一つの未来(2)
(恋は盲目)

キリ番10001を踏んだSEN様より「二人の、ラブラブデート」
本編はまだ終わっていませんが、未来の二人を書いてみました。







 少し手前厚木で高速を降り、そのまま海沿いの国道一号線に向け車を
 走らせる。

 暫く経つと目の前に真っ青な海が。
 何だか感動してしまった。
 少し遠いがここまで連れてきて貰った事を感謝する。
 今直ぐにでも、この海の青さと撮りたかった。

「凄く綺麗だ・・・・・」

 稔は窓の外ばかりを見ていた。
 とても嬉しそうな稔を見て、来て良かったと思った。
 
 束縛し過ぎだとは、分かってはいる。
 しかし、稔が自分の近くにいない事が耐えられない。

 休みの日は、こうして稔と二人ドライブに出かけたり、買い物に出かけ
 たりしたいと思ってはいるのだ。
 しかし、いざ休みの日となると一日中稔に触れていたくて結局家の中で
 過ごしてしまう。
 昼自分が仕事で家に居ない時だけ、稔は外出している。
 本当はその外出自体も止めて欲しいのだが、敬に「そこまで束縛する
 な」とキツク言われているのだ。

 敬は稔の事を本当に大切に思っている。
 それは高校の時から変わっていない。
 現状を稔が嫌がっていないから、敬も何も言わないが。
 稔が少しでも敬に「嫌だ」、と言えばこの生活も終わるだろう。
 そのくらい、敬は稔の事を大切だと思っている。
 恋愛感情が無い事が救いだ。

「海へ行く前にちょっと寄り道しましょう」

 言って連れられて来た場所は『海中水族館』
 天然の入り江を利用して作られた水族館だ。
 はっきり言って人はあまりいなかった。
 穴場な観光地なのだろうか。
 入場券を買い中へ。
 するとそこにはイルカがいた。
 イルカと触れ合う事が出来るという。
 触れ合う事などまずない。
 是非とも触れ合いたい。
 思い恭夜を見る。

「・・・・・俺も触れ合いたい」

「勿論いいですよ。 そのためにここに来たんですから」

「そうなのか?」

 言ってイルカを見つめる。
 早く触りたいらしくウズウズしている稔。
 苦笑しながら稔の手を引き、チケットを買いに行く。
 時間が決まっていたが、運良く5分後だ。
 指定された場所へ行くと既に数人いた。
 係員から注意事項を聞き、位置に着く。
 手で色々合図をするとイルカが動く。
 最後に手を前に翳すと、その手にイルカがタッチをしてくれた。
 もう大興奮。
 
「イルカに触ったぞ。 なんか感動・・・・・」

「それは良かったです。 来た甲斐がありましたね」

「ああ、こんな体験が出来るなんて思ってなかったから。 貴重な体験だ」

 ここまで喜んで貰えると恭夜も連れて来た甲斐がある。
 車に乗り次ぎの場所へ。
 少し脇の道へ入って行く。
 その先には砂浜が広がっていた。
 駐車場に車を止める。
 時間も昼。
 持って来たバックを持ち砂浜を歩く。
 夏は海水浴も出来るらしい。
 思った以上に白い砂浜。
 真っ青な海。
 少しでも近くで見たく、恭夜の手を取って波打ち際まで。
 引く波を追いかけ、寄せる波に濡れないよう急いで浜に戻る。
 そんな事を二人で繰り返す。
 稔と一緒だから、こそ出来る行為。
 他の人間となら絶対にしない。
 
「うわっ、濡れるぞ!」

「大丈夫ですよ」

「楽しいー!」

 本当に心から楽しんでいる、全開の笑顔だった。
 こんなに楽しく、大きな声で笑ったのは何年ぶりか。
 毎日それなりに楽しいが、今日は本当に楽しいと稔は思った。
 子供の様にはしゃぐ二人。
 こんな姿を敬が見たら。
 稔の事は微笑ましく思うかも知れないが、恭夜のこの姿には引くに違
 いない。
 はっきり言って見たくないだろう。
 その位似合わない。 
 暫くそうして遊んでいたが、流石にお腹が空いたので一端砂浜へ戻っ
 た。
 砂浜へと降りる階段へ二人並び腰を降ろす。
 少し風があったが、動いた為に心地よかった。

「喉が渇いたでしょ。 どうぞ」

 渡された熱い紅茶。
 中にオレンジの果汁を少し垂らす。
 稔が今一番お気に入りの飲み方だ。
 レモンだと酸味が強いが、オレンジだと程良い酸味。

「ん、美味しい」

 満足そうな稔。
 横で恭夜がバックの中から包みを出し解く。
 重箱の中には、稔の好物ばかり。
 肉団子のあんかけ・エビフライ他にも色々。
 次から次へと平らげて行く。
 幸せそうな顔で食べる姿は見ていて微笑ましい。
 作りがいがあるというものだ。
 食べずに稔を見つめる恭夜。
 その視線に気付き、その手を止める。

「どうしたんだ?」

「いえ、幸せそうに食べるなと思って」

「なんだよ・・・・美味しいんだから仕方ないだろ・・・・お前も見てばっかじゃ
なくて食べろよ。 全部食べるぞ」

 照れ隠しに、わざとぶっきらぼうに言う。
 箸で肉団子を突き刺し、恭夜の口へと押し込む。
 無理矢理入れられたのにも拘わらず、恭夜は文句も言わず寧ろ嬉しそ
 うに。
 
「やはり稔さんに食べさせて貰うのが、一番美味しいですね」

「はいはい」
 
 恭夜はこうして稔に食べさせてもらう事がとても好きらしい。
 つき合う前も、つきあい始めたでも変わらず、食べさせて欲しい時には
 口を開けてくる。
 最初は「男同士で一体で虚しいし、恥ずかしいから止めろ」と言ったの
 だが、全く取り合わず。
 今では『恥ずかしい』と思う気持ちが麻痺してしまっている。
 時々遊びに来る敬が、本当に嫌そうに「止めてくれ」と言って来てやは
 り、これはおかしい事なのだと再認識はするのだが。
 無口で冷たく、会社では表情の変わらない、恭夜のこの姿を見たら同僚
 達は卒倒するだろう。
  
「次は何が食べたいんだ」

「卵焼きがいいです」

 箸で摘み食べさせる。
 そうやって暫くの間稔は恭夜に食べさせる事に専念した。

こいつ、すげーかっこいいのに・・・・・・なんで俺と一緒の時だとこんなに
ベタベタなんだ。
一緒に住んで大分経つのになんで変わらないんだ・・・・・いや、前より酷
い気がする・・・・・
こんな顔良し、頭良しな奴なのになんで俺なんかに執着してるのか、今で
も全く分からない・・・・・・

 そんな事を考えていた。

「何を考えているんですか」

「ん、何で俺なんだろうと思って・・・・」

 ふう・・・と大きなため息を吐かれてしまう。
 そんな態度を取られても、やはり稔には納得出来ないのだ。

「もう何回も言いましたが、俺を癒してくれる事が出来るからです」

「いまいちそれが分からないんだ。 俺の何処に癒しの要素があるんだ」

 箸を置き、腕組みをし首を傾ける。

「全部です。 最初は目が気に入りました。 凄く澄んだ瞳で、俺の苛つい
た心を落ち着かせてくれたんです。 性格は真面目で融通も利かないん
ですが可愛くて・・俺の精神安定剤なんですよ。 稔さんと出会わなければ
俺の存在は今なかった。 稔さんが全てなんです・・・・束縛し過ぎだという
事も頭では分かっているんです。 でも常に側にいて欲しい・・・・・。 俺か
ら離れたいって言っても絶対に逃がさねえ。 逃げても無駄だ、忘れるな」

 穏やかな雰囲気が一転。
 獲物を狙う鋭い目つきと、低い声での威嚇、そして稔への執着心に背筋
 が凍る。
 蒼白になった稔。
 その顔を見て、恭夜は一瞬にして穏やかな雰囲気を作り出す。
 脅えた稔を強く抱きしめ、囁く。

「稔さんが側にいてくれれば、俺はそれだけでいいんです。 あなたが俺
を許し、側にいる事を認め愛してくれた・・・・あなただけなんだ・・・・・」

 抱きしめられるというより、縋り付くと行った方がいいだろう。
 稔を無くしたくないという思いがひしひしと伝わって来る。
 恐れがスーッと引いて行く。
 初めての事を思い出すと、確かに許せないが気が付いた時には恭夜は稔
 の心の中に入り過ぎていた。
 憎めなかった。
 そっと恭夜を抱きしめ返す。

「今更・・俺の事がいらないと言われても困る・・・・・それに俺もお前が側に
いてないと駄目なんだ。 責任取れよ・・・・・」

「勿論です。 俺が一生責任取りますから・・・・ だから側にいて下さい」

 抱き合ったまま見つめあい、どちらからともなく顔を近づけキスをする。
 最初は触れ合うだけの軽いキス。
 繰り返し触れ合い、そして深い物へと変わって行く。
 舌を絡め合い、吸い上げ唾液を交換し合う。
 キスがこんなに優しく、激しい物だとは・・・・
 いつの間にか押し倒されていた。
 階段のコンクリートが少し痛かったが、どうでも良かった。
 恭夜は稔が離れて行くことを恐れているが、稔も恐れていた。

 もてる恭夜。
 いつか平凡な自分を捨て、魅力ある恋人を作るのではないかと。
 しかし、杞憂に終わった。
 愛されている実感がある。
 今は全力で恭夜を愛そう、そして努力し愛されよう・・・・・お互いが不安
 にならない様精一杯。
 遠かったが来て良かったと思った。


「そろそろ日も落ちて来ましたから帰りましょう」

「そうだな、今日は凄く楽しかった。 ありがとう」

 荷物を片付け、二人手を繋いで車へと向かう。
 幸せな一日だった。
 この幸せがいつまでも続けばいいと改めて思った。

「また、デートしましょうね」

「ああ、必ず」





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思った以上に甘い感じに。
とっても恭夜が甘えん坊になってしまいました。
こんな未来かもしれませんね。





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