本当の気持ち
(1)







クシュン・・・

 冷房を下げすぎたのか、布団からはみ出した肩が寒い。
 グイッ、と強く引っ張られ、暖かい物に包まれる。

あったか〜い

 擦り寄って行ったが違和感を感じた。

・・・・・????

 重い目蓋を一生懸命開けると・・・。

!!!!!!

 一気に目が覚め、貧血を起こしかけてしまった。

落ち着いて・・・・
落ち着くんだ・・・・
 
 呪文の様に繰り返し、自分を抱きしめて熟睡している男の顔を見た。
 確か年は27だったはず。
 長身でバランスの取れた躰。
 着痩せして見えたが、服の下は鍛えられた逞しい躰。
 そして今目は閉られているが、とても目鼻立ちの整った、冷たい印象の
 美形。

ど、ど、どうしよう〜〜
マズイ! 
もの凄くマズイ・・・・・・・
             
くがやま   たかゆき 
 相手は親友の兄、久我山 貴章だった。

 そして昨日の事を必死に思い出した。


 

 この世に生を受けて17年。
                       
 とだ   わかな  
 順風満帆とまでは行かない物の、戸田 若菜は平穏な人生を歩んでい
 た。
 気になった事は女の子に興味がないという点。
 女の子が嫌いな訳ではなかったが『付き合いたい』とかそういう事に意
 識が行かなかった。
 『別にいいか〜』、と深く考えていなかったのだが・・・・・。

 しかし、最近ではそれが違うのではと思い初めていた。
 友人達にそれぞれ恋人が出来たせいなのかもしれない。 
         
みさき ゆうき
 親友の一人、岬 有樹に

「実は恋人が出来て・・・・」
 
と顔を赤くし、はにかみながら 報告された時には

「えっ、本当!? 良かったね!」
 
 と自分の事の様に喜んだ。

 亜麻色の髪、透明感のある白い肌。
 小柄で柔らかな印象の顔立ち。
 男にもかかわらず途轍もなく可愛いくて、内気で物静か。
 思わず守ってあげたいと思う、そんな有樹に恋人が!

良かった、良かった

 気分はお父さん。

 きっと彼女は有樹以上に可愛いか、もしくは美人なんだろうと想像し
 ていたのに・・・・。

 紹介されたのは男だった。
 背は高く、肩幅は広く、胸板が厚い落ち着いた感じのかなり格好いい
 男。
 若菜はその男を知っていた。
 同じ高校で1つ下。  
かつらぎ あきら
 空手部に所属している葛城 彰だった。
 無口でスポーツ万能な彼は、学年問わず女の子達にかなり人気が
 あった。
 そんな彼が男の、親友の有樹と付き合うなんて思ってもいなかった。
 
男・・・・・・・・・
 
 複雑だったが、『有樹が幸せそうだったからいいか』と深く考えず祝福
 した。
                 
くがやま  あやせ 
 そして、もう1人の友人、久我山 綾瀬にも恋人が。
 
 綺麗で頭はいいが、冷たい印象の持ち主。
 実際、とても冷たいのだが・・・。
 買い物途中で偶然一緒になった。
 その隣りには若菜の知らない男が。
 少し年上の男。
 スラリとした長身、髪は少し長めでウエーブ掛かっている。
 甘い顔立ちのいい男。
 ナンパな感じだが、何処か大型犬を思わせた。

「買い物なの?」 

 と聞くと、一緒にいた男が代わりに

「デートの途中」
 
 と答えた。 
 
???
デート?

 意味が分からず考えていると
            
くすのせ ゆうじ
「俺、綾瀬の彼氏で楠瀬 悠二。 T大4年、宜しくね」
 
 と自己紹介してきて綾瀬に殴られていた。

また男・・・・

 家に帰ってから考えた。 
 友達3人の内、2人が男と付き合っている。
 今まで考えた事はなかったが『男と付き合う』 という事がありなら、も
 しかして自分にもありなのだろうか?
 だから女の子には興味がないのだろうか?
 考え始めたら止まらなくなった。
 
よし、確かめてみよう!
でも、どうやって・・・・・・・・・
 
 ネットで調べてみた。

 新宿2丁目にそういった人達が集まる場所があると知り、取り敢えず
 行ってみる事に。

 高校生に見えない様に髪型、服装に気を付け、何時もはメガネを掛け
 ているがコンタクトにして、普段の自分とは別人になり出かけた。 
 知人に会っても絶対分からない自分になって。

 洒落たバーを見つけたので中に入ってみる。
 落ち着いた感じの店だが、中に足を一歩踏み入れた瞬間、いっせいに
 視線を感じた。

こ、怖い・・・・

 もの凄く緊張したが、気取られない様に歩き、カウンターに座る事が出
 来た。

 店と同じように落ち着いた年配のマスターに注文を聞かれ、オリジナル
 カクテルを注文し飲んでいると、声を掛けられた。
 20代後半でインテリな感じ。
 少し話しをしたがシックリしこなくて、『外に行かないか?』 と誘われた
 が断った。
 その後も何人かに声を掛けられたが、やはりピンと来なかったため断
 った。

『今度こそ。 今度こそ』

 そう思いながらカクテルを飲み続け待った。
 もともと酒には強かったが、慣れない場所と緊張したせいで酔いが回
 るのが早かった。 

あ〜、飲み過ぎたかも
男にも興味湧かなかったし、そろそろ帰ろっかな・・・・・・

 確かめたかった事もちゃんと確認出来た。
 帰ろうとして立ち上ると足下がふらつく。
 思った以上に足に来ていたようだ。 
 
ありゃ?

 倒れそうになったところを、後ろから誰かに優しく抱き留められた。

「大丈夫か?」

 声をかけられる。
 瞬間、ゾクリッ!とした物が躰に走った。 
 そんな自分に驚きながらも、自分を支えてくれた人物に「有難うござい
 ます。」
 とお礼を言う。
 離れなくては、と思いながらも、スッポリと収まったこの心地よい腕から
 離れたくなかった。
 しかし何時までもそうしている訳にはいかない。
 離れて振り返ると見た事のある顔だった。
 自覚はないが、かなり酔っていたので思い出せない。

これだけの美形なら絶対忘れないはずなのに・・・・・

 精悍な顔立ちだが冷たい印象。 

でも、凄く格好いい〜

 何だか急に嬉しくなり若菜はニッコリ笑ってしまった。
 すると男が僅かに目を見張り、次の瞬間には冷たい印象がなくなった。

好きかも〜〜

 もっと嬉しくなり思わず手が伸びて、顔を触っていた。
 ペタペタと触るが気分を害した様子もなく、若菜の好きなようにさせてい
 る。

「どうした?」

 甘い声に、甘い顔。

この際この人が誰でもいいや〜 

 思い出すのを放棄した。

「好き〜〜」

 告白して抱きついていた。
 男は驚いた顔をしたが、さらに甘い顔になり、若菜を抱き上げていた。
 店を出た後、革の匂いのする車に乗せられ、都内の男の住んでいるマ
 ンションに連れて行かれた。 
 車を降りる時も、エレベーターに乗っている時も、若菜は男の腕の中
 に。
 見かけとは違った逞しい躰。
 すっかり安心して、うとうとしていた。
 冷たく、柔らかい布の上にゆっくりと降ろされる。
 急に温もりが無くなり、寂しくて目を開けるとベッドの上。
 横を向くと男がスーツを脱いでいた。
 上半身はすでに裸。
 鍛えられた逞しい肉体。

 ウットリと見ていると、若菜の視線に気づき傍にやって来て、ゆっくり屈
 んで口づけて来た。
 柔らかい唇。
 最初は、安心させるような優しい口づけ。
 初めての口づけに酔いしれていた。 
 そして、いつしかより深い物へと変っていく。 

「・・・・・ん・・・」
 
 苦しくなり、酸素を求め口を開けると、そこから舌が入ってくる。
 驚いて、躰がビクリとすると、男はあやす様にゆっくりと髪を何度も撫で
 てきた。
 そして若菜の舌に絡ませる。
 ピチャピチャという淫らな音に煽られ、男の首に手を回し、その口づけに
 夢中になった。
 長い口づけが終わる。
 若菜はすっかり息があがり、潤んだ瞳で男を見上げた。
 そんな若菜を 見て男も欲情していた。
 柔らかく笑い、口づけしながら服を脱がし始めた。 
 初めての行為に戸惑いつつも、男の愛撫にとろけていた。 






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