3周年企画

おとぎ話のように

(18)






 鈴鹿が熱気で、歓声で、エンジン音で揺らぐ。
 いよいよレースが始まる。

 昨夜殆ど寝ておらず、そして長距離の移動をしたウィリアム。
 レーサーは体力が資本であるにも拘わらず、自分のせいでそれ
 を奪ってしまった。
 暁兎は祈った。
 
どうか無事で戻って・・・・

 昨日とったポールポジションからのスタート。
 トップを走るウィリアム。
 チームのみんなには悪いと思ったが、無理をして事故に遭うより、
 リタイヤしても構わないから無事で戻って来て欲しかった。

 ピットレーンでは、スタッフ達が燃料補給、タイヤ交換に向け忙しく
 動き回る。
 クロムが戻った事で活気が戻り、そしてクロムがウィリアムの為に
 今まで以上にチームを纏めていく。
 一秒も無駄にする事なく、戻って来たマシンを整え送り出す。
 ウィリアムはどんどんタイムを縮めていった。
 
 そして・・・・・

「やりましたー! バウスフィールド優勝です! 強い、強いです!」

 トップでフラッグが振られた。
 どれ程強靱な精神を持っているのだろう。

「ウィル・・・・」

 充分な睡眠、休息も取っていないにも拘わらず、ウィリアムは優
 勝した。
 お立ち台の中央に立ちインタビューを受けている。
 彼の強さに、暁兎は涙を流した。

【おめでとうございます! この喜びを今一番誰に伝えたいですか】

【僕を支えてくれたスタッフ、そして何よりも大切な恋人にこの優勝
を捧げます! アキ、愛している!】

馬鹿だな、ウィル、カメラに向かってそんな事言って・・・・
でも、ありがとう
俺、凄く幸せだよ・・・・・

 離れた場所にいる暁兎。
 ウィリアムは台の上から目で探し見つけ、そして暁兎を見つめな
 がら叫んだ。
 アキと呼んだのは、暁兎の事を思ってだろう。

「やったね、暁兎君! 君の王子様は凄いよ」

 隣で一緒に応援し祈ってくれていた灯が、自分の事のように喜ん
 でくれた。

でも王子様って

 それを言うと「金髪碧眼。 それにハンサム! あれだけ物腰も優
 雅で上品なんだから王子様って呼んでもいいんじゃない? それ
 にお姫様を迎えに行って、めでたく一緒に戻って来たんだし」

 ね?と言われても。
 それに

お姫様って・・・・、俺の事?

 複雑な気持ちでウィリアムを見ると目が合い、投げキッスを送られ
 た。
 回りからは盛大な拍手と歓声。
 ウィリアムはシャンパンの雨を、喜びの笑顔で浴びていた。

『暁兎!』
  
 カップを手に、暁兎の元へ一直線に戻って来る。
 途中持っていたカップをユアンへと渡し、そのまま暁兎を抱き上げ
 た。

『うわっ! ウィ、ウィル!』

 回りには大勢の人、報道陣がいるにも拘わらず抱きしめ顔中に
 キスをしてきた。
 
『暁兎、愛してる!』

 何も今ここで言わなくても。
 先程は暁兎を気遣い「アキ」と呼んだのに、これでは「アキ」が男
 である事が皆に知られてしまったではないか。
 その気持ちが伝わったようだが、『今だから言わなくてはね』と
 謎な言葉を言う。

『だってそうだろ。 全国、全世界に放送された事で、僕達の仲は
公認となるんだ。 こうしておけば暁兎も余計な心配しなくていいし
僕が暁兎だけの物だって事を分からせておかないとね』

 確かにテレビに映れば、しかもこれだけ熱烈なキスをすればどう
 いう関係かは分かるかもしれないが、ウィリアムも暁兎も男。
 この先色々と不自由な事になるのではないかと心配になる。
 大丈夫なのだろうかと、ウィリアムからのキスの雨を受けながら
 聞くと何も問題はないし、気にしないでいいと言われた。

『だって今の君の姿をみても、誰も男だとは思わないし』

 自分の格好を見下ろす。
 今着ているのはジーパンと淡いピンクの細かい花柄のプリントシ
 ャツ。
 妙に可愛らしく、自分には似合わないと言ったが、ウィリアムに
 押し切られ着た物だ。
 
・・・・服が花柄でも女の子には見えないと思うけど

 そう思っているのは暁兎だけだった。 
 ウィリアムに恋をし、そして愛された暁兎は輝き、綺麗になってい
 た。
 肩近くまで伸びたサラサラの髪。
 大きな瞳に、赤く色づいた唇。
 美少女にしか見えない。

『それに、今一番気にしないといけないのは、この後の自分の体
だから』

それは、一体・・・・
 
 何だろう、不穏な気配がする。
 微笑んでいるが、目が笑っていない。

『僕の愛を疑った事、そして黙って消えた事、許さないからね。 今
晩はたっぷりお仕置きだから』

 ゾクリと甘い刺激が背中に走る。
 艶を含んだ甘い声で言われたお仕置きという台詞。
 耳元で囁かれたから暁兎にしか聞こえていないと思うが、それで
 も回りを確かめずにはいられなかった。
 


 祝勝会が行われ、皆がウィリアムの優勝に喜んだ。
 そこで暁兎は改めてフローラを紹介された。

『勘違いさせてしまってごめんなさい。 ウィルとは単なる従姉妹で
幼なじみなだけだから安心して。 私には別に素敵な王子様がいて
ここには彼に赤ちゃんもいるの』

 フローラが新しい命の宿るお腹をさする。
 『おめでとうございます』と言い、自分の方こそ、ウィリアムとの事
 を勝手に勘違いし、身重の体で折角会いに来てくれたのに、嫌な
 思いをさせてしまった事を謝罪した。
 彼女は些細なことだからと、今度イギリスに会いに来てくれたら
 いいからと笑って許してくれた。

 祝勝会が始まって1時間もしていないのに、ウィリアムは暁兎を連
 れ会場を抜け出した。
 主役なのに良いのだろうか。
 だが彼等はウィリアムが肉体・精神的に限界がきている事を知っ
 ているので快く送り出してくれた。
 それに、早く暁兎と二人きりになりたいだろうからと。
 
 会場から出た時からウィリアムは無言だった。
 暁兎の肩を強く抱き、急ぎ部屋に戻る。

 いざ二人きりになると暁兎も落ち着かなくなる。
 ケイン達の嘘を真に受け、ウィリアムの前から姿を消してしまった
 のだから。
 見上げた顔は何処か怒っているようにも見える。

仕方ないよね・・・・・

 だが部屋に入ると同時に、ウィリアムに強く抱きしめられた。
 そして荒々しく唇を奪われる。

「ん・・・・・、ふっ・・・・。 ぁん・・・」

 口づけを受けながら、ウィリアムの太股が股間を刺激する。
 暁兎の中心に熱が集まる。
 シャツの隙間から手が入り込み、体をまさぐられ熱い吐息を漏ら
 す。
 全身が性感帯になってしまったのか、何処を触られても感じてし
 まう。
 胸の先端を爪で引っかかれた時には、足から力が抜けてしまっ
 た。
 ウィリアムの足がなければその場に崩れ落ちていただろう。

『凄くいやらしい顔・・・・』

 見下ろすウィリアムの瞳も激しく欲情していた。
 だがその青い瞳の中には、更に厭らしく濡れた瞳を持つ暁兎の
 姿が映し出されている。

『こんなに厭らしい体をしているのに、僕から逃げるの? そんな事
許さない。 君の体も心も僕の物だ。 また逃げても君を掴まえるか
ら。 ・・・・今度は逃げられないように監禁してしまおうか』

監禁・・・・・

 異常な言葉だが、ウィリアムにならば監禁されてもいい。
 
『・・・して。 俺が逃げ出さないように・・・・』
 
 濡れた瞳で見上げると、ウィリアムの体が一瞬震えた。
 その場で着ていた物全てを脱がされる。
 いつになく性急なウィリアム。
 体を裏返されドアに手をつかされ、腰を大きく掲げられる。
 直ぐに温かく濡れた物が蕾を這う。
 ピチャピチャという音。
 慌てて腰を引こうとするが、片手で腰を強く掴まれ、もう片方の手
 で中心を扱かれ力が抜けていく。

『あ、駄目。 そんな所舐めないで! ああっ・・・』

 蕾の奥まで舌が入って来る。
 暁兎の欲望の先端を爪で刺激され蜜がトロトロと零れ出す。
 腰を抑えていた手が蕾に移動し、中をかき混ぜる。
 クチュクチュという音が部屋の中に響き渡る。
 解された蕾に、熱い欲望が押し当てられた。
 表面を擦るだけでなかなか入って来ないウィリアムの欲望。
 これ以上焦らさないで欲しい。

『ウィル・・・』

 後ろを振り返り、潤んだ瞳でねだるように腰を振り押しつけてくる。
 愛おしい暁兎がまた自分の腕の中に戻ってきた事。
 いつもは可憐が暁兎が、この時は余りにも淫らな姿だった為、ウ
 ィリアムの理性が切れた。
 お仕置きをする予定だったのにも拘わらず。

『くそっ!』

 腰を掴み、一気に中へ押し入る。
 
『ああっ・・・・!!』

 解したにも拘わらず、まだ狭い蕾。
 痛みが暁兎を襲う。
 だがそれでも構わない。
 ウィリアムの心の痛みに比べれば軽いくらい。
 それに痛みは直ぐ快感に変わる事を知っているから。
 ウィリアムが動く度に中が擦れ、痛みが快感へと変わっていく。
 甘い声が零れる。

『ウィル・・・・あ、あぁ・・・・』

『暁兎、暁兎!』

 動きが激しくなる。
 互いの体が頂点へと向かう。

『あ・・・・、い、いい・・・っ、ウィル、ウィルっ!』

 ドアに爪を立て、絶頂を迎える。
 白濁が先端から吐き出され、ドアを汚した。
 そして強く抱きしめられ、中に滾る熱を受けた。
 その場に崩れ落ちる。

 背中、項をきつく吸われ白い肌に赤い花が咲く。
 繋がりを解かれ、体を入れ替えられ、どちらからともなく唇と近づ
 けキスをする。
 息が上がり熱の収まっていない体は直ぐに燃え上がる。

もっとウィルが欲しい・・・・

 一度欲望を吐き出した事で少しだけ理性が戻ってきたようだ。
 抱きかかえられベッドルームへと連れて行かれた。

『暁兎、欲しかったら今度は自分から来て』

 仰向けになったウィリアムの上をまたがされる。
 初めての体位。
 しかも自分から受け入れるなんて無理だ。
 だがウィリアムは許してくれない。

『これはお仕置きなんだから』

 言って蕾に指を入れ中をかき回す。
 一度受け入れ、中に放たれた欲望が音を立てそして零れていく。
 恥ずかしさに憤死してしまいそうになるが、ウィリアムはそれをや
 めない。
 その内我慢できなくなり、ウィリアムに言われた通り自ら雄々しい
 高ぶりを飲み込んだ。
 
『あ、駄目・・・・、こんな大きい・・・・・』

 先端を飲み込んだ所で動きが止まる。

『駄目だよ、しっかり最後まで飲み込んで』

 動く気配がない為、仕方なくゆっくりと体内に沈めていく。
 途中切っ先が、前立腺を擦り上げた事で暁兎の中で何かが弾け
 た。
 そこに当たるよう自ら腰を振り、締め付ける。
 余りにも淫らな姿にウィリアムの雄が更に大きさを増す。

『あ、ああ・・・・、いい、ウィル・・・・すご・・・・・』

 中がうねり絡みつく。
 ウィリアムの手が暁兎の中心に絡みつき、嬌声をあげる。

『や、・・・・あっ、ああああっ・・・・・!』

 絶頂は直ぐにやってきた。
 ウィリアムを締めつけ暁兎は先端から蜜を吐き出しす。
 ウィリアムは絶頂感漂う暁兎の体を倒し、突き上げる。
 そして熱を放った。
 


 目が覚めるとオレンジ色の光が部屋の中に入り込んでいる。
 一日が終わろうとしている事に驚いた。

 昨夜行われた今までにない激しい情交。
 何度達したか分からない。
 何度熱を中に放たれたのか分からない。
 ウィリアムの腕の中で激しく乱れてしまった事を思い出す。

 お仕置きという名の情交は、正気に返るととても恥ずかしいもの
 だった。
 ウィリアムを受け入れる為に自分の手で両足を持ち、赤く熟れた
 蕾を曝し誘うような格好をとらされた。
 他にも寝室に繋がるベランダに出てとか、後鏡の前でとか。
 格好だけではない。
 言葉にしてもそうだ。

 今まであんなに恥ずかしい言葉など口にした事などない。
 だがそれを言わないと、いつまでもいかせてくれなかったり、後
 は感じる所ばかりを擦られたりした。
 強すぎる快感は地獄でしかなかった。
 そしてとうとう気絶してしまったのだから、もうなんて言っていい
 のか分からない。
 まる一日寝ていた筈なのに、怠くてしかたない。
 ため息を吐く。

でも・・・・

 ウィリアムの逞しい腕の中。
 またこの腕の中で目覚める事が出来るとは思ってもいなかった。

誤解で、勘違いで本当によかった・・・・

 美しい青い瞳は閉じられ見ることは出来ない。
 暁兎にとって最愛の人物。
 二度と離れたくない。

『ごめんね、ウィル。 愛してる・・・・・』

 言って暫く見つめていると、閉じられていた瞳が突然開かれた。

『キスをしてくれるのかと待っていたのに』

 どうやら狸寝入りをしていたようだ。
 聞かれていたかと思うと、恥ずかしくて顔が真っ赤になる。

『・・・・っ! 酷いっ!』

『大胆かと思えばシャイな暁兎。 そんな暁兎が大好きだよ』

 手を取られキスをされる。
 愛されていると感じた。


 
 キスをされた手に違和感を感じ目の前に翳すと、そこには指輪
 が。
 昨日はしていなかった。

いつの間に?
でもこれって・・・・・

 左手薬指に嵌められた指輪を眺めていると『それは僕の母か
 ら贈られた物なんだ』と。
 驚きウィリアムを見つめる。

『心から大切だと思える人、生涯を共に過ごす人が出来たら贈るよ
うに渡された物なんだよ』

・・・・そんな大切な物を

『僕の生涯のパートナーは暁兎、君だ。 だからこれを受け取って
欲しい。 そして僕と共にこれからの人生を過ごして欲しい』

 体勢を入れ替えられ、上から覗き込まれる。
 その瞳は真剣だ。

俺もウィルといたい・・・・
もう離れたくない!

『俺、ウィルに相応しくなれるように頑張る。 だから側に置いて、
俺を離さないで』

『暁兎、それはOKと取っていいの、僕のパートナーになってくれる
の?』

 まだ不安があるようだ。
 だから暁兎はハッキリと言った。

『俺のパートナーになって下さい』と。

 ウィリアムの瞳が喜びに輝く。

『暁兎!』

 喜び抱き合う二人。
 暁兎の顔にキスの雨が降る。
 


 年下だが、ウィリアムはいつも暁兎を強く、そして優しく包み込ん
 でくれる。
 そして欲しい言葉を与えてくれる。
 これからは、守られるだけではなく守っていきたい。
 何をすればいいかはこれから考えていこう。

『好きだよ、ウィル』

 暁兎はウィリアムを見つめ、極上の微笑みを贈った。





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