(後編)






 貴章の車に乗せられた若菜。
 折角一緒にいられるのだから、何か美味しい物を
 食べて貰いたい。
 何処かスーパーにでも寄って貰いたいと思うのだが
 どことなく話しかけるのが躊躇われる。
 機嫌が悪そうだ。

何かあったのかな・・・・・・

 忙しいと言っていた筈なのに、急に時間が出来たな
 どというのもおかしい。

 綾瀬も貴章の仕事が忙しいおかげで、恋人の悠二
 との時間が取れないとぼやいていた。
 今日も会う予定はないと言っていた。

・・・・・どうしたんだろう

 黙ったまま運転する貴章の横顔を見つめる若菜。
 このまま、貴章のマンションへ行くのかと思った。

 しかし車は途中貴章の経営するホテルのエントラン
 スへと付けられた。
 立っていたドアマンに鍵を渡し、若菜の手を引きロ
 ビーへ。
 貴章の姿を見つけたコンシェルジュが慌て貴章の
 元やって来る。
 
 挨拶を手で制し、直ぐ部屋を用意させた。
 案内も断り、鍵を受け取りスイート専用のエレベー
 ターへと向かう。

 若菜はただ何も言わず、貴章について行く。
 部屋に入って直ぐ、若菜は貴章に抱きしめられた。
 強い強い抱擁。

 苦しかったが振り解くことはせず、優しく抱きしめ
 返した。
 何かに縋るような、悲しい抱擁包容。
 こんな気持ちにさせてしまった事を悔いる。

大丈夫、僕は何処へもいかないよ
貴章さんの前からいなくならないよ
だから・・・・だから悲しまないで

 ありったけの気持ちを込め貴章を抱きしめた。
 ありったけの愛を込めて。
 
 そんな気持ちが伝わったのか、強すぎた腕から徐
 々に力が抜けていった。
 優しく愛おしむ抱擁へと変わった。

 貴章が脅えないように、ゆっくりと腕を外し、首に腕
 を回し貴章の顔を引き寄せる。
 若菜から貴章に口づけた。
 優しく、啄むように。
 瞼、額、鼻、頬と顔中に優しくキスを落としていっ
 た。

 そして貴章から、噛みつくような荒々しい口づけが。
 若菜の全てを奪い尽くすかのような激しい口づけ。
 必死についていこうとする。
 飲み込めない唾液が顎を伝い落ちていく。
 
 貴章は若菜の唇を貪りながら、服を脱がせて行く。
 ネクタイを解き、ボタンを外し零れた唾液を嘗めとり
 鎖骨をキツク吸い上げる。
 はだけられたシャツから覗くピンク色の先端に吸い
 付く。
 唾液を絡め、時には甘く噛み。

 漏れ聞こえてくる若菜の艶めいた喘ぎ声。
 若菜という存在全てが貴章を煽る。
 
 シャツだけを残し他の物は若菜からはぎ取ってしま
 う。
 後ろを向かせ手を壁に付かせ腰を突き出すような
 姿勢をとらせる。
 
 余りにも性急で、恥ずかしい姿勢。

「や・・・・こんな格好・・・・・・・」

 腰をよじるが、貴章がガッチリと押さえているため動
 く事が出来ない。
 僅かに左右に揺れるだけ。
 そして、その動きはまるで誘っているように見える。
 
 はしたない動きに気付き若菜の羞恥が強くなり体
 全体が赤く染まる。
 瞳には涙も浮かぶ。

「やだぁ・・・・・」

 煽られた貴章は若菜の蕾に舌を這わせた。
 
 突然の濡れた感触に脅える。
 後ろに視線をやると、貴章が舌を這わせている姿
 が。
 
「だめ・・・・っ・・・・・あっ・・・・・」

 舌に柔らかい感触が中へと入って来る。
 それとは別に貴章の手が、起立した若菜に絡んで
 くる。
 若菜に先端からは透明な液が溢れ出ていた。
 貴章の手が動くたびに、湿った音が聞こえてくる。
 
「あ・・・・・・っ・・・・ん・・・・」

 舌とは別に指までもが入って来て、若菜の中をかき
 回す。
 膝から力が抜け床に這い蹲る格好に。
 指が、一本。
 また一本と増やされ、若菜の蕾は溶けていった。
 かき回され、抜き差しされ、若菜の前はすでにはち
 切れんばかり。
 腰も揺れていた。

「やぁ・・・・も・・・・だめぇ・・・・・・」

 甘く強請る声に、蕾から指が抜ける。
 
「やっ・・・・・・・」

 引き留めるように、蕾がしまる。
 そんな自分の声と、仕草が途轍もなく恥ずかしい。
 思っていると蕾に熱く堅い物が押し当てられる。
 待ち望んでいた物の存在に若菜の蕾が知らず収
 縮してしまう。
 後ろから覆い被さるようにして、貴章が若菜の耳元
 で囁く。

「力を抜きなさい」

 甘く囁く声に、若菜の体が痺れ、力が抜けていく。
 そしてゆっくりと若菜に中へと入って
 
「ん・・ああっ!」

 与えられた貴章の欲望を、若菜の内壁が絡め取り
 包み込む。
 息が上がる。
 
 全てを入れおいた貴章は、若菜の息が整うのを待
 つ。
 若菜の中はとても熱かった。
 貴章を溶かすほど。
 でも優しく包み込む。

「動くぞ」

 言って中を穿ち始めた。
 ゆっくりと、時には激しく。
 若菜はあっという間に達してしまった。
 キツイ締め付けに放ちそうになるが、寸でのところ
 でやり過ごし、若菜の中をかき回す。
 
「あっ・・・・・・いっ・・・・・・い・・・・」

 一度達した若菜の欲望はあっという間に張りつめ
 てい蜜を零していた。
 内壁がうごめき、貴章を吸い取ろうと締め付ける。

「・・・つっ・・・」

 キツイ締め付けに貴章の限界も近づき、動きが早く
 なる。
 若菜の喘ぎ声もいっそう艶めく。

「やぁ・・・・も・・・だめぇ・・・・・!」

 若菜が達した。
 そしてその時の締め付けに貴章も、若菜の中に欲
 望をはき出した。
 強く腰を押しつけ。

「くっ・・・!」

 グッタリとなった若菜から欲望を抜き去り、抱き上げ
 る。
 ベットルームへと運び込み、羽織っていたシャツを
 脱がせ自分の服も脱ぎ捨てる。
 そしてまた、若菜を貪っていった・・・・・・



 ベットルームで2回、浴室で1回と若菜を抱いた貴
 章。
 若菜を迎えに来た時の険しい表情はすっかり落ち
 着いていた。
 今は浴槽の中で若菜を膝の上に乗せ、横抱きに。
 若菜は貴章の胸に頭を寄せ、もたれ掛かっていた。
 白い肌には、貴章の付けた赤い印。
 目は潤み、気怠げで恐ろしく色っぽかった。

「僕は貴章さんだけの物だから・・・・・」

 ボソリと言った若菜。
 声は喘いだためにすっかり嗄れてしまっていた。
 貴章の心に浸みる言葉。
 若菜の口から発せられる事で、貴章の心に染まっ
 た嫉妬が溶けていく。

「だから心配しないで。 僕が愛してるのは貴章さん
だけ。 貴章さん以外の人は愛せないから・・・・」

「・・・・若菜」

「貴章さんも僕だけ・・・・僕だけを愛して」

 その言葉に貴章は若菜を抱きしめる。
 嫉妬して若菜を酷く抱いてしまったのに。 
 それなのに自分を詰るでもなく、包み込み愛してく
 れる。

手放せない・・・・・・

「ああ、お前だけだ・・・若菜だけを愛している・・・・」

「嬉しい」

 ニッコリと笑って若菜は貴章に口づけた。
 貴章も若菜に口づける。
 欲望の口づけではなく、優しく穏やかな口づけを交
 わした。




「おはよう」

 教室に入り、先に来ていた綾瀬達に挨拶をする若
 菜。
 そのまま貴章の車で送らて来たため、徹平とは会
 っていない。

「お早う若菜。 昨日は大丈夫だったか?」

 心配顔の綾瀬。
 当然だろう。
 昨日の険悪な貴章を見ているのだから。

「ん? うん。 ごめんね心配かけて」

「そうか、ならいい」

 若菜の言葉と幸せそうな顔に、綾瀬も安心。
 この二人の幸せに綾瀬達の幸せも拘わってくるの
 だから。
 
「ホントごめんね」

「いや、いいんだ」

「ね、綾瀬ちょっと来て」
 
 若菜に引っ張られ教室の隅へ。
 
「なんだ?」

「うん、あのね、綾瀬には心配かけちゃったから・・・・
でね、僕お礼をしようと思って。 これ」

 渡されたのは千葉にある有名なアトラクション施設
 のチケットと宿泊券。

「これは?」

「貴章さんからなの。 最近忙しくって悠二さんお休
みなくって、綾瀬も会えなかったでしょ。 それに僕の
事で、貴章さん機嫌が悪かったみたいで、悠二さん
も昨日顔色悪かったし・・・・・・・」

「若菜・・・・・・」

 悠二の顔色が悪いのは若菜の事だけでなく、本当
 に疲れているのだと、あの一瞬で気付いていたと
 は・・・・・

 昨日悠二に会いその後綾瀬の家に行ったのだが、
 顔色が悪かったのは若菜せいだけでなく、本当に
 疲れていのだ。
 それを知ったのは、綾瀬が悠二のために飲み物を
 取りに行き、部屋に戻った後の事。
 綾瀬のベットで眠っていたから。
 疲れ切った顔。
 目元には隈が出来ていた。
 試しに小さな声で呼んでみたがピクリともしなかっ
 た。
 やはり兄に着いて働くのは相当ハードらしい。
 綾瀬は悠二を起こさずそのまま寝かせた。

 朝、可哀想だが起こさない訳にはいかない。
 着替えもしなくてはいけないのだから。
 起こすと悠二は慌てた。

「ごめん綾瀬!」

「気にするな。 兄さんの下じゃキツイんだろ」

「綾瀬・・・・・」

 綾瀬の優しさに触れ感激していた。
 こんなに優しい綾瀬は滅多にないから。
 そして、悠二はキスだけをして慌てて出て行った。



「それでね、今度の土日悠二さんお休みなの。 だか
ら、ねっ、二人で楽しんで、ゆっくりして来て」

 貴章も自分の仕事がハードだとは分かっている。
 それにつき合う悠二も相当な物。
 それと周りに当たる事はないにしろ、自分の機嫌が
 日に日に悪くなって行く事で、悠二には相当ストレ
 スになった筈。
 自分も、そして悠二にも少し休養が必要だと思った。
 若菜が行きたいと言っていた場所。
 綾瀬達も行ってみたいのだろうか?
 どちらでもよかったが若菜が「絶対に喜ぶよ」と言っ
 たから、至急手配したのだ。

「・・・・・・・若菜」

 若菜と貴章の気遣いが嬉しかった。
 綾瀬はここが教室というのも忘れ、若菜を抱きしめ
 た。

「きゃ〜〜〜」
「うお―――――!」

 突然の二人の抱擁に、教室のあちらこちらで黄色
 い悲鳴と、野太い声が上がった。

 そしてその時、一際大きな叫び声が。

「ああ――――――っ!」

 見ると徹平だった。
 駅で若菜を待っていたのだが、いつまで経っても若
 菜が姿を見せなかったので、急いで学校に来たよ
 うだ。
 汗が流れ、息もかなり切れていた。

「狡〜い!」

 言って教室に入り若菜達を離れさせようとする。
 
「若菜に近づくなと言っただろ!」

 珊瑚が徹平に詰め寄り怒鳴る。
 昨日の貴章の恐ろしさを目の当たりにし、また自分
 達に被害が及ぶのではないかと、気が気ではない
 から。

「あなたには関係ありません!」

「なんだと!」

 にらみ合う二人。
 その後直ぐに日浦が入って来た。

「徹平、いい加減にしろ!」

「だって!」

「お騒がせしました」

 徹平は日浦に襟首を持たれ、引きずられ教室から
 連れ出された。

「離せ〜〜、若菜せんぱ〜〜〜い」
 
 まるで台風のような出来事。
 教室が静まりかえる。
 若菜と綾瀬は顔を見合わせ吹き出した。
 それに釣られ皆も。
 3−Aの教室が爆笑の渦に飲み込まれた。
 

 きっとあの可愛い子犬は昼もやって来るに違いな
 い。
 そして何だかんだ言われながらも若菜について来
 るだろう。
 とっても可愛い子犬。
 でも子犬のせいで、愛する貴章の心を乱したくはな
 い。
 だから、子犬の事は貴章には言うまい。
 子犬だけでない、自分の口から綾瀬達以外の名前
 を言うまいと決めた。
 
だって、貴章さんが嫉妬しちゃうもん



  


Back  Top








SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送