初めてのデート(7)


キリ番5000Get りんりんさんよりのリクエスト
初めてのデートで温泉をとの事で。
少し長くなりそうです。
『本当の気持ち』








 昨晩露天風呂でコトにおよび、湯当たりしてしまった若菜。
 貴章が冷たい水を飲ませてくれたり、額に冷たいタオルを乗せ冷やし
 たり。
 お陰で直ぐに良くなった。
 その後は、風邪を引かないようにと温かい格好をさせ、若菜をベットへ
 と運んだ。
 貴章も同じベットに入り込み、若菜を抱きしめる。
 
「すまなかった」

 突然謝られ何の事かと思ったが、直ぐに露天風呂での出来事だと気づ
 き、赤くなる。
 夢中になりのぼせてしまった自分が恥ずかしい。

「あの・・・あの・・・・・・・」

 何と言ったら良いのだろう。
 また頭がのぼせてきてしまう。

「ちょっと、夢中になりすぎちゃって・・・。 えへ・・・・」

何言ってるのさ―――――!

 そうじゃないだろうと自分で突っ込み、フォローしようとするのだが。

「気持ちよかったし・・・・」

 自分の言った言葉で、とどめを刺してしまった。

もうだめ・・・・・・・・・

 力尽き、貴章の腕の中でグッタリと。
 そんな若菜に、貴章は「クックックッ」と肩を震わせ笑いを我慢していた。

 どうしてこんなに可愛いのだろう。
 先程まで自分を煽り続けた妖艶さは何処にも見あたらない。
 見た目の美貌と中身の可愛らしさが自分を魅了してやまない。
 若菜の額に口づけ、思わずからかってしまう。

「私もとても良かった」

「た、貴章さん!」

 力尽きていた若菜が、貴章の言葉を聞いた途端復活し、非難の声を上
 げる。

「若菜の中は熱く・・・・・・・・」

「いや――――! ばかばか!」
 
 背中に回していた手でポカポカと叩き、顔をぐりぐりと貴章の胸に押し
 つける。

「はははははっ」

 自分がからかわれた事に気づき、離れようと藻掻く。
 そんな若菜を宥めるように、力強く抱きしめ背中を撫でる。

「すまなかった、若菜。 さあ機嫌を直して」

「もう、もう・・・・。 好き!」

 貴章に抱きつく。
 からかわれても貴章の事が大好きで仕方ない。

「私もだ。 愛してる」

 若菜に軽く口づける。
 優しい、心のこもった響きに若菜の中が幸せで一杯に。
 貴章から聞こえる鼓動が若菜を眠りへと誘う。

「お休み、若菜」

「・・・・お休みなさい・・・・・」

 あっと言う間に寝てしまった若菜に苦笑する。
 貴章も腕の中にいる若菜の体温を感じ眠りに着いた。

 

 水の流れる音で目が覚めた綾瀬と悠二。
 若菜のペースで飲んでしまったために、二人とも激しい二日酔いに陥
 っていた。

 目を開けると明るく、リビングで寝てしまった事に気づく。
 身体をゆっくり起こすと布団が落ちた。
 水音に目を向けると、若菜と貴章が並んで朝食の用意をしていた。
 二人を見た瞬間、見た夢を思い出す。
 
凄い夢を見てしまった・・・・・・

 貴章達の情事の夢。
 若菜の色っぽい喘ぎ声、貴章の艶のある厭らしい言葉。
 夢なのに音もリアルだった。

 実際には綾瀬達から見えないソファーの裏で、コトに及んでいたのだが
 声や音などはしっかりと聞えていたのだ。
 綾瀬と悠二は半分意識はあったのだが、かなり酔っていた為に夢だと
 思った。
 それに、まさか自分たちがいる、寝ている場所でコトに及ぶはずは無い
 と思い込んだ。
 故に夢だと思ったのだ。
 嫌、思い込みたかった。

「お早う」

 ボーッと意識無く若菜を見ていた二人は、突然声を掛けられ焦り、挨
 拶しようとしたのだが、動いた瞬間に頭に激しい痛みが。
 二人共地面に突っ伏してしまった。

「だ、大丈夫?」

 若菜が慌てて来るが、その振動が辛かった。

「若菜二日酔いだから放っておきなさい」

「二日酔い?」

「飲み過ぎたという事だ」

「そうなんだ、お酒二人とも弱かったんだ」

お前が強すぎなんだ!

 突っ込みたいが・・・・・

「胃に優しい物が良いだろう」

「前にテレビで見て、おみそ汁がいいって」

「そうしよう」

 綾瀬達の為にみそ汁を作り、自分たちも朝食をとった。

 午前中には引き上げようと思ったのだが、綾瀬達が動くことが出来そ
 うにないので、取り敢えず二人はそのまま別荘に残し、草津の町へ行
 き湯畑を見て家へのお土産などを買う。
 温泉に来たのだから、温泉まんじゅうは外せない。
 紗英に頼まれていた、地域限定○ティも購入した。
 他にもまんじゅうの試食をさせて貰ったりと、貴章と楽しい午前中を過
 ごした。
 
 別荘に戻ると、朝出かける時には二日酔いで動くことの出来なかった
 綾瀬達が起き、若菜が作っておいたみそ汁を飲んでいた。
 まだ辛そうな顔だったが。

「ただいま。 もう大丈夫なの?」

「・・・・・・なんとか・・・・・・・」

 だめそうだ。

「帰れそう? だめならもう一日いて、明日休む?」

「・・・・・帰るし・・・・・・・帰れる・・・・・・・・」

「辛そうだから、無理しない方が」

「・・・・・・帰る・・・・・」

 延々と続きそうな会話に貴章が口を挟む。

「二日酔い位で、学校を休んで貰っては困る。 自分の加減を誤ったの
は自分を分かっていないからだ。 今からこんな事では困る。 何事に
も己の器量を知らなければ足下をすくわれる。 それに本人が帰ると言
っているのだから人が口を挟む事はない」

 始めは綾瀬に、後の方は若菜に言って聞かせた。
 若菜には冷たく聞えるかも知れないが、貴章にしてみたらとても優し
 い言い方なのだ。

「でも・・・・・」

「・・いいんだ、若菜。 若菜のペースに釣られ加減を誤った事は事実。
自分を分からなかったのも事実。 これをコントロール出来なければ、
今はいいが、この後自分の首を絞める事もあり得るから。 これも良い
経験になった。 ありがとう」

「綾瀬・・・・・」

「有難うございます」

 二人に向かってお礼を言った。

「・・・・・動けそうなら支度をしなさい。 帰る。 悠二。 お前までこんな
事なら、綾瀬との事、考えさせて貰うが」

 貴章の言葉に、二日酔いで顔を青くしていた悠二の顔が、真っ白に。
 
冗談じゃない!

 ようやく綾瀬の恋人になれたのに。

「今回の事は、とても勉強になりました。 こういった事から改善して行
き足下を掬われないようにします」

「トップに立つからには、当然の事。 しかし、私も若菜がこんなに強いと
は思わなかった。 今回の事は多めに見よう」

 有り難い言葉だが、気を引き締めなくてはならない事は事実。
 若菜といると色々、良くも悪くも経験が出来る。 
 本当はわざと呆けて試しているのでは、などと思う事も。
 心配そうに自分たちを見る姿は、子犬そのもの。 
 頭は良いが性格上そんな器用なこと出来る訳がない。

「有難うございます。 では用意してきます。 悠二」

 悠二と共に部屋へ行き、荷物を持って下り、目の前の光景に脱力。
 ソファーに座る貴章の膝の上に若菜が横抱きに乗せられ、お互い抱き
 合ってイチャイチャと。

今厳しかった兄は何処へ・・・・・

「楽しかったか」

「凄く! こんなに一緒に居られて凄く嬉しい」

「そうか」

 髪を梳き愛しげに見る貴章。
 胸に顔をすり寄せ甘える若菜。
 何処までも甘い二人。
 メガネを外している美貌の若菜と、自分が見た中で一番格好いいと
 思う兄。
 とても目の保養にはなるのだが、砂糖を吐きそうな位な甘さは、かえっ
 て目の毒。
 横を見ると悠二がとても羨ましそうに見ているのが気にくわない。
 思わず横顔に拳を打ち込んでしまった。

「グアッ・・・・・・」

 突然起こった奇妙な声に目を向けると、無言で悠二の顔に拳をめり込
 ませた綾瀬と、それを受け苦痛に顔をゆがめた悠二がいた。

「あ、綾瀬どうしたの・・・・・・・」

 眉間に皺を寄せ、悠二を殴っている綾瀬がとても恐かった。

綾瀬って、手が早い・・・・って言うか暴力的?

 学校では表情が無く、クールビューティーな綾瀬。
 言葉も視線もとても冷たいのだが、誰かを殴る姿は一度も見たことは
 ないのだが・・・・
 思わぬ綾瀬の行動に、若菜は唖然としていた。

「嫉妬はみっともない」

「誰が!」

 貴章に言われ、直ぐさま言い返すが

「もっと素直になればいいだろう。 悠二に愛想尽かされるぞ」

「ふん!」
「あり得ない!」

 綾瀬と悠二が同時に発した。
 
「綾瀬以外は目に入らない・・・・・」

 ソッと手を取り熱く語る悠二に顔を赤らめる綾瀬。
 何だか可愛いと思った。

「綾瀬可愛い〜」

「うるさい!」

 照れ隠しに思わず怒鳴ってしまい、貴章に睨まれてしまった。
 
全部こいつのせいだ・・・・・・

 悠二の手を振り払い、荷物を押しつけサッサと外に出てしまった。
 その後を悠二が追いかけ出て行く。

「どうして、怒ったんだろう・・・・・」

「照れてるだけだ」

「そうなんだ。 可愛い!綾瀬」

「若菜の方が断然可愛い」

 恥ずかしげもなく言い、チュッと若菜にキスをした。
 嬉しくて、幸せが一杯な若菜だった。
 貴章達も荷物持ち外へ、綾瀬達は既に荷物を積み乗り込んでいた。

「楽しかったね」

「そうだな」

 前の二人は、綺麗な紅葉・昨日行ったレストラン・湯畑の事を楽しそうに
 話しながら、後ろの二人はまだ抜けない二日酔いに悩まされ寝ながら
 帰って行った。

 楽しかった時間はあっという間に過ぎてしまった。
 帰りの道も混んでいたが気にならなかった。
 ただ、家が近づくにつれ寂しさが増して来る。
 今度は何時逢えるのだろうと・・・・・・

 家に着くと外はもう真っ暗。
 車を止めた貴章は、車を降りる前に若菜を抱きしめ軽く口づけた。
 後ろの二人は完全無視して。

「また明日」

 そう言った言葉に目を見張る。

明日・・・・・・・

「明日?」

「そう。 また明日。 長くは逢えない、ほんの数分でも逢いに来る」

「嬉しい!」

 抱きつき、身体全体で嬉しさを表した。
 
「若菜マズイ!」

 無粋な声だが、綾瀬の声は焦っていた。
 反射的に貴章から離れてしまう。
 見ると玄関の戸が開き、弟青葉、父晃司が飛び出して来る。

危なかった・・・・・・

 心臓に悪い綾瀬だった。
 貴章が先に出て、若菜のドアを開ける。
 後ろから綾瀬と悠二も下りる。

「「お帰り若菜」」

 戸田家男二人は両脇から若菜に抱きつく。
 貴章の気配が変わる。
 先に気づいた綾瀬が彼等の間に割って入る。

「こんばんは。 遅くなりましてすみません」

「綾瀬君今日も美人だね」

 悪気のない晃司の言葉に引きつりつつも

「有難うございます。 若菜も疲れたと思いますので、ゆっくり休ませてあ
げて下さい。 それではこれで失礼します。 じゃあ若菜明日学校で」

 そう言ってさっさと引き上げようとする。
 このまま、ここに居れば恐ろしい事になると思い。

 溺愛する戸田家男子。
 独占欲の強い貴章。

恐ろしい・・・・・

 貴章の顔には既に表情が無かった。
 名残惜しいが、みんなも、特に貴章は行きも帰りも運転して、誰よりも
 疲れている筈なのだからゆっくり休んで欲しいそう思った。 
 それに「また明日」そう言ってくれたのだから。

「うん。 学校で。 お休み綾瀬、悠二さん。 貴章さん気を付けて・・・・・
ゆっくり休んでね」

「ああ」

 見つめ合う二人の間に甘い雰囲気が漂い始める。
 その気配に綾瀬が焦る。

「さあ、兄さん行きましょう。 悠二早く乗れ」

 貴章に睨まれるが、今はその恐怖よりも勃発するであろう戦いの方が
 怖かった。
 二人を押し車へ乗せる。
 窓から顔を出し

「お休み。 若菜。 さ、兄さん、早く帰りましょう」

 急かし車を出させた。
 綾瀬の態度に、ムッとしつつ車を出す。
 若菜を見ると小さく手を振っていたので、まあ良しとして車を出した。
 若菜は車が見えなくなるまで、見送っていた。
 その姿を見て、戸田家男子は不穏な気配を醸し出していた。
 
 先程見た二人の甘い空気。
 何時もと違う若菜の雰囲気。

敵だ・・・・・・・
だな・・・・

 無言で視線を交わす親子。
 彼等の周りに殺気が漂う。
 可愛い若菜を奪う者として、二人は即座にブラックリストへ載せた。
 そんな二人の心を知らない若菜。

「お土産買って来たからたべよ」

 二人に向かって微笑む。 
 一気に顔を緩める二人。

「そうだな。 何を買って来てくれたのかな?」

「温泉まんじゅう。 本当楽しかったよ」

 そう言いながら家の中に入って行く。
 楽しそうな若菜に満足しつつ、旅での話しを聞いて、貴章を敵だと再
 認識した二人だった。





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