束縛しないで
(7)

キリ番99999をGetされたなつめ様からのリク
「束縛されて」の続き







「腰が痛い・・・・」

 明け方まで続いた竜也との激しい行為のせいで、珊瑚の体はボロボロだった。
 だが今日は平日。
 セックスのしすぎで学校を休むなど屈辱以外のなにものでもない。

あの絶倫男め・・・・・

「太陽が黄色いのは気のせいか・・・・?」

 ヨロヨロしながら学校への道を歩いて行く。
 家を出る時、休んだ方がいいと言う竜也を睨み付け、意地でも学校に行ってやるん
 だと、いつもより早く家を出て、今日だけは学校の近くまで車で送らせた。
 車から降りる時には周りに同じ学校の生徒がいないか細心の注意を払い。
 学校は目と鼻の先なのに、いつもと変わらない時間に登校しているのが不満だ。

「何が黄色いって?」

「うひゃ!」

 突然耳元で聞こえた声に珊瑚の心臓が一瞬止まる。
 出来る事なら振り返りたくない声の主。
 ギギギと音がするのではというくらい、ぎこちない仕種で振り返った。

「おはよー珊瑚。 歩き方変だよ?」

「腰を酷使するような事でもあったのか?」

 先の脳天気な声は若菜で、後の綾瀬はニヤリと厭な笑みを浮かべ意味深な言葉を
 言う。

・・・・・絶対知られたくない

 竜也との事を知られたら最後、遊ばれる事を珊瑚は良く知っているから。
 
「ぎ、ぎっくり腰で・・・・」

 我ながら苦しい嘘だと情けなくなるが、若菜は信じたようだ。

「大変! 癖になるっていうよ。 大丈夫? 無理しないで休めばよかったのに」

 心優しい若菜に思わずホロリとなる。
 それとは対照的に綾瀬は哀れみの声と同情の眼差し。
 腹が立つ。

「・・・・・・若いのにな」

「ほっとけ! うぐっ・・・・」

 叫んで腰にきた。
 こんな目に合わせた竜也に心の中で罵声を浴びせた。
 本当なら目の前にいる綾瀬に対しも文句を言いたいところだが、直接などとても恐ろ
 しくて言えない。
 なので心の中で『覚えていろよ』と復讐を誓う。
 誓うが果たされる事がない事も知っている。

ああ・・・・腰が痛い・・・・

 若菜の肩を借り3人で学校へ向かう。
 昨日正門で起こった出来事を聞かれるのではと、ドキドキしていたが、どうやら綾瀬
 達の耳にはまだ届いていないようだ。
 ほっと一安心していたが正門へ行くと椎堂達が待ちかまえていた。

うわ〜、ウザイ・・・・

 多分昨日の正門での出来事を知り、問いつめようとしてだろう。
 隣に綾瀬の姿を確認し、あからさまに嫌そうな顔をしていたがそれでも気になったの
 か「昨日は大丈夫だったのかい?」と聞いてきた。
 チラリと視線を向けた珊瑚に、彼等はハッと息を呑む。
 昨日とは違う明らかな艶。
 気怠げな仕草にゴクリと喉を鳴らす。
 そんな彼等に、綾瀬は昨日何が起こったのかは知らないが、牽制の意味を込め冷え
 視線で彼等を見つめた。
 その冷たさに椎堂達が我に返る。
 
「無事だからこうして元気に学校に来ているんでしょ。 相変わらずあなた方はお馬鹿で
すね」

 自称親衛隊の椎堂達に綾瀬があからさまに嫌みを言う。
 それに気付いた椎堂達は綾瀬を睨み付けるがより冷たい視線を返され怯んでいた。
 対抗出来ないのだから絡まなければいいのに、と珊瑚は思う。

「じゃあ、珊瑚行こうか。 先輩方、無事に卒業したいなら余計な事、しないでください
ね」

 凍るような視線を残し珊瑚と若菜を促し校舎内へと入って行く。
 後ろでは椎堂達が怒りに燃え、呪うような視線を向けているのが感じられたが無視
 だ。 

 その後も椎堂達は珊瑚につき纏ったが綾瀬によって阻まれ、ある時期よりピタリと姿
 を現さなくなった。
 不思議でしかたなかったが有り難いことだ。



 一方、竜也の方は昨夜のうちに野球部監督とコーチに連絡を入れ野球部退部を伝え
 た。
 元々好きで始めたわけではないので未練はない。
 何があったのか、考え直して欲しいと散々説得されたが決定事項だ。
 
 他にもスポーツマンとしてあるまじき行為をした彼等。
 珊瑚を呼び出す為に授業を早退し、部活まで休んだ彼等には年内の野球活動を禁
 止とさせた。
 温厚な竜也をこれ程まで怒らせたという事で、教師達も口出ししてこなかった。
 通常なら部員達から不満が持ち上がるのだが、竜也が最も嫌う卑怯な行為をした事
 それも最愛の恋人に対し行っただけに彼等は大人しく受け入れた。

 そうでもしない限り、竜也は二度と彼等が近づく事を許さないだろうから。
 いつもは人当たりのいい竜也を怒らせると恐ろしい事を知っていたからだ。
 まる四ヶ月、野球が出来ない彼等は己達の浅はかな行動を悔やんだ。

 そして珊瑚に対し、暴言を吐いたマネージャー。
 竜也が野球部を辞めたと聞き、昨日の出来事を忘れ怒り心頭で竜也の元へとやって
 来た。
 珊瑚が辞めさせたのだと思い込み。

「勝手な事をした事は謝ります。 でもだからって言われるがまま野球部を辞めなくても
いいじゃないですか。 どうしてあの人の言いなりになるんですか!」

 それまで大人しく聞いていた竜也だったが、珊瑚の事を持ち出された途端気配が変
 わる。
 微笑んでいるが視線がマネージャーを射すくめる。
 周りにいた誰もが動けず恐怖を感じていた。
 
「不愉快、だね。 君が珊瑚の何を知っている? 想像で物事を言うのは愚者の証
拠。 同じ空気を吸うのも不快だね。 その顔、二度と僕の前に見せないでくれる?」

 言うだけ言ってその場から去る。
 今まで一度たりとも竜也の口から出た事のない言葉。
 竜也の怒りの大きさが窺える。
 マネージャーはその場に崩れ落ちた。
 翌日から、学校にその姿はなかった。
  
 あの出来事の後、あれ程珊瑚と同じ高校に通うと言っていた竜也だったが、ピタリ
 と口にしなくなった。
 何か企んでいるのではと警戒していたが目立った行動はない。

 月日が流れ、クリスマスが訪れ二人で初めてのクリスマスを過ごした。
 だが何故か女装させられ、出会ったホテルのレストランで食事をする嵌めに。
 抵抗したにも拘わらずドレスアップさせられた。
 「今日は特別」と、未成年だと言ったのにシャンパンを飲まされ、程良く酔ったところ
 に「婚約の印」と左手薬指に大きなダイヤの指輪を嵌められた。
 ケーキが運ばれて来て、スタッフから、その場にいた客から「おめでとう」と祝福され
 思わず卒倒しそうになった。

 その後竜也が取っていた部屋に連れていかれ、怒鳴り散らしていたのだが甘い雰囲
 気にもっていかれ、散々体を弄ばれた。
 朝起きて夢だったのかと思ったが、左手を見ると薬指に大きなダイヤの指輪が嵌めら
 れていた。
 隣りで穏やかに眠る竜也に腹が立ち、ダイヤの指輪をメリケンサック代わりにして
 額にガツリ。
 流石に痛かったのか痛さに飛び起きたが、しかし珊瑚を、そして指輪を見て「卒業し
 たら籍を入れようね」寝起きにも拘わらず甘い微笑みを浮かべキスしてきた。

あれは忘れられない・・・・
屈辱だ

 今でも時折女装、といっても服を着るだけだが、それだけでも充分美少女に変身して
 しまうのが屈辱だった。
 初めて過ごす正月は珊瑚の家族が日本へ戻って来た事で潰れたが、初詣だけは家
 族とは別で二人で出掛けた。
 暫くの間、部屋は元通りになったが、家族の誰も異変には気付かなかった。

 2月のバレンタインは男女間でのイベントと勝手に決めつけ、知らんぷりをしてやり過
 ごそうとしたのに、いつの間にか若菜に竜也の事がバレていた。
 綾瀬の家で若菜達は恋人に贈るチョコを作る事になった。

「バレンタインは好きな人にチョコを送る一年の中では欠かせない行事なんだよ。 大
切な事なんだよ」

 と力説する若菜。
 
「分かったよ。 でもどうして俺も一緒なんだよ。 三人で作ればいいだろ」

 作るなら彼氏持ちと公表している3人で作ればいいのに、何故自分までと珊瑚はた
 め息を吐く。
 しかし若菜は人差し指を立て左右に「チッチッチッ」と言いながら振る。
 そして爆弾をかました。

「駄目駄目。 珊瑚だって大切な人がいるんだからちゃんとしないと」

  綾瀬と有樹が驚き珊瑚と若菜を交互に見る。

「な、何の事だ・・・・・・」

 動揺する珊瑚。
 誰にも話した事はないし、素振りも見せた事もない。
 出かける時にも細心の注意を払っていたのに。
 絶対に「綾瀬には気付かれても、天然ボケ若菜にだけは間違っても悟られる事は
 ない」と高をくくっていたのに。
 最初は知らぬ存ぜぬでやり過ごそうと思っていたのだが、竜也と出かけていたのを
 若菜は見ていたらしい。

「え〜、隠しても駄目だよ。 僕見ちゃったんだから。 もうラブラブじゃん」

  心臓がバクバクしている。

「彼、今年の夏甲子園に出た子だよね」

 誤魔化そうと思ったのだが、その時若菜の恋人で綾瀬の兄である久我山貴章が一
 緒におり、二人は面識があり無駄に終わった。
 
 当然その場にいた綾瀬や有樹にもバレてしまった。
 綾瀬は竜也の事を知っていたらしく、からかわれる嵌めに。
 そしてチョコレートまで作らされた。
 今でも忘れられない恐怖のバレンタイン。

あの時の若菜は鬼だった・・・

 しかし若菜のおかげで竜也に喜んで貰えた。
 今では一つのいい思い出だ。

 そして2年が終わり、春休みに。
 竜也に不審な行動はなかった。
 白鳳への編入は諦めたのだと喜んでいた。

 3年になり始業式の日、竜也は鳳の制服を着て出かけたので無警戒だった。
 しかし・・・・・

「鳳学園から編入して来ました、剣竜也です」

はぁ――――――――?

 出掛ける時には確かに鳳の制服だった。
 ショートホームルームで転入生だと入って来た白鳳の制服を着た竜也を見て珊瑚は
 思い切り頭を机にぶつけた。
 髪が伸び坊主頭ではなくなった竜也は男前で、教室の女子が色めき立っていた。
 ニッコリ笑った竜也に一部を抜かして男女とも惚けていた。
 それだけではない。
 剣は夏の甲子園のアイドル。
 しかも剣グループ御曹司。
 余りにも有名な人物だった。
 クラスメイト達は自分達が持つ情報を交換し、如何に竜也が凄い人物なのかを話して
 いたのだが、机に張り付き怒りに震える珊瑚には全く聞こえていなかった。

やりやがった・・・・・

 顔を上げ、綾瀬を見るとニヤリ。
 若菜は声を出してはいなかったがその口は確実に『ラブラブだね〜』と言っており、有
 樹は竜也に見惚れていた。

葛城に言いつけてやる!

 そして最後に竜也に視線を移すとそれはもう素敵な笑顔で珊瑚に微笑みかけた。
 余りの脳天気さに珊瑚は切れた。
 その場で立ち上がり、思い切り罵声を浴びせていた。

「帰れーっ!」

 その言葉にクラスメイトの目が二人の間を往復し、珊瑚を見つめる甘い竜也の瞳に女
 子は一瞬で失恋した。
 男子の中でも失恋をした者がいた。
 珊瑚、竜也の両者に対して。

 当然この出来事は学園中に知れ渡り、失恋に泣く者が多数出たのは言うまでもな
 い。

俺って、不幸・・・・

 嘆く珊瑚だった。





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