眠り姫
(1)

37000をGetされたあっこ様より

「本当の気持ち」





 もうすぐ夏休み。
 

 その前に期末テストが控えているが、今の若菜にはどうでも
 いい事。
 頭の中は夏休みの予定で一杯。
 
 中でも一番の楽しみは貴章達との旅行。
 若菜・綾瀬・珊瑚・有樹。
 この4組のカップルで旅行に行こうという計画が持ち上がっ
 たのだ。
 
 綾瀬と珊瑚の二人は大反対。
 
 綾瀬は去年若菜達と一緒に行った旅行を思い出して。
 珊瑚は若菜に新たな弱みを握られそうな予感で。

 有樹と彰は揃っての旅行が初めてだったので、この際他に
 人がいても関係ないと割と乗り気。

 竜也としては珊瑚と二人きりでの旅行が良かったが、尊敬
 する貴章の恋人若菜の提案なので賛成した。

 実の所は、貴章が若菜の前だとどう変わるのか見てみたか
 ったから。



 以前若菜達が自分達に内緒でアルバイトをした時の事。
 貴章と一緒にいた時、一本の電話が入った。
 いつも冷静で表情の変わらない貴章の顔が一瞬にして変わ
 ったのだ。
 「一緒に来い」と言われて行く。
 移動中もかなりピリピリとしてたいた。
 
こんな貴章さんを見るのは初めてだ・・・・・

 着いた場所はとあるビル。
 その中にある高級クラブに入って行くと巫女姿の若菜達
 が。
 貴章の怒りが頂点に達した事が伺えた。

ここまで貴章さんが変わるなんて・・・・・・

 恋人の珊瑚が「若菜達はバカップルだな」と言って言ってい
 たが。
 これならあり得るかもと思った。

見てみたい・・・・・

 そんな誘惑に負けた竜也だった。
 

 企業のトップである貴章が休みを取るという事は簡単な事
 ではない。
 若菜がいくら言ったとしても無理な時は無理な筈。
 
 だから若菜はこう言った。

「夏休み綾瀬と悠二さんと珊瑚と竜也さんと有樹と彰君と一
緒に旅行に行ってくるね」

 と。

 自分以外の男達と一緒に旅行。
 それがいくら弟の綾瀬であろうと、この6人が実は3組のカ
 ップルであろうと、旅行に行くなんて。
 
そんな事は断じて許せない。

 そんな訳で貴章はその日の休みを決定した。
 秘書達も心得たものでその日入っている予定は全てキャン
 セルにした。



 まだ当分先の事なのだが、前の日の夜電話で「その日は
 空けておく」と貴章が言ってくれたので、嬉しくて眠れずちょ
 っと寝不足気味な若菜。
 途中電車の中で会った綾瀬に「眠そうだな」と言われてしま
 った程。

 学校に着き教室で会った珊瑚達にも「寝不足?」と言われ
 てしまった。

 一時間目の数学。
 チョークのカツカツという一定の音とボソボソ話す暗い声に
 若菜は睡魔に負けた。


「戸田君、戸田君!」

 呼ばれ起きる若菜。
 顔を上げ隣の席を見る。
 その顔を見た、女生徒が思わず大きな音を立て椅子を引
 く。
 顔も引きつっていた。

「んぁ?」

 間抜けな声を出す若菜。

「・・・・・・よだれ・・・」

 指摘されて口元に手を。
 確かによだれ。

「えへへっ」

 どうしてこんなダサイ若菜があの煌びやかな集団にいるの
 だろう。
 白い目で周りも見ていた。
 
 頭がいいからなのか。
 それだけでは納得がいかない。
 他の綾瀬・珊瑚・有樹・竜也は顔も頭も回りから飛び抜けて
 いるのだから。
 どう見てもこの四人は若菜の事を特別視しているのだ。

何かある・・・・・・

 そう思っても、その「何か」は今の所誰も分からない。

「ごめんね。 なにかな?」

 悪びれた様子もなく、無邪気に笑う若菜に女生徒は少し
 頭痛に襲われる。

「・・・・・・・」

「ん?」

「・・・・・先生が呼んでるわよ・・・」

 見ると数学教師が睨んでいた。

「あ、すみません。 なんでしょう?」

「・・・・・・随分疲れているようだが、勉強のし過ぎはよくない
ね。 君は学年トップなんだから、勉強する必要はないんじゃ
ないか?」

 分かりやすい程の嫌み。
 しかし、若菜はそれが嫌みだとは全く気付いていない。

「はい、昨日は夏休みの旅行の事を考えてたらワクワクしち
ゃって。 気が付いたら外が明るかったです」

 えへへと無邪気に笑う。

 誰もが思ってもいなかった言葉。
 途轍もなく大きな問題発言。
 教室内が水を打ったように静まりかえる。

 綾瀬と珊瑚は頭を抱えていた。
 竜也もこの発言には唖然となる。

貴章さん、あなたはこの人の何処に惚れたんですか・・・・・

 そう思われても仕方ないだろう。

「あの・・・・・・」

 何も言わない教師に不安に駆られる若菜。
 その声に皆が我に返る。

『凄いよね〜戸田君て。 あの陰険柏村にあんな事言うんだ
から』
『ヤバイよ戸田ゼッて〜嫌がらせがあるぜ』

 ヒソヒソと教室のあちらこちらからそんな声が聞こえて来る。
 見ると数学教師柏村は怒りのために手が震え、顔は真っ赤
 になっていた。

あ、あれ?

 流石にマズイとは思ったのだが、自分の一体何がそんなに
 柏村を怒らせたのかが分からない。
 オロオロし始める若菜。

「流石学年トップ、言う事が違いますね・・・・・勉強なんかは
どおでもいいと? ではこんな問題は簡単で笑ってしまいま
すかね」

 言って書かれた問題は余りにも難しかった。
 
大人げない

 確かに若菜の態度、発言にはかなり問題はあるが、本人
 は全く悪気はないのだ。
 天然なのは誰もが分かっている。

 この問題は竜也でも難しいと思う。
 高校の授業レベルではとても解けない問題。
 大学生でも解けるか・・・・

「この問題には二通りの答えがありますが分かりますか?」

 陰湿な笑み。
 若菜は首を傾けて「う〜〜ん」と唸る。
 そしておもむろに席を立ち前へ。
 チョークを手にし書き始める。

 全部書き終え柏村を振り返り説明を。
 問題途中で柏村の書き間違いを指摘し書き直す若菜。

 呆然としながら説明を聞くクラスメート達。
 説明されても全く分からない。

凄い・・・・・・

 完璧な答えに竜也は賞賛。
 
さすが貴章さんが選んだだけの事がある

 若菜を見る目がコロッと変わった。

 真っ青な顔をした柏村。
 自分が知る一番難しい問題をこうもアッサリと、しかも間違
 いを指摘されるとは。

 何か言わなくてはいけないと思うのだが声が出ない。
 そんな時チャイムが鳴った。







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