、今日は休ませて貰おうと思いま
して・・・・」

『え? 一ノ瀬からさっき連絡貰ったよ。 素君が動けないから休
ませるって』

「俺も聞きました。 でも、子供じゃないんで欠勤の電話は自分で
しないと」

『真面目だね〜。 うん、素君が真面目なのは分かってるよ。 そ
うだよね。 社会人はそうでないと』
 
 受話器の向こうで納得している横田。

どいつもこいつも全く腹の立つ!

 怒りを抑えつつ休む事を謝罪する。
 自分が悪い訳ではないのに謝罪など、本当に腹の立つ事だ。

「本当にすみません。 俺が休んだら先生一人で全部こなさないと
いけないのに。 コンタクトもメガネも、他の検査も何にも出来ない
ですね・・・・・。 夕方には添田さんが来るから、受付は大丈夫です
けど」

 言っていたら、悲惨な状況が尚強調されてくる。
 動けないと言っても一時的な事。
 普段使っていない筋肉と、関節がちょっと?ミシミシいっているだ
 け。
 あと、人に言えない部分と・・・・・
 体にムチ打ってでも、やはり行くしかないだろう。
 と、思った素だったが・・・・・

『仕事の事なら気にしなくっていいから、昨日と今日の二日だけな
んだけど、一ノ瀬が人を回してくれたから。 午前中には受付にも
添田さんの代わりの人がいるし、検査にも二人来てくれてるんだ。
でも一ノ瀬も酷い奴だよね。 なにも素君が動けなくなるまでやらな
くってもいい・・・・・』

ブツッ。

 社会人としてあるまじき行為だが、電話を無言で、それも相手が
 話している最中に切ってしまった。

 恥ずかしいというか、情けないというか。

 そして、ふて寝した。
 お腹は空いていたが、とにかく寝る事にした。




 朝、素に言ったとおり一ノ瀬は昼の短い時間を利用して戻って来
 た。
 
 家の中は静まりかえっている。
 リビングも朝と同じ状態。
 素が起きた気配は無かった。
 キッチンに行き、冷蔵庫を覗くと用意しておいた、朝と昼の食事
 は手つかずのまま。

 寝室を覗くとベットの中央が膨らんでいる。
 半分覗く顔が愛らしい。
 朝見た時とは違い、柔らかい寝顔だ。
 
 朝一番で急患が入った為、朝の外来は非常に忙しかった。
 昼がずれ込むのはいつもの事。
 しかし、今日ほど早く終わらせたいと思った事はない。

 患者がいなくなったと同時に白衣を脱ぎ、急いで帰って来たの
 だ。
 仕事は好きだが、素という恋人を得てますます仕事に張り合いが
 出た。
 私生活でも。
 たった二日なのに、人生がガラッと変わった。





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