キリ番29000をGetした『さび様』より
「皆が若菜をどう思っているか、周りの視点」というリク

                          





 【貴章編】



 若菜と出会ったお陰で、私の人生に色が付いた。
 それまでの全てが、色の無い世界。
 気が付いた時には、何も感じない世界。
 ただ息をし、生きる為の食事。
 何を食べても美味しいと思わなかった。 いや、口にする物の全てに味
 がなかった。
 

 子供の頃から、何も努力しなくても常に勉強、スポーツにおいてトップ。
 周りからは神童だの何だのと言われていた。
 久我山グループの跡取りというだけで、大人達は子供の私に対し媚び、
 同じような年頃の子供がいれば、その子供を使って取り入ろうとしてい
 た。
 そしてそれは大人達だけではなく、子供達も同じ事。
 全てにおいて完璧な私の近くにいようと、色々な手を使い取り入ろうと。
 愚かな事だ。
 

 高校に入学すると同時に、久我山の中の一つ、国内のホテル経営を任せ
 られる事に。
 海外旅行が主流となって来た昨今、如何に国内に留まらせるかという事
 だ。
 子供な私に対し、反発もあった。
 各ホテル報告書を纏めさせ、関係者に分からないようチェックする者を派
 遣し、実際に自分も目で確かめた。
 管理職以外の従業員は私の顔を知らない。
 偽名を使えば確実に私の存在を知られる事もない。
 業績の悪いホテルに対しては、上を総入れ替えさせ、下の者でも優秀な人
 物を上に置いた。
 全てに対し意識改革を行わせた。
 そのお陰もあり、国内の久我山グループのホテルは変わった。


 大学卒業後は社長として、そしてまた別なリゾート開発を任せられた。
 多忙な毎日を過ごしていた。
 ただ黙々と仕事をこなし、身体の欲求を処理する。
 本当に味気ない日々を過ごしていた。
 
 
 それが若菜を一目見た瞬間から、私の周りに色が付いた。
 鮮やかな色。
 食事に味が付き、初めて美味しいと感じる事が。
 綺麗だと思わなかった風景が、とても美しく感じられた。
 優しい、愛おしい、側にいて欲しい、嫉妬。
 いろいろな、初めての感情が一気に私の中に吹き荒れた。
 こんな感情が自分の中にあったとは。
 こんな気持ちを感じる、そんな日が来るとは思ってもみなかった。
 これが幸せというものなのだろう。


 柔らかく優しい声。
 私を一瞬で癒してくれる微笑み。
 会いたいという気持ちを抑え、忙しい私を気遣ってくれる奥床しい態度。
 今まで見た誰よりも美しい顔。
 何一つ傲る事ない、真っ白な若菜。
 
 
 透明感のある、きめ細やかでしっとりとした白い肌。
 時に快感で淡いピンクに染まり、とても艶めかしい。
 潤んだ瞳。
 甘い吐息。
 私だけが知る嬌態。
 どんなに抱いても尽きる事のない欲望。
 真っ白だった若菜が私に染まっていく。 
 そして私も若菜が中心の生活になっていく。


 もっと我が儘を言って欲しい。
 逢いたいときには「逢いたい」と。
 私はいつでも若菜を攫いに行くのに。
 最近でこそ、二人でいる時は甘えてくれる様になったが。
 本当ならば、今すぐにでも攫いに行き私のマンションで暮らして欲しい。
 誰も会わせる事もなく、閉じこめておきたい。
 私だけに笑い、話しかけて欲しい。
 弟の綾瀬にまで嫉妬している自分がいる。
 こんなにも独占欲が強いとは・・・・・

 
 兎に角心配で堪らない。
 
 普段、外にいる時は必ず眼鏡を掛け、素顔は分からない。
 家族や綾瀬、それに私がキツク眼鏡を外さないよう言ってはいるが。
 しかし何らかで外れたり、奪われてしまった場合には、あの美しい顔が曝
 されてしまう。
 見た誰かが若菜を攫うかもしれない。
 それに、あの無邪気さ。
 私の機嫌が悪かった時、回りに人がいたにも拘わらず、何の躊躇いもな
 くキスをしてきた。
 そして「僕ね、貴章さんにキスされると、とっても嬉しくて幸せな、気分に
 るんだ」と頬を染めて言われてしまえば何も言えない。
 げんきんなもので、そのキスと言葉で私に機嫌は直ってしまった。
 しかし、あの無邪気さは私だけでなく綾瀬や他の友人にも向けられるか
 ら困ったものだ。
 私の忍耐力を試しているのだろうか。
 

 若菜に就けている者からの報告では、現在不穏な輩はいないようだ。
 渡してある携帯は、GPS機能が付いており何時でも居場所が特定出来
 る。

 誰にも渡さない。
 私から若菜を奪おうとする者には、容赦はしない。
 何処までも追いかけ、二度と社会に復帰出来ない様にしてやろう。

 
 高校を卒業したら、「一緒に暮らそう」と言おう。
 きっと良い返事は貰える筈。
 

 初めて会った若菜の家族は皆それなりの容姿をしていた。
 母親と妹は、私との事を認め、何かと協力をしてくれる。
 どうやら私の容姿を気に入ってくれたらしい。
 今まで気にした事はなかったが、今回は有り難かった。
 しかし、父親と弟は違っていた。
 私達がつき合っている事は言っていないらしいが、気が付いている様だ。
 そして、自分達から若菜を奪って行く者だと、敵だと認識したらしい。
 綾瀬からは聞いてはいたが、これ程だとは。
 まあ、家族だからと言っても容赦はしない。
 若菜を幸せにする事が出来るのは、この私しかいないのだから。

 
 もうこんな時間か。
 若菜が首を長くして、私からの連絡を待っている筈だ。













SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送